パウエル会見でドル高が強まる 12月利下げ期待が後退=NY為替概況
パウエル会見でドル高が強まる 12月利下げ期待が後退=NY為替概況
きょうのNY為替市場、午後のFOMC後のパウエル議長の会見を受けてドル高が強まった。議長が「12月の利下げは決して確定した結論には程遠い」との見解を示したことに市場は敏感に反応したようだ。
FOMC前の短期金融市場では、12月利下げを完全に織り込んでいたものの、パウエル会見後は65%程度の確率に後退。政策金利に敏感な米2年債利回りは3.6%近くまで急上昇している状況。
政府機関閉鎖で米経済指標の発表がなく、入手できるデータが少ない中、想定通りに、議長は12月についてどちらにもオープンにしていた印象。雇用の冷え込みに言及はしているものの、データに雇用改善が示されれば決定に影響すると述べている。一方、インフレは依然として高水準で推移する中、サービス部門の非市場部分のインフレは低下を見込んでいる点も指摘していた。
利下げ、据え置きのどちらにもバランスを取った発言のようにも思われるが、市場が12月利下げを過度に織り込んでいた分、サプライズとなってしまった印象もある。
ドル円は152円付近から一気に153円付近に上昇。ただ、153円台に入ると売り圧力も強まるようだ。
パウエル会見後のドル高を受けて、ユーロドルは1.15ドル台に再び下落。前日までの5日間の緩やかな上げを帳消しにし、21日線と100日線から下放れする展開が見られた。一方、ユーロ円は一時177円台半ばに上昇。
明日はECB理事会が予定されており、据え置きが確実視されている。ECBはすでに利下げサイクルを終了しており、当面政策金利は据え置かれると見られているようだ。エコノミストは、貿易摩擦やユーロ高といった要因は、明日のECB理事会での政策決定に影響を与えるほど重大ではないとの見方を示している。
米国との貿易摩擦は依然として大きな不確実性要因ではあるものの、現時点で景気の大幅な悪化やインフレへの明確な影響は見られないという。また、対ドルでのユーロ高および人民元の弱含みは、今後の物価上昇圧力を抑制し、欧州の輸出企業に追加的な重荷となるとも指摘した。また、サービス分野のインフレは依然として約3%付近で高止まりしており、インフレ動向が完全に正常化したとは言い難いとも述べている。
ポンドドルは一時1.31ドル台半ばまで下落。本日の下げで200日線を下回っており、明日以降の動きが注目される。一方、ポンド円は一時200円台半ばまで下落していたが、201円台半ばまで戻す展開。
市場では英中銀への見方が割れている。年末までに再び利下げを行う可能性は低いとの見方と、米大手証券からは、早ければ来週にも利下げの可能性があるとの予測も出ている。
先日発表の9月の英消費者物価指数(CPI)は3.8%と、市場の上昇予想に反して横ばいとなり、これにより市場では12月利下げの可能性が再び意識されているが、その実現には懐疑的な見方を示している。予想に反したとは言え、インフレは3%よりも4%に近いという。
本日はカナダ中銀の政策委員会もあり、予想通りに0.25%ポイントの利下げを実施。それを受けてカナダドルは買いの反応を見せていた。声明では「予測が実現すれば金利は“ほぼ適正水準”にあると見ている」と述べており、ターミナルレート(最終到達点)に接近していることを示唆している。ただ、パウエル会見でドルカナダは下に往って来いの展開となった。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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