為替相場まとめ7月13日から7月17日の週
13日からの週は、中東情勢の緊迫化、米インフレ指標の変動、そしてGPIF報道をめぐる政策観測が重なり、主要通貨は方向感を欠きながらも断続的に振れる展開となった。週前半はイラン情勢の悪化や原油高を背景に「有事のドル買い」が強まり、ドル円は162円台を中心に荒い値動き。高市首相発言を受けたGPIFの国内投資比率引き上げ観測は円高材料となったが、地政学リスクと米金利上昇が株安・債券安・円安を同時進行させ、市場の不安定さが際立った。ユーロはエネルギー高による景気懸念で上値が重く、ポンドは英中銀の利上げ観測が強弱入り混じり、対円で不安定な推移となった。週中盤は米CPIの鈍化でドル安が進み、ドル円は161円台半ばまで急落したが、円キャリー需要が下支えとなり下値は限定的。ユーロドルは1.14台へ反発したものの、エネルギー価格の高止まりが戻りを抑えた。ポンドは右派寄りの財務相人事報道で一時急騰したが、左派の反発が伝わり買い戻しは続かなかった。週後半は米PPIも弱含みとなりドル安が続いたが、中東情勢の再緊迫や米当局者のタカ派発言がドルを支え、ドル円は162円台へ戻した。ユーロは天然ガス高が重石となり、ポンドは英中銀副総裁の慎重姿勢で売られる場面が目立った。地政学リスク、エネルギー価格、米金融政策の三要因が相場を支配し、方向感の乏しい中でボラティリティが断続的に高まる週となった。
(13日)
東京市場では、中東情勢の緊迫化に伴う有事のドル買いが強まり、ドル円は先週末の161.60円台から162円台を回復し162.10円台まで上昇した。日本長期債利回りが2.79%台へ上昇する「円安債券安」となる中、ロイター通信が「片山財務相によるGPIFなどへの国内投資支援発言は資産構成比率の変更を想定したものではない」と政府筋の情報を伝えたことで、円安と国債売り(金利上昇)が一段と進行した。この報道を受けて反発局面にあった日経平均株価も一服し、トリプル安の様相を呈した。ユーロドルは早朝に1.1420ドルを付けたあと1.1384ドルまで急落し上値の重い推移となった。ユーロ円は対ドルのユーロ安で一時184.31円まで下落したが、午後に円売りが強まると185.05円まで反発。ポンド円も217.20円台へ上昇した。
ロンドン市場では、GPIFの資産構成比率変更は想定していないとの報道を受けた円売りからドル円は162.36円まで上昇したが、木原官房長官が「ポートフォリオ見直しは必要なら行われる」と発言したことで161.85円近辺へ急落した。しかし、政府が比率引き上げを促す意思はないと市場に受け止められると、再び162.20円台へと買い戻される荒い展開となった。ユーロドルは東京でのドル高局面でも1.1380ドル台が堅調だったため反発し一時1.1446ドルを記録。ユーロ円も木原発言で184.68円まで下落後に185.40円台まで上伸した。ポンドドルはユーロにつれ高となって1.3411ドルまで上昇したが、対ユーロのポンド売りが重石となり1.34ドルを割り込んだ。ポンド円は報道による円安で217.30円前後まで上昇後に急落するなど不安定に推移した。
NY市場では、イラン港湾の封鎖報道やホルムズ海峡の通行料要求で米国とイランの対立が激化し、有事のドル買いからドル円は162円台半ばへ上昇。原油高やウォラーFRB理事の利上げ言及も加わり今月FOMCでの利上げ期待が50%に浮上した。ユーロドルは一時1.14ドル台半ばに戻したが、エネルギー高による欧州景気懸念から再び1.13ドル台へ下落。天然ガスの在庫不足も手伝い、一部では今月中に1.13ドル台前半を割り込む一段安の予想も出た。ポンドドルは1.33ドル台半ばに下落し200日線を下放れ。ポンド円も216円台へ。一方で原油急騰による英インフレリスクから英中銀の追加利上げ期待が高まり、市場は年内1回の利上げを完全織り込み、2回目を73%まで織り込んだ。ドル円はユーロドルの動きに沿う形で一時185円台半ばへ上昇後に反落した。
(14日)
東京市場では、前日のドル買い優勢から一転し、調整売りや「日本売り」の一服によりドル円は162.23円近辺へ軟化した。午後には20年国債入札が応札倍率4.52倍と極めて好調(テール0銭)だったことで需要の強さが意識され、10年債利回りが2.801%から2.700%まで低下。これを受けた円買いが支えとなりドル円の下値は限定的だった。前日に下落したユーロドルは、ドル高の調整を追い風に朝方の1.1378ドルからじりじりと買い戻されたが、1.1400ドルの大台回復には至らず上値の重さが残った。ユーロ円は押し目買いに支えられて185円台を中心に方向感を欠く取引となった。ポンドドルも1.3342ドルから1.3371ドルまで反発。ポンド円は217円台に乗せる場面もあったが押し戻され、216円台後半を中心にもみ合った。
ロンドン市場では、米CPIの発表を控えて前日のドル高に対するポジション調整が進み、ドル安・円買いが優勢となった。ドル円は162.48円近辺から162.06円付近まで下落したが、162円の大台は維持。東京午前に片山財務相と上野厚労相がGPIF見直しに前向きな姿勢を示したことも円買いを支援した。ユーロドルは1.1378ドルを安値に1.1406ドル付近まで上昇。ポンドドルは1.3342ドルから1.3384ドル付近へ上値を伸ばし、ポンド円も217.14円付近まで上昇した。ベイリー英中銀総裁が中東の戦闘再開に伴う金融安定への懸念を示す中で、市場は年内2回の利上げを織り込み、ユーロポンドは0.8518までポンド買いが優勢となった。クロス円は円高の動きが限られ、ユーロ円は185円を挟んで揉み合う展開に終始した。
NY市場では、米CPIが予想以上に鈍化したことで米国債利回りが急低下し、ドル円は一時161.65円付近まで急落した。しかし円キャリー取引への根強い期待から押し目買いが入り、後半には下値を戻した。インフレ鈍化を受けて7月FRB利上げ確率は50%から15%へ急低下。ウォーシュFRB議長は議会証言で高インフレを容認しない姿勢を強調した。ユーロドルは一時1.1460ドル付近まで上昇。原油高によるECB利上げ観測の復活で短期金利差は縮小したが、エネルギー価格高騰の継続が警戒され、1.10ドルへの下落リスクも指摘された。ポンドドルは1.3440ドル近辺まで上昇後に1.33ドル台へ、ポンド円は217.40円近辺から216円台へと失速。翌日のGDP発表を控え、第2四半期は0.2%成長と堅調な英経済の勢いが予想された。
(15日)
東京市場では、ゴトウビに伴う仲値のドル売りなどによる短期ポジション調整から、午前中にドル円は161.97円まで下落。しかし流れは続かず、午後には162.20円台を回復した。前日の米CPIの弱含みで米早期利上げ期待が後退したためドル売りが入りやすかったが、値幅は30銭にとどまる小動き。ユーロドルは米CPI後の上昇から売りに押され、1.1410ドル台で底堅さを見せた後に反発したが1.1440ドル台に留まった。ポンドドルも一時1.3440ドルから下落後に反発し1.3420ドル前後へ。対ドルでのユーロやポンドの買い戻し、そしてドル円の底堅さからクロス円はしっかり。ユーロ円は午前中に185.24円まで下落後に185.62円まで上昇。ポンド円はポンド買いも強まり、朝の217.00円前後から午後に217.63円まで上昇した。
ロンドン市場では、東京時間のドル売りから一転し、ドル買いが優勢となった。ドル円は162.40円台まで高値を伸ばし、前日終値(162.25円)を上回った。米PPIのコア前年比が前回を上回る予想だったためのポジション調整や、米中央軍のイラン攻撃開始報道による原油高(80ドル台乗せ)が有事のドル買いを誘発した。このドル高に伴い、ユーロドルは1.1444ドル付近から1.1410ドル付近、ポンドドルは1.3420ドル付近から1.3380付近へと安値を更新。ユーロ円は一時185.62円まで上昇後に185円台前半へ反落し、ポンド円も217.70円まで上昇後に217円台前半へ上値を抑えられた。OECDがバーナム氏の首相就任を前に財政規律維持を求める中、ポンド独自の動きは限られ、クロス円は方向感に欠けた。
NY市場では、米生産者物価指数(PPI)もインフレ鈍化を示したことでドル安が優勢となり、ドル円は一時161円台へ下落。今月FOMCの利上げ確率は10%に急低下した。ただトランプ氏が地上軍派遣を含む軍事作戦拡大支持と報じられるなどイラン情勢の緊迫化がドルを支え、終了間際には162円台に戻した。ユーロドルは21日線を上回り1.14ドル台後半へ上昇。ツイーザーボトムを形成しテクニカル的にも反転の兆しを見せた。ユーロ円も186円台へ。ポンドドルはバーナム次期政権の財務相候補に財政拡張を志向するミリバンド氏ではなく財政規律重視のマフムード内相が指名されるとの報道から、一時1.35ドル台半ばへ急騰し200日線を上放れ、独歩高を演じた。ポンド円も一時217.40円近辺へ買い戻された。
(16日)
東京市場で、ドル円は162.03円から162.21円の18銭という極めて狭いレンジでもみ合った。米PPIの弱含みで一時161.90円前後を付けたものの、中東情勢への警戒から162円台をキープして朝を迎えた。インフレ指標の軟化により今月FOMCでの利上げ期待は10%前後まで後退したものの、依然として日米金利差が存在することから円キャリー取引の意欲が底堅く、上下ともに動きづらい展開。ユーロドルも1.1460ドルから1.1475ドルの15ポイントレンジでもみ合い、ユーロ円も185.83円〜186.00円の狭いレンジに終始した。前日に財務相人事報道で急騰したポンドドルは1.3520ドルから1.3544ドルで高止まり。ポンド円は一時219.21円まで軟化したものの、午後は219.50円台へ買い戻された。
ロンドン市場は、ポンドを除いて方向感のない、極めて静かな取引となった。ドル円は161.99円から162.21円のわずか22銭レンジで推移し、ボラティリティは歴史的低水準(4%台)に低下。ユーロドルは1.1459ドル〜1.1476ドル、ユーロ円は185.79円〜186.00円の狭いレンジでもみ合った。原油価格が79ドル台に落ち着き、市場は中東情勢の進展待ち。その中でポンドが全面安を演じた。前日までのポンド買いに対する調整が入ったことに加え、ブリーデン英中銀副総裁が「経済低迷を背景に利上げを行う理由はほとんどない」と言及したことが冷や水となった。ポンドドルは1.35台半ばから1.35ちょうど付近へ下落し、ポンド円も219円台後半から218.80円台へ軟化した。ユーロポンドは0.8491までユーロ高となった。
NY市場では、米新規失業保険申請件数が予想を下回り、米軍による対イラン攻撃の再開やホルムズ海峡の船舶減少が伝わると、ドル高が優勢になりドル円は162.55円付近まで上昇した。早期利上げ観測は後退しているものの、FOMC委員が利上げへの含みを示したこと、さらに中東情勢やタカ派姿勢、AI設備投資を背景とした年後半のドル高シナリオが意識されドル高基調は継続した。ユーロドルは1.1475ドル近辺から1.14ドル台前半に伸び悩んだ。天然ガス価格の上昇がユーロ圏に悪影響を及ぼすため、1.15ドル付近では戻り売りの予想もある。ポンドドルは1.34ドル台、ポンド円は218円台へと下落。バーナム氏による財務相人事は安心材料だが、英国の多額の政府債務や税負担を踏まえると、財政運営への懸念からポンド上昇は持続しないとの見方も根強い。
(17日)
東京市場は、全般に小動き。ドル円は162.40円付近の極めて狭いレンジにとどまり、主要通貨ペアは落ち着いた動きとなった。強い米経済指標や中東情勢の緊迫化がドルの下支えとなったものの、週末を前にポジション持ち越しを警戒する様子見ムードが強く、上値を試す勢いには欠けた。前日に下落したユーロドルは、昼過ぎまで上値の重い展開が続いたものの、ロンドン参入時間帯にかけて1.1435ドルから1.1451ドルまで買い戻された。ポンドドルも午後に入り1.3457ドルから1.3476ドルまで上昇したが、戻りは限定的。ユーロ円は186円台の重さから一時185.69円まで押し戻されたが、その後の対ドルでのユーロ買いを受けて185.90円台まで反発した。ポンド円は一時218.57円まで下げた後に218.78円まで買い戻された。
ロンドン市場は、ドル円やユーロドルなど主要通貨が方向感に欠ける展開となっている。株式市場ではAI関連銘柄を中心に調整が続き、中東情勢の緊迫化で原油は上昇する一方、米債利回りは低下しているが、為替は反応薄。ドル円は高市首相のGPIF関連発言で一時円買いとなったものの続かず、日銀が7月会合で政策金利を据え置くとの観測も円売りは限定的で、162円台前半から半ばの狭いレンジにとどまっている。ユーロドルも1.14台前半から半ばで小動きが続く。その中でポンド安が際立ち、財務相人事を巡り労働党左派の反発報道が広がったことで、財政規律への不透明感が意識されている。ポンドドルは1.34台後半から前半へと下押しされ、ユーロポンドも上昇している。
NY市場は膠着した展開が続き、ドル円は162円台での振幅が続いた。オプション市場で1カ月物のボラティリティも2022年2月以来の低水準に低下している。為替市場は夏枯れ相場の様相を呈しているが、状況に変化はない。今週の米インフレ指標が、想定上のインフレ鈍化を示したことから、FRBの早期利上げ期待は後退。しかし、年内1回以上の利上げの可能性は織り込んでおり、FOMC委員からも追加利上げに賛同する姿勢が垣間見られている。イラン情勢も不透明で原油価格も再上昇していることから、インフレ懸念は根強い。
執筆者 : MINKABU PRESS
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