米CPI受けドル円は133円台に上昇 FRBにスタンスの変化はそれほどなしか=NY為替概況
きょうのNY為替市場、朝方発表の米消費者物価指数(CPI)を受けてドル買いが強まった。ほぼ予想通りの内容で、発表直後はドル売りが強まり、ドル円も131円台に急速に下落した。しかし、売りが一巡すると、今度は買い戻しが強まる激しい展開が見られ、ドル円は133円台まで急上昇している。
米CPIは予想通りではあったものの、持続的インフレを示す内容でもあった。パウエルFRB議長が注目する住居費を除いたコアサービスのインフレ、いわゆるスーパーコアも前月比0.3%の上昇と伸びは緩いものの有意義な低下までは見られていない。先日の米雇用統計後のタカ派なFRBを正当化する内容との受けとめだったようだ。米CPIを受け短期金融市場は3月に続き、5月も0.25%の利上げ期待が高まっているほか、6月利上げの可能性も視野に入れ始めている。また、年内利下げ期待も後退している。
ただ、米CPI発表後に伝わった、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の発言は「われわれはまだ仕事が終わっていないが、恐らく金利は十分抑制的な領域に近づいている」と述べていた。また、ウィリアムズNY連銀総裁も「FF金利の年末のレンジは5.00-5.25%が適切」と述べている。市場の一部からは、FRBは発表前とスタンスはそれほど変化はないのではとの見方も出ているようだ。
ユーロドルは軟調。米CPI発表直後は1.08ドル台に上昇する場面が見られたものの、その後、1.07ドル台前半に押し戻された。ただ、市場からは、ユーロドルは上値追いに苦戦しているが、ユーロ圏の金利は着実に上昇しており、市場の関心がそこに戻れば、ユーロドルは1.10ドル台を再び目指す展開になるとの指摘も出ている。市場では次回のECB理事会でも0.50%の大幅利上げが有力視されている。その雰囲気を受けてユーロ圏の短期金利も上昇が続き、昨年第4四半期以降のユーロの強さの源泉となっている。
ECB理事はなおタカ派なレトリックを維持していることから、ユーロの短期金利への期待値はこのサイクルでの最高値に上昇。一方、現状のユーロドルは金利上昇に追い付いていないが、それは時間の問題だという。実際、ユーロの実質の政策金利はなおマイナス圏にあり、プラス圏に到達するにはさらに引き上げが必要。そうなれば、金利は上昇基調を維持し、今後数カ月ユーロを下支えすることになるという。
ポンドドルは売りに押された。一時1.21ドル台前半に下落し、上値の重い展開が続いている状況。この日はロンドン時間に10-12月の英雇用統計が発表になっていた。それを受けて市場からは、英中銀は次回3月の金融政策委員会(MPC)で政策金利を現行の4.00%に据え置くことが可能と見るべきとの声が聞かれる。
昨年末にかけて雇用者数自体は増加したものの、総労働時間が0.3%減少し、企業内にスラックが蓄積していることが示されている。労働力人口の増加とともに、過去3年間続いた労働供給量の減少傾向が好転しつつある兆候が出ているという。そのため、MPCは今後数カ月間、政策金利を現行の4.00%に維持することができる指摘している。
ただ、きょうの英雇用統計を受けての市場のコンセンサスは0.25%の利上げ観測が強まっている状況ではある。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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