米金融システムへの警戒感一服でドル円は買い戻し強める=NY為替概況
きょうのNY為替市場は、前日までの米金融システムへの警戒感が一服する中、ドル円は買い戻しが強まった。前日は132円台前半まで一時下落していたが、きょうは一時134円台後半まで買い戻される場面も見られた。目先は135円台に乗せ、本日135.30円付近に来ている21日線まで回復できるか注目される。
中小の米金融機関3行が破綻したが、きょうの市場は落ち着きを取り戻している。預金保護の措置など米当局の対応も早かったためか、金融システム全体への、それこそパンデミックは回避されるのではとの楽観論も出ているようだ。
市場は、米金融システムへの不安感が強まる中で来週のFOMCがどうなるのか注目している。きょうは米消費者物価指数(CPI)が発表になっていたが、インフレ圧力の持続を示し、サービスインフレも上昇が続いていた。FRBのタカ派姿勢を裏付ける内容となっており、来週のFOMCでの利上げを正当化する内容。
一部からは、金融システム不安の高まりから、FRBは利上げを一旦停止するのではとの観測も出ている。しかし、本日のCPIからはその観測は正当化されない。短期金融市場では0.50%ポイントの大幅利上げは完全に後退させているものの、0.25%ポイントの利上げ期待は高まっている。確率は70%程度で織り込んでいる一方、据え置きは30%程度に低下している。
ユーロドルは堅調な動きを続け、1.07ドル台での推移を続けている。この日は米消費者物価指数(CPI)が発表になり、インフレ圧力の粘着性を示す内容となったが、為替市場はドル買いの反応を強めていない。ユーロドルは売買が交錯したものの、結局1.07ドル台を維持している。
米銀の信用不安を受けて市場は、FRBのみならずECBの利上げ期待も後退させている。ただ、きょうの市場の落ち着きから、今週のECB理事会ではラガルド総裁のコミット通りに、0.50%の大幅利上げが実施されるとの見方に市場の意識も戻りつつあるようだ。市場の利上げ期待後退は行き過ぎだったとの声も出ている。
米金融セクターからの影響は大きな懸念材料ではあるものの、いまのところはユーロ圏の金融システムへの大きな影響はないと見られている。そのような中で、今週の理事会でECBが利上げ幅を0.25%ポイントに縮小することは、不透明感の中で慎重な行動を取ったようにも見えるが、半面、問題があることを認めたと判断される危険性もあるとの指摘も出ている。
きょうのポンドドルは一時1.22ドル台に上昇する場面が見られたものの、全体的には1.21ドル台での上下動が続いていた。本日は11-1月の英雇用統計が公表されていたが、平均賃金の伸び緩和が示されたことから、英中銀は安堵のため息をついているかもしれない。11-1月の賞与を除く週平均賃金の伸びは前年比6.5%に伸びが鈍化していた。
米地銀の破綻で米金融システムが不透明感を増す中、来週の英中銀の0.25%ポイントの利上げ予想に対するリスクは下方にシフトしたという。短期金融市場では半々の可能性で織り込まれている。
明日はハント英財務相が春季予算案を公表する。生活費危機を緩和するためのいくつかの単発的な対策以外に、多くの刺激策を打ち出すことはなさそうで、短期的にはポンドに重大な影響を与えることはないとの見方が多い。生産性を高めるための改革は長期的にポンドのサポートになり得るが、この分野での最近の実績が乏しく、市場はまず証拠を確認したいだろうとの指摘も聞かれた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。