ドル円は21日線付近 110円台は堅持=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル売りが優勢となる中、ドル円も戻り売りが優勢となり、110.10円近辺まで一時下落した。本日の21日線が110.40円付近に来ており、それを下回る展開もみられたものの、上値に慎重な一方で、110円台はしっかりと維持されており、21日線付近まで戻している。
米英と中国の緊張が高まっており、その懸念がリスク回避のドル買いを誘発する可能性があるとの声も一部から聞かれる。きょうはシャーマン米国務副長官と中国の王毅外相らが天津で会談を行ったが、米中首脳会談の実現の可能性は議題として取り上げられず、具体的な合意は何も得られなかった。また、英政府が国内の将来の全ての電力プロジェクトから中国の国営原子力企業である中国広核集団(CGN)を排除する方向で検討と伝わっている。英中関係の悪化が改めて示された格好。
中国の西側諸国との対立が次第に鮮明になりつつある中で、今後、地政学リスクまたは中国の成長期待後退により、中国経済への信頼感が揺らぐ可能性が指摘されている。明日はIMFが最新の世界経済見通しを公表するが、中国の成長見通しに下方修正があるかどうか注目。
ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.18ドル台を回復。先週のECB理事会後も依然として上値は重いものの、1.17ドル台半ばは強いサポートとして機能している模様。本日の21日線が1.1830ドル付近に来ており、目先の上値メドとして意識される。
先週のECB理事会を通過し、市場は2024年まではECBの利上げはないとの見方を織り込む動きが続いている。そのような中で一部からは、しばらくECB理事による発言は、ユーロ相場に重大な影響を与えない可能性も指摘されている。市場は、ウイルスの変異株が世界を再び「インフレを誘発する封鎖」に追いやるリスクを警戒しており、それに対する保険として2024年の利上げへのリスクプレミアムが上昇していると考えているという。先週の理事会での新たな金利ガイダンスは、2024年以降の利上げ期待を変えることはなかったことから、ECBからの発言はしばらく、ユーロドルに重大な影響は与えない可能性があると指摘している。
ポンドドルは買い戻しが優勢となり1.38ドル台に戻している。本日の21日線が1.38ドルちょうど付近に来ており上回る展開。ただ、1.38ドル台での戻り売り圧力も強そうで、売りオーダーも並んでいる模様。北アイルランド議定書を巡るEUとの緊張再燃と感染再拡大下でのジョンソン首相の制限解除策の2つの材料を巡る英経済への懸念もあり、ポンドの上値には慎重になるべきとの声も根強い。
再来週の8月5日に英中銀が金融政策委員会(MPC)を開催する。先日、サンダース英中銀委員がインフレ抑制のために債券購入プログラムの早期終了の可能性に言及していた。次回かその次のMPCで議論する可能性もあるという。既に現行の緩和策に反対票を投じているホールデン委員と合わせて、2名の委員がタカ派に転じていることから、否が応にも焦点は量的緩和に対する委員の投票に集まる可能性は高い。ただ、上記の2つの懸念材料もあることから、次回の会合で英中銀が金融政策のスタンス変更を打ち出す可能性は小さいとの見方が有力な状況。目先は21日線の上を維持できるか注目される。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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