ドル円は105円を割り込む場面も ラガルド発言もあり、パウエル証言に注目集まる=NY為替概況
きょうのNY株式市場でドル円は売りが優勢となった。ロンドン時間にはドル買いの動きもあり、一時105.85円近辺まで上昇したものの、その上げは続かず、NY時間にかけて伸び悩む展開。105円台半ばに来ている200日線を再び下回り、105円を割り込む場面がみられた。
ラガルドECB総裁の発言も売りのきっかけとなった。総裁は「ECBは長期債の動向を注意深く見ている」と述べていた。市場ではインフレ期待が高まっており、米国債利回りに急ピッチな上昇が見られているが、長期金利の急ピッチな上昇が株式市場などに影を落としているとの声も聞かれる。米国債利回りが急速に上昇し続けると、リスク資産が不安定になる可能性があるという。
今週はパウエルFRB議長の上下両院での議会証言が予定されている。FRBは慎重姿勢を堅持しており、そのスタンスに変更はないものとみられている。ただ、ラガルド総裁の発言もあり、FRBが米国債利回りの急ピッチな上昇をどう見ているのか、どの程度までなら容認するのか、それらについて何らかのメッセージが出るか注目している向きもいるようだ。
ユーロドルはNY時間に入っても買いが続き、1.2170ドル近辺まで一時上げ幅を広げた。本日の21日線は1.2095ドル付近に来ているが、きょうの上げでその水準を回復しており、明日以降の動きが注目される。節目の1.22ドルが目先の上値メドとして意識。
世界的なリフレ取引で長期ゾーンの米国債利回りの上昇が顕著だが、ドイツ国債を始めとした欧州債利回りも急上昇している。ドイツ10年債利回りは年初にはマイナス0.6%付近で推移していたが、直近はマイナス0.3%付近までマイナス幅を縮小。本日はラガルドECB総裁の発言が伝わっていたが、市場からは、ECBは長期金利上昇を抑制する必要があるとの指摘も聞かれる。そうしないと、ECBのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の柔軟性がその意味をなさなくなるという。長期債を購入することによって長期金利は低下し、タームプレミアム(長期債と短期債の利回り格差)が縮小。景気回復をサポートするとしている。ECBのPEPPは1.85兆ユーロの規模のうちまだ、837億ユーロしか使用されておらず、まだ十分な余力が残っているという。
ポンドドルは1.40ドル台後半まで一時上昇。2018年4月以来の高値水準を更新し、ポンドは力強さを堅持している。英国では他の主要国に先駆けてワクチン接種が進んでおり、最新のデータで1772万人が第1回目のワクチンを接種している。英国の2020年時点での人口6790万人(国連人口基金)に対して約26%まで接種が進んでいる計算。それと伴に市場も英国の早期景気回復への期待を高めている模様。英中銀の年内利下げ期待も大きく後退している。
英政府はきょう、6月21日に全ての社会的接触に関する措置終了を目指すと発表した。4月12日に一般店舗およびサービス業を再開するとしている。ジョンソン首相は議会で、4つの段階を踏み、経済を慎重に再開させる計画を発表。それぞれの段階は少なくとも5週間の間隔を空け、感染者数や死者数への影響を判断する意向。ジョンソン首相は「脅威は依然として大きく、ロードマップは慎重かつ不可逆的に進めることが重要。終わりが見えつつある」と述べていた。また、テレワークについても、可能な職種の人を対象に政府のガイダンスは維持され、自宅での勤務を6月まで継続するよう呼び掛けた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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