【これからの見通し】米関税に新たな局面、短期的にはドル高に方向転換へ
【これからの見通し】米関税に新たな局面、短期的にはドル高に方向転換へ
米関税は新たな局面を迎えている。米貿易裁判所がトランプの世界的な関税措置は違法、阻止する判断を下した。4月2日に発動された相互関税を破棄するとしている。トランプ政権に10日以内に関税を止めるための行政命令を出すよう求めるとした。
この報道を受けてドル買い・円売り、株高、米債利回り上昇の反応が広がっている。いわゆるリスク選好の動き。ドル指数は短期レジスタンスの10+21日線を上抜けてきている。東京午後には値動きが落ち着いているが、為替市場では引き続きドル高・円安水準を維持している。欧州株先物・時間外取引は堅調に推移しており、このあとの欧州株式市場もリスク選好の動きで取引を開始することが想定される。ドル円が再び146円台に乗せ、その水準を維持できるのかどうかがカギとなろう。
ただ、ネガティブな動きもある。トランプ政権は判断を不服として連邦の裁判所に控訴すると表明している。また、トランプ米政権は中国への半導体設計ソフトウエアの販売を制限することを検討、中国へのジェットエンジン、半導体技術、一部化学物質などの輸出を一時停止、中国共産党とつながりある中国留学生ビザ取り消し、中国からの申請者全員に対するビザ基準改訂など対中強硬姿勢を打ち出している点には注意が必要となろう。
この後の海外市場で発表される経済指標は、トルコ貿易収支(4月)南ア生産者物価指数(PPI)(4月)南ア中銀政策金利(5月)ブラジル雇用統計(4月)カナダ経常収支(2025年 第1四半期)米実質GDP(改定値)(2025年 第1四半期)米新規失業保険申請件数(05/18 - 05/24)米中古住宅販売成約指数(4月)など。米GDP改定値はトランプ関税以前の第1四半期の数字とあって、市場に注目度は低くなりそうだ。目先の雇用状況の材料として、週次の新規失業保険申請件数が注目される。市場予想は23万件と前回の22.7万件から大きな変化は見られない見込み。
発言イベント関連では、バーキン・リッチモンド連銀総裁が討論会に参加、グールズビー・シカゴ連銀総裁がマキナック政策会議に出席、クーグラーFRB理事がマクロ経済会議開会で挨拶、ベイリー英中銀総裁が討論会に参加、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁が討論会に参加する予定。米週間石油在庫統計、米7年債入札(440億ドル)なども予定されている。赤沢再生相が4回目の訪米を行う。通商交渉関連の新たな材料がでてくるのか、明日予定されている日米関税交渉を控えて逐一の報道に市場は反応しそうだ。
minkabu PRESS編集部 松木秀明

執筆者 : MINKABU PRESS
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