とれんど捕物帳 ウイルス感染の拡大続くも市場は実に楽観的

為替 

 今週のドル円は110円台を一時回復したものの、110円台を駆け上がることなく、109円台に戻す展開となった。110円台の上値の重さを意識される展開であっただろう。ただ、市場は実に楽観的だ。週半ばには、感染者数こそ増えているものの、増え方が鈍化しており、ピークに近づいているとの期待感が市場の雰囲気を席巻し、ダウ平均は最高値を更新する場面が見られている。

 中国保健当局の発表によると、ピークだった4日には3887人だったが、11日には2015人まで鈍化していた。しかし、次の日の12日には中国衛生当局の確認基準変更で感染者数は新たに1万4840人が増加。中国当局が症例を過少報告しているリスクはこれまでも指摘はされていたが、その通りだったことに市場も動揺したようだ。しかし、市場は中国発の悪材料を考えたくないのであろうか、ネガティブな反応は一時的に留まっている。

 足元の好調な米経済指標や米企業決算が市場のムードを支えているのだろう。また、今週はパウエルFRB議長の議会証言が行われていたが、ウイルス感染の問題は中国での混乱につながり、他の世界経済に波及する恐れがある」と証言していた。ただ、過度に楽観的になっている市場は、議長の発言を「FRBのサポート姿勢強化」と捉えているようだ。必要であれば、昨年のように保険的利下げを迅速に実施してくれると見ているのであろう。中国経済への影響は必至ではあるものの、米経済への影響は最小限に留まるとの見方が増えつつあるようだ。

 ただ、エコノミストらは、ウイルス感染とその拡大防止策が影響し、1-3月の中国のGDPは、従来の想定以上に減速するとみているようだ。予想のコンセンサスは概ね、前年比で3.6%~4.0%に下方修正している。10-12月の実績値は6%。個人的にはどう考えてもマイナス成長ではとも思われる。春節の消費は壊滅し、春節明けの生産が高まる時期も感染拡大防止策で昨年よりも生産が滞っていることは間違いないであろう。

 以前から中国経済の専門家の間では、中国のGDPの数字は化粧されており、実際は国家統計局が発表する数値から5%~6%程度引いたほうが良いとの見解も出ているが、エコノミストらの予想を見た限りでは、その見方も頷ける。

 世界経済への影響だが、中国経済の影響を受けやすいとされるドイツの1-3月のGDPはマイナス成長との見方も出ている。また、日本についても感染が広がっており、期待していたインバウンド消費も減少。中国はもちろん、欧州や日本の経済への悪影響も必至で、市場が想定している以上に深刻かもしれない。昨年同様に米国の一人勝ちの状況がさらに進むリスクも想定される。ただ、ECBも日銀も追加緩和には限界が来ており、金融政策の格差という点では実体経済以上の格差は出ないのかもしれない。それからすると、為替市場はドル買いというシナリオなのであろう。

さて来週だが、米経済指標は住宅指標の発表が中心で、材料にはなりそうもない。引き続き中国の動向は注視され、市場のポイントとなりそうだ。ただ、市場は非常に先行きに楽観的なので悪材料が出てもネガティブな反応は限定的になる可能性も留意される。しかし、ドル円が110円台を積極的にトライするには、コロナウイルス感染の鎮静化に一定のメドがつく必要があろう。今週に引き続き、来週も方向感を出しづらい状況が続くかもしれない。

 ドル円の想定レンジとしては、109.00~110.50円と先週に引き続き狭い値動きを想定。スタンスは「中立」を継続する。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 上げトレンド継続
短期 →(↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立継続
短期 →(↓↓)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立から下へトレンド変化
短期 ↓↓(↓)

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

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