ドル円は105円台に下落 米経済の不安によるドル売りの可能性も=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル売りの流れが続く中で、ドル円は105円台に下落した。6月安値が106円ちょうど付近に来ていたが、その水準を割り込み、ストップを巻き込んだようだ。105.70円付近まで下落し、来週は心理的節目の105円を試す展開になるか警戒される動きが見られている。
米国での感染第2波拡大に加えて、米中対立も激化してきている。きのうは米新規失業保険申請件数が予想外の増加を示し、市場にはネガティブな雰囲気が広がったが、失業給付に対する週600ドルの上乗せ措置の期限が来週に迫る中、追加対策がまだ決まっていないことも不安を呼び込んだようだ。
期限切れとなった場合は、何百万もの人に影響が及ぶと見られ、米政府や議会も12月末まで延長の方針を示している。米追加対策は来週早々にも打ち出されると見られ、失業給付の上乗せも延長が決まるものと見られるが、給付規模は減額する方針で、一部からは、今回の追加対策に対して、不十分だったり、遅過ぎたりする可能性があるとの不安も聞かれる。
為替市場はドル売りの流れが続いているが、これまでは市場が先行きに楽観的で、むしろ、リスク選好のドル売りだった。しかし、ここに来て、米経済の先行き不安による素直なドル売りに変化しそうな気配も見せており、ドル円は下値警戒感を強めているのかもしれない。
ユーロドルは買いが続いており、1.16ドル台半ばまで上げ幅を広げた。前日は1.1620ドル付近で上値を止められていたが、その水準を上抜く動き。過熱感は高まっているものの、上値追いが続いているようだ。
欧州で感染第2波が米国ほど拡大を見せていない点もユーロドルを買い易くしているのかもしれない。ロンドン時間に7月のユーロ圏PMI速報値が発表になっていたが、予想を上回り約2年ぶりの高水準に上昇した。製造業、サービス業いずれも50を上回り、景気回復の兆しを見せている。
ただ、手放しでは喜べない面もあるようだ。航空会社やアパレル、自動車部品など多くの企業が、すでに発表済みの数千人規模の人員削減に加えて、追加削減を明らかにしている。この日のPMIは全体的にはV字回復の初期兆候を示していたが、受注残や雇用は下振れリスクも警告しているとの指摘も聞かれる。
ポンドドルも買いが優勢となり、1.28ドル台まで上げ幅を広げる場面がみられた。6月高値1.2815ドル付近を視野に入れる動きが見られている。200日線を上放れる展開が続いており、上値への勢いが強まっているようだ。
今週もEUとの貿易交渉は進展がなく、予想通りに難航している。貿易交渉に関しては悲観的な見出しが相次ぐものの、ポンドは一向にネガティブな反応を見せない。一部からは、いまは進展はないものの、市場は年後半の土壇場で合意すると期待しているのではとの声も聞かれる。パンデミックで経済が大きく落ち込む中で、自らそれを助長するような行動は取らないとの安易な期待があるのかもしれない。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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