為替相場まとめ11月6日から11月10日の週
6日からの週は、ドル買いが優勢。先週の米FOMCがややハト派色が色濃いとの印象だったことや、先週末の米雇用統計の弱い内容を受けた米債利回り低下などで、週明けはドル安の動きで始まった。しかし、調整の動きを交えながら連日、ドルが買い戻された。来週前半に米消費者物価指数の発表を控えて、今週は主要統計発表に乏しい1週間。市場では各国中央銀行高官らの発言に視線が集まった。英米欧の各中銀高官らから、インフレ目標が見通せるまでは金利を高止まりさせておくべき、との論調が相次いだ。さらに、利下げ開始の議論は時期尚早との発言も相次いだ。まだまだインフレ退治には長い道のりが想定されるなかで、市場の早期利下げ開始観測に釘を刺す格好となった。パウエルFRB議長は、「十分な引き締めを行ったと確信していない」「適切となれば、躊躇なく追加利上げを行う」などと述べた。ドル円は151円台に上昇。植田日銀の緩和継続姿勢には根強いものがあり、日米金利差が円安圧力となる面も指摘される。金曜日NY市場午後に151円60銭を付けるなど、週末までドル高円安が続いた。ドルに次いで、ユーロも堅調だった。対ドルではやや上値を抑えられたが、対円や対ポンドではユーロ買いが優勢。来週は英消費者物価指数の発表が予定されている。前年比の伸びが5%を下回る予想となっており、事前にポンド売り圧力がみられた面も指摘される。ユーロ円と比較してポンド円の上昇は伸びを欠いた。
(6日)
東京市場は、ドル安一服。先週金曜日の海外市場では、注目された米雇用統計が弱い内容だったことで、ドル売りが強まった。ドル円は149.21近辺まで下落。週明けも149.25近辺と、ドル売り優勢で取引開始。しかし、その後は買い戻しが入った。先週末にダウ平均が5日続伸となり、週明けの日経平均が一時800円超の大幅高で、リスク選好の円売りが優勢になった。昼にかけて149.67近辺前え買われた。午後には149.50台を中心に高止まりした。ユーロ円も160.10付近から160.68近辺に上昇。豪ドル円、ポンド円などでも円売りが優勢。ユーロドルは先週末のドル全面安のなかで1.0740台と9月14日以来の高値をつけていた。週明けには1.0722-1.0739レンジと高値圏揉み合いとなった。
ロンドン市場は、欧州通貨が堅調。ポンドドルやユーロドルが買われて、ドル指数は先週末から一段と低下している。この日はドイツ国債やイタリア国債などの利回りが上昇しており、ユーロドルは1.07台前半から1.0756近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルも1.23台後半から1.24台に乗せると、高値を1.2424近辺に更新。一連の欧州非製造業PMIは引き続き冴えない水準となったが、ユーロ売り反応はほとんどみられず。週末にラガルドECB総裁が2025年のインフレ目標達成について強い意思を示したことが影響したようだ。先週末に発表された米雇用統計が弱含んだことを受けて市場では米利上げ打ち止め観測が優勢となっており、週明けもドル安が継続した。ただ、ドル円は149.50を挟んだ揉み合いに落ち着いており、米国と欧州との金融政策スタンスの差を敏感に感じ取った面も指摘される。ユーロ円やポンド円も堅調。ユーロ円は160.94近辺まで買われて、年初来高値を更新。ポンド円も185.86近辺まで高値を伸ばした。日銀の植田総裁は物価目標2%の達成について「確度が上がってきた」と述べる一方、「年内に物価目標実現を判断できる可能性は低い」と示唆した。日欧などでも金融政策スタンスの差が意識されたようだ。
NY市場では、ドル買いが優勢。米国債利回りが上昇し、ドル円の買い戻しをサポート、150円台を回復した。FRBが利上げサイクルを終了したとしても、一方で日銀が大胆な引き締めに動く可能性も低く、日米の利回り格差は相当程度維持されるとの見方が根強い。そのような中で、下値での押し目買いがみられた。FRBがこの日発表した第3四半期の銀行融資担当者調査で前四半期からの改善が示されたことも利回りを押し上げた。ただ、全体的には融資基準はタイトになっており、ローン需要も弱まっていると報告。ユーロドルは、ロンドン時間に買われたあと、1.07台での小幅な値動きに終始。市場ではECBは利上げ終了との見方が強まり、この先の景気後退の見方も強まる中で、積極的に戻りを試す動きまではまだ出ていないようだ。ポンドドルは一旦1.24台前半まで上昇していたものの、NY時間に入って1.23台に伸び悩む展開を見せている。今週は第3四半期の英GDP速報値が発表される予定。予想は前期比0.1%のマイナス成長が見込まれている。市場の一部からは、英経済はすでにリセッション(景気後退)に入っているとの見方も。
(7日)
東京市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に149.90台に軟化したが、ドル全般にしっかりとした動きをみせるなかで、午後には150.30台まで上昇した。米10年債利回りは前日に4.666%まで上昇した。東京朝方に4.624%まで低下も、昼にかけて4.65%近くまで再び上昇した。午後には利回り上昇は落ち着いたが、ドル買いの流れは継続した。ユーロドルは朝の1.0722近辺から昼には1.0706近辺まで下落、ドル買い圧力に押された。ユーロ円は前日に161円付近が重かったことで、午前中に160.69近辺まで軟化。その後はドル円とともに買われて161円ちょうど手前まで上昇。豪中銀は予想通り25bp利上げを決定した。声明では今会合での利上げ打ち止め感がみられ、豪ドル売りにつながった。対ドルは0.6480台から0.6501レベルをつけたあと、0.6430付近まで反落。豪ドル円は97円台半ばから96円台半ばへと1円近い下げ。豪州3年債利回りが低下している。
ロンドン市場は、ドル買いの動き。特段の目立った材料がない中で、先週末の米雇用統計後のドル安に対する調整が入る格好。ただ、通貨ごとにスピードはまちまち。東京市場では米債利回りの上昇を受けたドル円の上昇、豪中銀の利上げ発表後に今後の利上げ打ち止め感が強まったことが豪ドル/ドルの下げにつながっていた。一方、ロンドン時間に入るとユーロドルやポンドドルの下げが勢い付いている。ユーロドルは1.07付近で売買が交錯したあと、1.0680付近へと下落。ポンドドルは1.23台前半から1.2290付近へと下押し。この時間帯には米債利回りが一転して低下しているが、ユーロやポンドの軟調な動きには特段の影響を与えなかった。独鉱工業生産の下振れや、英調査会社による食品価格の伸び鈍化などの報道も材料として加わった。ドル円は序盤に150.49近辺に高値を伸ばしたあとは、150円台前半で上昇一服。クロス円は円高方向に振れている。ユーロ円は161円台乗せとなったあとは売りに押されて160.50台へと反落。ポンド円は185円台前半から184.80付近に下押し。豪ドル円は96.50付近へ一段安となった。
NY市場では、連日のドル買い優勢。ドル円は下値での買い意欲が強く、150円台での推移が続いた。FRBの利上げサイクルがストップしたとしても、一方で日銀が大胆な引き締めに動く可能性も低い中で、日米の利回り格差は相当程度維持されるとの見方が根強く、ドル円をサポートしている。本日は厚労省が9月の毎月勤労統計を発表していたが、賃金上昇率はインフレの影響を加味した実質で18カ月連続のマイナスだった。日銀が引き締めに動きことは困難な状況だ。ユーロドルは戻り売りが優勢となり1.06台に下落。ドイツの9月の鉱工業生産が予想以上に減少していたこともユーロを圧迫したようだ。ポンドドルも戻り売りに押され、1.22台に下落している。短期金融市場では、英中銀が来年中に累計で75bpの利下げを実施するとの見方を初めて織り込んだ。ピル英中銀チーフエコノミストが、市場のプライシングに違和感はないと示唆したことが手掛かりとなっている。英中銀は今月発表される10月分の消費者物価指数(CPI)は5%を下回るとの見通しを示していた。
(8日)
東京市場は、ドル相場がしっかり。ドル円は150円台での推移を続けている。前日のダウ平均が7日続伸となるも、今日の日経平均は続落と冴えない。リスク選好の動きは目立っていないものの、ドル円は下がると買いが出ている。 前日のNY市場で4.541%台まで下げた米10年債利回りが4.6%に迫るなど下げ止まりを見せたことや、衆院で答弁を行った植田日銀総裁が粘り強い緩和の継続を示したことなどがドル買い・円売りにつながった。ユーロドルは朝方1.0700前後を付ける動きとなったが、その後ドル買いが優勢となり1.0680台に軟化。値幅自体は18ポイントとかなり狭いものとなっている。ユーロ円はユーロドルが小幅な動きに留まる中でドル円が堅調となり、161円ちょうど前後に上昇。
ロンドン市場は、ドル買いが継続。東京午後からロンドン朝方にかけては米債利回りの上昇とともにドルが買われた。その後、米債利回りが上昇を消す動きとなったが、ドル安方向には反応薄。ドル円はじりじりと高値を伸ばし、150.80近辺へと上昇。前日高値を上回っている。ユーロドルは1.06台後半で上値重く推移しており、足元では安値を1.0660付近に広げている。ポンドドルも1.22台から軟化しており、1.2240付近まで下押しされた。クロス円は上昇一服。ユーロ円は161円台に一時乗せたあとは、160.70付近まで軟化。ポンド円は185円近辺から184.50台まで軟化。ただ、足元では下げも一服。欧州株は売りが先行も次第に下げ渋っている。米10年債利回りは4.57%付近から4.61%付近で上に往って来い。ベイリー英中銀総裁やマクルーフ・アイルランド中銀総裁は利下げの議論は時期尚早とした。レーンECBチーフエコノミストは最近のユーロ圏インフレ率2.9%に低下、「あまり安心すべきではない」とインフレ警戒感を解いていなかった。ドル指数は今週に入って3営業日連続で上昇、先週末の米雇用統計を受けたドル売りに対する調整が続いている。
NY市場では、円安の動きがみられた。NY時間に入ってドル売りが再開した。米国債利回りが低下しており、ドルを圧迫している。ユーロドルは1.07ドル台に再浮上。ポンドドルも一時1.23ドル付近まで買い戻された。しかし、ドル円は151円台に一時上昇しており、円安がドル安に勝った。特に対クロスでの円売りが強まり、ユーロ円が161.70円近辺まで上げ幅を伸ばしたほか、ポンド円も一時185.65円付近まで上げ幅を拡大した。各国中銀で利上げキャンペーンの終了が取り沙汰されており、来年の利下げも織り込む動きが出ているものの、それ以上に日銀は思い切った緩和解除に出られないとの見方が円の上値を重くしているもよう。今週に入ってFOMC委員の発言がいくつか伝わっているが、先週のFOMC後に市場がイメージしたよりは若干タカ派な印象も。米地区連銀総裁などのFOMC委員は追加利上げの可能性をしっかりと温存し、市場の利下げ期待については完全に否定している。
(9日)
東京市場で、ドル円は底堅く推移した。前日海外市場で日米金利差を背景にドル高・円安が進行し、一時151.06近辺まで上昇した。東京市場では介入警戒感などから上昇一服し、150円台後半に伸び悩む場面があった。しかし、取引終盤に米10年債利回りが上昇に転じると、午前の下げを帳消しにして151.09近辺と前日高値を小幅更新した。ユーロ円も同様に前日高値を上回る161.74近辺まで上昇。ユーロドルは午後に安値を広げ、1.0702付近まで弱含んだ。日経平均の大幅な上昇から、リスク動向に敏感なオセアニア通貨が買われ、NZドル/ドルは0.5930付近、NZドル円は89円台半ばまで一時上昇した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米10年債利回りが4.49%付近から4.54%付近に上昇しており、ドル相場を下支えした。ドル円は振幅をみせつつも151円台に再び乗せた。ロンドン朝方に151円台に乗せたあと、150.77近辺まで一時下落。市場が介入警戒水域で神経質となったことや、輸出企業の円買いなどの観測もあったもよう。しかし、植田日銀総裁が根強い緩和継続姿勢を示したことで米債利回り上昇とともに151.20付近まで上昇。ユーロドルは東京市場で1.07台乗せ水準に高止まりしていたが、ロンドン時間に入ると1.07台割れから1.0680近辺へと軟化。デギンドスECB副総裁やビルロワデガロー仏中銀総裁は、利下げの議論は時期尚早とする一方で、追加利上げについても否定的。インフレのトレンドが下向きである点も指摘した。ポンドドルは上に往って来い。ピル英中銀チーフエコノミストが、サービスインフレや賃金などについて根強いインフレ圧力に警戒感を示したことにポンド買いが先行。ポンドドルは一時1.23台に乗せた。しかし、米債利回り上昇を受けた全般的なドル買い圧力に1.2250台へと押し戻されている。欧州株や米株先物は総じて堅調推移。ただ、クロス円の円売りの動きは明確ではなく、ユーロ円は161円台半ばで揉み合い、ポンド円は185円台前半から後半で上に往って来いとなっている。
NY市場では、ドル相場が振幅も、後半の取引でドル買いが優勢となった。ドル円はロンドン午前に151.20付近まで買われたあと、上昇一服となると150.80台まで反落する場面があった。しかし、その後は買いが復活している。午後にパウエルFRB議長のIMFでの討論会が伝わったが、「十分な引き締めを行ったと確信していない」と発言している。議長は「適切となれば、躊躇なく追加利上げを行う」とも述べていた。先日のFOMCを受けて市場にはハト派な雰囲気も広がっていたが、きょうの議長の発言はその雰囲気に冷や水を浴びせた格好となった。この日の米30年債入札を受けて米国債利回りが上げ幅を拡大したこともドルの買い戻しをサポートした。取引終盤には151.40付近へと高値をのばした。ユーロドルは序盤に1.0720台まで買われたが、その後はドル買いに押されて下落。バウエル発言後には1.0660台まで下押しされた。ポンドドルも1.23手前まで買われたあとは、下落に転じた。取引終盤には1.2210付近まで下落。クロス円は米株安の反応もあって軟調。ユーロ円は161円台後半から前半へ、ポンド円は185円台半ばから184円台後半に下げた。
(10日)
東京市場では、ドル相場が前日からのドル高圏で推移。ドル円は前日NY終盤にパウエル米FRB議長が、必要なら追加利上げを行う考えを示したことでドル高が進行、一時151.39付近まで水準を切り上げだ。東京午前には米10年債利回りの上昇が一服したことを受けて、151.22近辺まで弱含む場面があった。しかし、その後は再び買われて1日以来およそ1週間ぶりの高値となる151.41近辺まで買われた。ユーロドルは1.06台後半で12ポイントレンジにとどまっている。水準的には前日からのドル高・ユーロ安水準に張り付いている。ユーロ円は午前に161.36近辺まで下落したあと、午後には161円台半ばへと下げ渋った。
ロンドン市場は、ドル買いが先行もその後は一服している。昨日のNY終盤にパウエルFRB議長がタカ派姿勢を示したことで、ドル買いや株安の動きが広がった。東京市場では値動きが停滞したが、ロンドン時間に入ると再びドル買いの動きがみられた。序盤は前日の調整で低下していた米債利回りが再び上昇し、ドル買いにつながっている。ドル円は151.50付近へと上昇、年初来高値を意識する水準へと上昇。ユーロドルは1.0656近辺に安値を広げたあとは、1.0690付近へと反発。ポンドドルは1.22台前半の取引が続くなかで一時1.2207近辺に安値を広げた。ただ、いずれも日中の値幅は限定的。この日発表された英月次及び四半期GDPはいずれも市場予想を上回ったが、ポンド買い反応はほどんとみられなかった。むしろ、低成長が続いたことがポンド相場を圧迫した面もあるようだ。ポンドは対ユーロで軟調に推移している。
NY市場では米債利回りが持ち直したこともあり、ドル高がやや優勢となった。0時発表の米ミシガン大学消費者信頼感調査において、1年期待インフレ率と長期期待インフレ率がともに予想外に上昇したことが長期債利回りの反発につながり、ロンドン市場からNY市場朝にかけて低下していた米10年債利回りが低下分を解消する動きとなってドルを支えた。ドル円は午後に入って151円60銭と週の高値を更新し、10月31日に付けた直近高値151円72銭を意識する展開となった。ユーロドルは1.06台後半のレンジ取引。午前中に1.0693を付けたが、米債利回りの低下一服で1.0660台に落とし、その後1.0680台を回復と一方向の動きにならなかった。

執筆者 : MINKABU PRESS
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