為替相場まとめ3月17日から3月21日の週
17日からの週は、ドル相場、円相場いずれも明確な方向性を示さなかった。日銀、米FOMC、英中銀などの金融政策発表が注目された。いずれも市場は政策金利据え置きを事前に織り込んでおり、結果もその通りとなった。その声明や会見などではトランプ関税に対する経済先行きの「不確実性」が高いことが示された。米FOMCでは金利見通しを従来からの年内2回に据え置いた。成長見通しを引き下げ、インフレ見通しを引き上げた。さらに、保有資産の縮小、いわゆるランオフのペースを縮小すると発表。当初はドル売り反応も持続性には欠けていた。パウエル議長は利下げを急がない姿勢を堅持した。その後、トランプ大統領が利下げ圧力をかけたが、市場は反応薄だった。日銀はいつもよりも早めの時間帯に政策金利据え置きを発表した。植田日銀総裁会見では、春闘の好調を受けて、見通し通り進展すれば金融緩和の度合いを調整すると繰り返された。その中で、トランプ関税に関して不確実性が高いとの認識も示された。ドル円は一時150円乗せとなる場面があった。英中銀も予想通り政策金利を据え置いた。今回の会合ではディングラ委員のみが25bp利下げを主張するにとどまった。世界的な貿易政策や地政学的な不透明感が高まったとし、短期的にインフレが上昇する見通しが示された。ドル相場は振幅を伴いながらも、週末にかけてややドル高方向に動いた。円相場はドル円が148円台前半から150円乗せ水準で激しく振幅、クロス円も目立った方向性を示さなかった。ユーロ対ポンドではユーロが軟調。ドイツ議会で財政改革法案が可決し、事前に買われていたユーロ相場に調整がみられた。ポンドにとっては英中銀の慎重姿勢とともに、来週の英春季予算案を前に動きにくい面があったようだ。ウクライナ情勢については、部分的な停戦が合意されたが、エネルギー関連以外には双方からの攻撃が続いている。トルコではエルドアン大統領の有力なライバルであるイスタンブール市長が突然拘束され、トルコ政府への信任が急低下し通貨・株式・債券がトリプル安となった。
(17日)
東京市場は、円売りが優勢。ドル円は、午前に148円台後半を中心に揉み合ったあと、午後に円安方向に振れ、一時149.10付近まで上昇した。トランプ米大統領が18日にロシアのプーチン大統領と協議すると発言したことから、ウクライナ情勢への警戒感が後退し、円売りにつながった。トランプ米大統領はディールは「極めて見込みが高い」との認識を明らかにしており、戦争終結に向けて進展があるかどうかに注目が集まっている。ユーロ円は一時162.26付近まで、ポンド円は一時192.85付近まで上昇したあと、高止まり。ユーロドルは揉み合い。午後に一時1.0894付近まで強含む場面があったが、上値は限定的となった。
ロンドン市場では、ドルが小安く推移。米10年債利回りが4.31%付近から4.28%付近へと低下する動きが手掛かり。ドル円は149円台乗せまで買われたあとは148.50割れへと反落。ユーロドルは1.08台後半から1.09台乗せへ、ポンドドルは1.29台前半から後半へ、豪ドル/ドルは0.63台前半から半ばへとそれぞれ上昇している。クロス円は全般に円安方向に振れている。豪ドル円は94円台半ばへと高値を伸ばした。ユーロ円は162円台前半、ポンド円は192円台に買われたあとは、ユーロ円は162円挟み、ポンド円は192円台半ばでの揉み合いに落ち着いている。欧州株が小高く推移する一方で、米株先物・時間外取引は先週末の上昇から反落している。OECD世界世界経済成長予測ではトランプ関税の影響を受けて今年と来年の成長見通しが引き下げられた。特にカナダとメキシコの落ち込みが激しくなる予測だった。このあとのNY市場では米小売売上高とNY連銀指数が発表される。市場はあすの米露電話会議やドイツ議会の動向待ちのムードが広がっている。
NY市場では、ドル円が再び149円台に上昇。米株式市場が本日も買い戻されていることがドル円をサポートした。この日の米小売売上高の発表後に一時149円台に上昇する場面が見られたものの、上値を抑えられていた。ただ、日銀決定会合を控えて円ロングが高水準に積み上がっており、その分、円売りが出易い状況ではある。ユーロドルは1.09台前半での推移。上値は抑えられてはいるものの、下押す動きもなく、上値追いの展開は続いている。心理的節目の1.10が焦点となっている。迫り来るトランプ関税と弱い米経済活動が米国株の重荷となる可能性があり、ドルは後手に回る可能性が高いとの見方があった。ドイツ議会がメルツ次期首相が予定している財政支出計画を承認すれば、ユーロは上昇する可能性も。ポンドドルは買いが優勢となり、1.30を試す展開が見られた。1月中旬からのリバウンド相場の流れが続いており、チャート的にはもう一段の上値追いも期待できそうな形状が見られている。市場は来週3月26日のリーブス英財務相の予算案の提出を注目している。。リーブス英財務相は歳出削減を発表すると見られ、財政引き締めはポンドにとってマイナス要因になる可能性が指摘された。英中銀は今週の金融政策委員会(MPC)で政策を据え置くと見られている。短期金融市場では年内にさらに2回以上の利下げを織り込んでいる。
(18日)
東京市場では、ドル円が堅調。149.10台から149.88近辺まで上昇、今月5日以来の高値圏となった。先週の高値149.19レベルを昨日NY市場終盤に超えると、東京市場に入ってもドル高・円安が継続。昨日の米株高を受けて日経平均をはじめアジア株が軒並みの上昇でリスク選好の動きが広がった。ユーロ円も買われ、163.48近辺に高値を伸ばした。中東情勢への警戒感が出ていたが、リスク回避の円買いは目立たず。昨日の海外市場で1.0930ドルまで上昇していたユーロドルは、ドル高の流れに押され1.0904近辺まで軟化した。
ロンドン市場では、ユーロ買いが優勢。この日ドイツ議会では財政改革案に関する採決が実施されて緑の党の賛成で可決する見込み。財政規律が緩和されることから防衛費増や景気刺激策などがドイツ景気を押し上げることが期待されている。ロンドン市場ではユーロ買いが先行し、対ドルで1.09台半ば、対円で164円台乗せ、対ポンドでもユーロが買われた。ただ、この後の米露電話会談を控えて、プーチン氏が「ウクライナ和平案ですべての武器供給停止要求へ」との関係者発言が伝わると、市場にはやや警戒感も広がり、ユーロ買いの勢いは次第に落ち着いている。独ZEW景況感は予想以上に改善したが、市場は反応薄だった。ポンドも対ドルや対円ではユーロに連れ高となった。対ドルでは一時1.30台の節目水準に乗せる場面があった。対円では195円手前まで買われた。足元ではユーロと同様に買い一服となっている。木曜日の英中銀金融政策委員会では政策金利据え置きが市場に織り込まれている。ドル円は東京市場から引き続き堅調に推移。ロンドン序盤には149.90近辺まで高値を伸ばした。しかし、150円台に乗せには至らず149円台後半での揉み合いに。明日の日米金融政策会合ではいずれも政策金利据え置きが市場コンセンサスとなっており、目先の日米金利差縮小観測は後退している。円相場には日銀追加利上げ観測に基づいた円買いポジションに対する調整圧力が続いている。
NY市場では、ドル円が反落。本日のドル円は、今週の中銀のイベントを前に円ロングの巻き戻しが断続的に観測され、節目の150円を試す動きも出ていた。ただ、150円に接近するとオプション勢などの戻り待ちの売りも観測され、いまのところ上値を止められている状況。明日の日銀決定会合とFOMCを受けて150円を突破しに行くか、それとも一旦後退するか、短期的には重要な分岐点となる。FOMCは据え置きが確実視されているが、今回は委員の金利見通し(ドットプロット)が公表され、注目を集めそうだ。市場では年内2回以上の利下げを見込んでおり、その予想に沿った内容になるのか注目される。ユーロドルは振幅。一時1.09を割り込む場面も見られたが、終盤にドル安が優勢となり、1.09台半ばに戻している。米国からの資金流出が言われる中、ユーロがリスク回避通貨に変化するのではとの声も出ている。最近、市場で新たなテーマとなっているのは、米株から欧州株への資本の移動で、これが本格化するようであれば、その可能性も。ポンドドルは1.30台に上昇。引き続きドルの軟調な展開がポンドドルの買戻しを下支えしている。市場では、英金利が今年も主要国の中で比較的高い水準に留まるとの見方が浮上していることもポンドをサポート。
(19日)
東京市場では、ややドルが買われている。ドル円は仲値関連のドル買いが入り、149.60近辺まで上昇。149.30付近で日銀会合の結果発表を迎えた。通常よりも早い11時25分ごろに据え置きが発表されると、瞬間円売りとなり149.50台を付けたが、すぐにドル売り・円買いに転じ149.20台に反落。もっとも日銀会合前の朝のレンジ内にとどまった。その後はドル全般に買われるなかで、149.90近辺まで買われている。。米WSJ紙の著名なFRB担当記者ニック・ティミラオス氏がローゼングレン元ボストン連銀総裁の発言などを引用して、FRBが今後6カ月ほどは様子見に徹するとの見通しを示したことなどが早期利下げ期待の後退につながり、ドル買いとなった面も。ユーロドルは1.0940台から1.0923近辺まで小安く推移。ユーロ円は午後の円売りで163円台前半から後半へ上昇。
ロンドン市場では、ドル買いが優勢。トルコでエルドアン大統領の最大の政敵であるイスタンブール市長が大学学位をはく奪されたうえ警察に拘束された。市場のトルコ政府への信任が崩壊、リラ急落、株安、債券安のトリプル安となった。介入でリラが下支えされたが、元の水準には戻っていない。ドル買い・リラ売りの動きでリラは最安値を更新。その他主要通貨にもドル買い圧力を広げた。ドル円に関してはリラ円の急落の影響が大きく、売りが先行。日銀が政策金利を予想通り据え置いたあと、植田日銀総裁会見では春闘結果を受けて今後の利上げに前向きな姿勢もみられたが、トランプ関税など不確実性の高さも指摘した。トランプ関税についてのメドがたつ4月が次のポイントとなっている。ドル円は会見中に150.02近辺まで買われたが、リラ売りとともに149.15近辺まで下落。その後は再び149円台後半へと買い戻された。この後の米FOMCについては政策金利据え置きがコンセンサスとなっている。一部報道によるFOMCは今後6カ月間は様子見であろうとの見方が示されていた。日米金利差はなかなか縮まらないとの見方につながっているようだ。ユーロドルはトルコリラ急落とともにドル買いに押され1.08台後半へと下落。ポンドドルも1.29台半ばまで下押しされた。ウクライナ情勢ではロシアが再びウクライナのインフラ施設を攻撃と、不完全な停戦状態にとどまっている。
NY市場では、FOMCにドル売りの反応が広がった。ドル円は148円台に急落。FRBは予想通りに政策を据え置いたが、注目されていた委員の金利見通し(ドット・プロット)は前回と変わらずの年内2回の利下げを見込んだ。また、経済見通しでは今年のGDP見通しを大幅に下方修正した一方、インフレ見通しは上方修正している。さらにFRBは保有資産の縮小、いわゆるランオフのペースを4月1日から減速させると発表した。エコノミストからは、この措置は利下げに等しいとの指摘も出ていた。一部からは根強いインフレから利下げ見通しを後退させるのではといった見方や、逆に利上げシナリオなども浮上していたが、その見方は否定した格好となった。それらがドル安の反応を引き出したようだ。ドル円は結局、150円台を維持できずに失速した格好となっている。ユーロドルは序盤に1.08台に値を落としていたが、FOMCを通過して下げ渋る展開。ポンドドルもユーロドルと同様の展開。FOMC前に戻り売りが強まり、1.29台半ばに値を落としていた。明日は英中銀の金融政策委員会(MPC)が予定されている。政策は据え置きが確実視されており、声明や委員の投票行動が注目を集めそうだ。エコノミストからは、金利に関する委員の投票が全会一致になる可能性は極めて低いとの指摘が出ている。
(20日)
東京市場は春分の日の祝日で休場。
ロンドン市場では、ドル買いと円買いの動き。ユーロ売りが主導しており、ユーロドルは1.09台割れから1.08台前半へ、ユーロ円は162円台割れから160円台後半まで下押しされた。対ポンドでもユーロは軟調。米FOMCを通過して欧州株やユーロの上昇の動きに調整が入った面があるようだ。また、ラガルドECB総裁は議会証言で「ECBは引き続き警戒を、通商めぐる不確実性は高い」と発言。米国との貿易戦争でインフレ率が0.5%ポイント押げられ、成長率は0.3%ポイント低下するとの試算を公表した。ポンド相場はこの後の英中銀金融政策委員会(MPC)で政策金利据え置きが市場コンセンサスとなっている。特段の波乱は想定されていないが、英予算案発表を控えた不透明感もあり、据え置き投票の票割れについては読みにくい状況となっている。ポンドドルは1.30付近から1.29台前半まで、ポンド円は193円付近から192円割れ目前の水準まで軟化した。ドル円は148円台での上下動。アジア時間に売りが優勢だったが、ロンドン時間にはドル買いの動きとともに買い戻されている。
NY市場でも、ドル買いの流れが優勢。ドル高の流れが優勢となり、ドル円も148円台後半まで買い戻されている。アジア時間には前日のFOMC後の流れを継続して148円台前半まで下落する場面も見られたが、海外市場に入って買い戻されている。 前日はFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)で、年内2回の利下げ見通しを据え置いたことで安心感が広がったほか、保有資産の縮小(ランオフ)も4月からペースを減速させると発表したことで、為替市場はドル安の反応が見られていた。150円台を試していたドル円も失速した格好となった。パウエルFRB議長は会見で、トランプ関税のインフレへの影響について、「短期あるいは一過性のものである可能性が高い」と述べていた。しかし、市場は依然としてトランプ関税への懸念を抱いており、安堵感はすぐに消えつつあるようだ。 ユーロドルは戻り売りに押され、一時1.08台前半に下落する場面が見られた。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、「トランプ政権の貿易政策に伴うEUのインフレへの影響は小さい」と述べた。そのためインフレはさほど懸念しておらず、ECBは利下げ余地を持っているとの見解を示していた。ポンドは対ドルでは上値の重い展開が見られているものの、対ユーロでは上昇。。政策金利を据え置いた英MPC声明では「金融緩和への段階的かつ慎重なアプローチが適切」と慎重姿勢を滲ませている。ベイリー総裁も「金利は緩やかに低下する道筋にある」との見方を示した。
(21日)
東京市場は、円売りが優勢だった。ドル円は朝方に148.59近辺まで軟化。2月の日本消費者物価指数が市場予想を上回ったことに反応した。しかし、その後は日経平均の上昇などからリスク選好の円売りが優勢となり、149円台に乗せた。午後は、米10年債利回りの上昇を背景に一段とドル買いが優勢となり、一時149.63付近まで上値を広げた。ユーロ円は、午前の円売り局面で一時161.90台まで上昇したあと、いったん伸び悩んだものの、午後は再び円安方向に振れ、162円に迫る動きとなった。ドルストレートは午後に入るとドル高となり、ユーロドルは1.0820付近まで、ポンドドルは1.2925付近まで水準を切り下げた。
ロンドン市場では、ドル買いが一服している。米10年債利回りが4.25%付近から4.21%台に低下したことに反応。また、欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移しており、円買いの圧力も加わっている。ドル円は149.66近辺を高値に149.10台へと反落。ユーロ円は162円台は維持できず、161.50台まで下げている。ポンド円も193.60付近を高値に193円割れまで軟化している。また、東京市場のドル買いも一服しており、ユーロドルは1.0820付近を安値に1.0845近辺まで下げ渋り、その後は揉み合いとなっている。ポンドドルはロンドン朝方に1.2922近辺に安値を広げたが、売りは続かず1.29台前半で揉み合っている。今週は日米英の中銀金融政策発表を経ており、ドイツ上院で財政改革や5000億ユーロ基金も承認された。きょうは週末も控えていったん材料出尽くし感もあるようだ。今日発表された2月英公共部門借入額(財政赤字に相当するもの)は予想を上回っていた。来週26日の英春季予算案での緊縮予算や公的サービス縮小に与える影響が懸念されている。ただ、きょうのポンド相場は目立った反応は示していない。
NY市場は朝方ロンドン市場のドル安円高が継続する形となり、東京朝の安値に並ぶ148円60銭前後を付けた。しかし、ロンドン市場で大きく下げた米債利回りが持ち直し、ロンドン朝の水準に戻すと、ドル買い円売りが優勢となって149円30銭台まで回復。序盤大きく下げた米株に買い戻しが入り、ダウ平均、ナスダック、S&P500が小幅ながらプラス圏で引けたこともリスク警戒の後退による円高一服につながった。ロンドン午後からNY朝にかけて1.0861まで買われたユーロドルは、その後ユーロ売りが強まった。一時1.0800の大台を割り込み1.0798を付けたが、積極的な下値押しにも警戒感があり、その後少し戻している。ユーロ円はドル円の下げ、ユーロドルの序盤の上昇からの下げに押され、一時大きく下げた。ロンドン朝の162円13銭から160円75銭まで1円38銭の売り。その後ドル円の反発もあって161円60銭前後を付けた。
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執筆者 : MINKABU PRESS
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