とれんど捕物帳 7月利下げを強く示唆する内容だったのか?
今週の為替市場はドル売りが強まり、ドル円は107円台に値を落としている。一時107円ちょうど付近まで下落し、5月からの下向きの流れを再び強めた印象だ。きっかけは今週のFOMCであったでろう。市場は利下げ期待を強める中、今回は金利据え置きとなったが、声明から「辛抱強くいられる」の文言を削除するなど、期待通りに利下げの可能性を示唆してきた。このところハト派色を強めているブラード・セントルイス連銀総裁が利下げを主張し反対票に回ったこともドル売りを誘発したようだ。市場では7月利下げの期待を高めている。なかには0.5%の大幅利下げまで見込むハト派な声も出ていた。
しかし、市場が期待しているほど7月利下げを強く示唆する内容であったのだろうか。FOMCメンバーの金利見通し(ドットプロット)の中央値は年内据え置きとなっていた。ただ、メンバー間の意見が2極化しており、メンバー17名のうち、現状維持が8名、年内2回の利下げが7名となっていた。残り2名は利上げや1回の利下げ。市場は半数近くが年内2回の利下げを見込んでいる点に強く着目している。
その後のパウエルFRB議長の会見でも、不確実性が高まり、緩和の論拠が強まった。メンバーの多くが利下げ予想を適当と考えていると述べていた。しかし一方で、個人消費や労働市場の力強さも指摘しており、様子を見て指標を確認したい意向も滲ませていた。
個人的には市場の反応ほどFRBが7月利下げを意識させたとまでは考えていない。この点については来週以降の経済指標やFOMCメンバーの発言などを確認する必要がありそうだ。
さて来週だが、大阪で28日、29日に開催されるG20サミットが最注目となりそうだ。首脳会議そのものも注目だが、それ以上に、この期間に開催が予定されている米中首脳会談に市場の焦点が集まりそうだ。その前にライトハイザーUSTR代表も中国側と協議を行うものと見られるが、G20での米中首脳会談に向けての要人発言などに市場も一喜一憂しそうな気配だ。
米中問題は以前から述べてきた通り、貿易問題というよりも覇権争いなので、ここでの根本的な解決が見出されるとは期待しにくい。「建設的な議論が行われ進展があった。今後も継続協議」といった程度で終わるものと思われる。これを市場がどう受け止めるかは未知数だが、不透明感が強まるリスクは留意しておきたいところではある。なお、25日には米中の交渉チームが会合を開く可能性が伝わっている。
経済指標では5月の米耐久財受注やPCEデフレータが注目される。PCEデフレータはコア指数で前月比0.2%、前年比1.6%と前回と同様の伸びが見込まれている。米インフレは鈍化傾向を示しており、米利下げ期待の要因の1つとなっているが、前回は反転の兆しも見られていた。FRBは一時的要因との見方も示していたが、果たして反転の流れを維持できるのか注目したい。
あと来週は6月末を向かえる。第2四半期末でもあり、週末のG20サミットを控えていることから、ポジション調整の動きが強まる可能性も留意される。
ドル円は今週の下げで、108円台のレンジ相場から下向きに再度レベルシフトの兆候を示しており、下向きトレンドを強めている。予想レンジとしては106.00~108.00円を想定。スタンスは「中立」から「やや弱気」に下げたい。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(→)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑(↑↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(→)
minkabu PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。