とれんど捕物帳 バイデン政権発足とイエレン氏の公聴会

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 今週のドル円は一旦104円台を回復して始まったものの、やはり上値は重く、103円台に押し戻されている。21日線を再び下回っており、昨年3月以降続いている下降トレンドに変化の兆しは出ていない。現段階では、節目の100円を視野に入れた展開はなお続いていると見て良いであろう。

 今週は20日にバイデン氏が第46代米大統領に就任した。バイデン大統領は就任前に1.9兆ドル規模の追加経済対策を打ち出している。失業給付の上乗せを週300ドルから400ドルに増額し、期間を9月まで延長するほか、直接給付は現行の600ドルにさらに1400ドルを加え、2000ドルに増額したい意向。また、3500億ドルの州、地方政府への支援や、ワクチン接種などの新型ウイルス対策への4150億ドル、中小企業への支援4400億ドルも盛り込まれている。最低賃金についても、時給15ドルへの倍増を議会に求める方針。

 市場も概ね歓迎の姿勢を示しており、米株も最高値を更新している。大盤振る舞いでうらやましい限りだが、一方で冷静な見方も出ている。議会は上下院とも民主党が主導権をとっているものの、上院は50対50で拮抗している。恐らくバイデン大統領の提案は100%は通らないであろうとも言われている。それでも、クリスマス前に決まった対策でもかなりの規模であり、それに追加されるのだから、他国と比較すれば申し分のない内容であろう。

 そのほか、今週は米上院でのイエレン氏の米財務長官の指名公聴会があった。パンデミックで傷んだ労働市場の回復に焦点をあて、当面はインフラ、労働力開発を含む、大胆な財政支出が必要との認識を示した。概ね米民主党の主張を反映した内容ではあった。想定通りの内容であったことから、市場の反応も限定的だったが、それもイエレン氏の意図したところであろう。

 公聴会での証言でドルに対する質問にどう答えるか注目していた。「ドル高は国益」と述べるのが、これまでの通例ではあったが、あまりに“しらじらしい”とでも思ったのか、「企業の競争力を引き上げるためのドル安は求めていない」と述べていた。

 オバマ政権の時代には「通貨の価値は市場が決める」との方針を強調していたが、それを踏襲する発言だったのかもしれない。市場に完全に任せれば、他国の通貨に比べて発行量が圧倒的に多いドルは、どうしても売り圧力が働くことから、これもこれで、しらじらしい限りだったが、他国の介入をけん制するには打ってつけの方針だったのかもしれない。トランプ政権は直接ドル安誘導に言及していたが、バイデン政権はオブラートを1枚挟んでいるだけで、基本的にはドル安スタンスであろう。

 イエレン氏は低金利も許容する姿勢を示した。もうFRB議長ではなく、インフレは担当ではない。積極財政で今後、国債増発が確実視される中、低金利のほうが、発行コストが低く押さえられることから、財務長官的には歓迎ではあろう。

 そのほか、特徴的だったのが中国に対する発言であろう。意外に中国への制裁は米財務省が中心となるケースが多い。貿易交渉でも、米通商代表部(USTR)の代表や米商務長官とともに、財務長官も参加する。イエレン氏は中国を最も重要な戦略的競争相手としたうえで、「中国からの脅威に米国は対処しなくてはならない。悪質な慣行にはあらゆる手段を使う」と厳しい口調で述べていた。人権問題にまで言及している。バイデン政権になっても、対中戦略への厳しさは、さほど変わらなそうな気配もある。なお、共和党からの反対も少なく、上院での承認はほぼ確実視されている。

 さて来週だが、ドル円は103円台での膠着感が強まり、次の材料待ちといった雰囲気もみられる。その意味では来週のFOMCは注目イベントとなりそうだ。ただ、金利や資産購入など政策には変更はないものとみられている。声明やパウエルFRB議長の会見が注目されるが、大きな焦点は資産購入ペース縮小が年内にあるのかどうかであろう。

 FOMCメンバーである米地区連銀総裁の一部から、年内終盤での資産購入ペース縮小の可能性が相次いで指摘されていた。しかし、FRBは直ぐに別のFOMCメンバーの講演で火消しに回っていた。パウエル議長は先週の講演で米経済の現状は 目標からほど遠いとし、「今は出口を議論をする時ではない」と指摘していた。今回のFOMCでも資産購入ペース縮小は議論されないものと見られている。

 バイデン大統領が1.9兆ドル規模の追加経済対策を掲げており、今後のワクチン接種拡大も期待される中で、市場はインフレ期待を高めている。ただ、追加経済対策がバイデン大統領の意向通りに成立するかは未知数の部分も多く、ワクチン接種も期待通りに拡大するのか不透明な情勢。このような中で出口戦略の議論は早過ぎるとは思われる。FRBは数年前に実施した急速な引き締めを間違いと認めている。その轍を踏まないためにも、出口戦略には慎重姿勢を強調するものと思われる。

 むしろ、今回は購入資産の内容について意見が交わされる公算が大きい。先日の議事録でFOMCメンバーの一部からは、長期金利を押し下げて景気を下支えするために、購入国債の年限長期化へのシフトを視野に入れるべきとの考えも示されていた。

 FOMCを受けて米国債利回りが下げの反応を示すようであれば、ドル円もネガティブな反応が見られる可能性も留意される。

 来週のドル円の想定レンジだが、102.50円~104.50円を想定。スタンスは「やや弱気」を継続。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↓↓(↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上から中立へトレンド変化
短期 ↓↓(↓↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

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次回の配信は2月6日(土)の午前を予定しています。
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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執筆者 : MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

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