為替相場まとめ10月20日から10月24日の週
20日からの週は、東京市場を中心にドル高・円安が加速した。週明け20日にドル円は高市新首相就任観測による積極財政期待などで151.20付近まで上昇したが、高田日銀審議委員のタカ派発言で一時150.50付近へ調整された。しかし、21日に高市氏が正式に新首相に選出され、日銀関係者から「10月利上げを急ぐ必要はない」との見解が報じられたことで、円売り(高市トレード)が本格化。ドル円はロンドン時間にかけて152円台に乗せ、23日以降も円安の流れが継続。24日には片山財務相が円安けん制発言を見送ったこともあり、10日以来となる153.06まで上伸し、堅調なドル高・円安基調が続いた。クロス円も連れ高となり、ユーロ円は177.60、ポンド円は203.80台まで値を上げた。一方、個別通貨では、22日のロンドン早朝に発表された英消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことを受け、英中銀の追加利下げ観測が再燃し、ポンドが急落する場面があった。また、24日にはトランプ大統領がカナダとの貿易交渉即時終了を表明し、カナダドル売り反応でドルカナダが急騰するサプライズもあった。週末には来週の米FOMCを控えて注目された米消費者物価指数が発表された。予想を下回りドル売り反応も、その後に発表された米PMI が予想を上回り、買い戻された、
(20日)
東京市場では、ドル円は先週のドル高円安の流れを受けて、朝方に151.20付近まで上昇した。背景には、米中首脳会合の発表による関係改善期待や、高市首相就任観測による積極財政への期待と財政赤字警戒からの円売りがあった。また、日本株の上昇もリスク選好の円売りを誘った。しかし、その後は行き過ぎた動きへの警戒感から反転。高値からの売りが入り、さらに高田日銀審議委員の利上げに前向きな発言が円買いを促し、午後に150.50付近まで下落した。クロス円もドル円と同様の動きとなった。ユーロ円は朝の175.30付近から176.37付近へ、ポンド円は201.80付近から203.11付近まで大きく上昇したが、その後は円買いが優勢となり値を戻した。リスク選好の株高が午前中のクロス円を支えた。ユーロドルは午後に1.1676付近を付けたが、ロンドン勢の参加でフランス格下げへの警戒が再燃し、値を下げた。ポンドドルは1.34台前半で方向感に乏しい展開だった。
ロンドン市場で、ドル円は150円台での振幅が続いた。東京市場で高市トレードによる上昇後の調整売りや高田日銀審議委員のタカ派発言で150.50付近へ売り戻された流れを受け、ロンドン序盤には日銀の成長見通し上方修正観測報道が円買いを誘い、150円台前半へと一段安となった。しかし、本日自民・維新の連立合意が正式発表され、高市首相誕生が確実となったことで、同氏の経済対策への期待から150円台後半へと買い戻された。日本の政局不透明感の払拭に伴い、円関連の短期ボラティリティーは低下している。ユーロ円は東京高値の176.00付近から反落し、ロンドン序盤には175.50付近まで下げたものの、その後は下げ渋り175円台後半で推移。一方、欧州では先週末の仏格下げが話題となったが、仏債利回りの上昇は小幅にとどまった。ユーロドルは1.16台半ばから後半、ポンドドルは1.34台前半で終始小動きとなった。
NY市場で、ドル円は150円台後半で終日上下動した。東京市場で日本の政治的不確実性の解消(自民・維新連立合意、高市氏の次期首相選出見通し)を受けて一時買い戻され151.00付近まで上昇したが、海外市場では150円台前半まで下落後、下げ渋った。先週は米利下げ観測などで150.00を割り込んでいた。投資家は、来週のFOMCでの追加利下げを正当化する可能性があるとして、金曜日に延期発表された9月米CPIを注視している。ユーロドルは1.16ドル台半ばで動意薄。ユーロ円は日本の政情を背景に一時175.50付近まで下落後、175.50台後半へ戻した。仏格下げ(S&Pによる「A+」への引き下げ)に対するネガティブな反応は限定的だったが、フランス政府の脆弱性から楽観視は難しいとの声が出ている。ポンドドルも1.34ドル台前半で揉み合いが続いた。ストラテジストは、相対的に高い英債利回りがポンドを支えられていない状況を指摘。秋季予算案で財政懸念が和らげば、ポンドは強含む可能性がある。
(21日)
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は、午前中に150.47付近を付けるなどやや上値の重さが見られた。午後の首相指名で高市氏が首相に選出されたが、財務相に円高志向とされる片山氏を指名するとの報道が一時重石となり、高値からの利益確定売りも入った。しかし、その後はすぐに反発し、ドル全般の買いや米NEC委員長の米政府機関閉鎖回避への楽観論が支えとなり、151円台を回復。さらに、日銀関係者が「10月の利上げを急ぐ必要はない」との見解を示したことが円売りを誘い、ドル円は151.60付近まで上値を伸ばした。ユーロ円も円安の進行を受け、午前中の175.50付近から176.20付近まで上昇した。ポンド円も午前中の202円を挟んだ推移から、202.80付近まで値を上げた。一方、ユーロドルはドル高に上値を抑えられ、1.1655付近から1.1619付近までじり安。ポンドドルも1.34台から1.3370付近まで売りが出た。
ロンドン市場も、円売りが優勢。ロンドン朝方にかけてはいったん円買いが入るも、ロンドン勢の参加とともに再び円売りが強まっている。ドル円は一時152円台乗せと1週間ぶりの高値水準に。クロス円も買いが広がり、ユーロ円は176円台半ば、ポンド円は203円台前半へと一段と上昇。高市首相の誕生が円売りの背景。積極財政や利上げを急がない姿勢などが円売りにつながっている。きょうは日経平均が一時5万円に接近する場面もあり、市場は歓迎ムードだ。海外勢にとっては日銀関係者が10月利上げを急がずとする報道も後押しとなり、円キャリー取引が行われやすい局面になっている。ドル円の上昇とともに、ドル買いが波及している。ユーロドルは1.16手前へ、ポンドドルは1.33台後半へと軟化。月末にかけての米中貿易合意への期待や、米NEC委員長が米政府機関閉鎖の終結を予測したことなどもドル買いの支援材料として指摘されている。
NY市場では、ドル円が一時152.00付近まで上昇した。高市新首相誕生による日本の政治的不確実性の解消と、日銀の10月利上げ見送り観測による円売りが優勢となった。首相が「金融政策は日銀に委ねる」と発言したことで151.50付近へ伸び悩む場面もあったが、すぐに値を戻した。短期金融市場は12月利上げを65%の確率で見込んでいる。ドル高も優勢であったが、金曜日の米CPIがFRBの追加利下げを正当化するかを確認したいとの思惑から、上値は抑えられた。ユーロドルはドル高を受け1.16を割り込み、100日線を下放れ1.15台半ばを試す展開。ユーロ圏の脆弱な成長構造と財政不安がユーロの上値を抑制している。一方、円安の動きからユーロ円は176.00付近を回復し、上向きの流れを継続。ポンドドルは1.3365付近へ下落し、21日線を下回った。英中銀は経済の弱さから来年2月にも利下げを再開する可能性が指摘されており、市場は引き続き11月26日の秋季予算案に注目している。
(22日)
東京市場では、ドル円が下に往って来いとなった朝方に利益確定売りなどで151.49付近まで下落したが、仲値後は反発。ロンドン勢の参加で朝の水準である151.90台を回復した。ユーロドルは、午前に1.1599を付けるなど、ユーロ安・ドル高傾向が継続するも、大台割れでのユーロ売りは続かず、一時1.1616ま付近まで反発。しかし、午後の英物価統計発表後のポンド売りの影響を受け、1.1600付近に軟化した。ポンドドルは、朝の1.3360台からじりじり上昇、英物価統計発表前には1.3387を付けた。15時の英物価統計(消費者物価指数前年比)予想を下回ったことを受けて1.3333付近まで急落した。ユーロ円はドル円に沿った動きで175円台後半から176円台前半へと上昇。一方、ポンド円は203円台まで買われるも、英物価統計後の急落で202.50レベルを割り込んだ。
ロンドン市場は、ポンド売りが強まった。日本時間午後3時に発表された9月英消費者物価指数が前年比+3.8%と市場予想+4.0%を下回り、前回並み水準にとどまったことが背景。市場ではインフレ上昇に頭打ち感がみられたもよう。英中銀の利下げ観測につながっっている。ポンドドルは1.33台後半から前半へと急落し、その後も安値付近で推移している。ポンド円は203円割れから202円付近まで下落。対ユーロでもポンド売りが広がった。ドル円やユーロドルはややドル買いの動きが波及している。ユーロドルは1.16台割れへと小幅に軟化。ドル円は東京午前の下げから戻して151円台後半で揉み合っている。株式市場は独仏株が調整売りに押される一方で、英株は利下げ期待で買われている。ポンドに材料が出たほかは、全般的には調整ムードが広がる展開となっている。
NY市場で、ドル円は、米中間のソフトウェア輸出規制強化検討のニュースを受け、一時151円台半ばへ急落したが、その後下げを戻した。日銀は今月の会合での利上げは見送られる公算が大きいが、12月には可能性が残るとの見方で市場は一致しつつある。ユーロドルは1.16ドルを挟む狭い値動き。ユーロ円は21日線の上で底堅く176円台で推移。ECBレーン理事の「ドル調達枯渇リスク」警告について、アナリストはユーロ圏の脆弱な成長とセンチメントを背景に、短期的なユーロ上昇余地は限定的であると指摘した。ポンドドルは下に往って来いの展開。ポンド安の背景には、予想を下回った英CPIを受け、英中銀の追加利下げ期待が再燃したことがある。短期金融市場では、2025年末までの利下げ確率が前日の40%未満から約70%に急上昇し、来年以降のさらなる利下げも織り込み始めた。一方、ポンド円は21日線を維持し、上昇トレンドを堅持している。
(23日)
東京市場では、円売りが強まっている。ドル円は朝方から堅調に推移し、前日の上値メド152.00付近を明確に上抜けると、10月21日の高値152.17を超えて上昇が加速。午後にかけて一時152.57付近まで上伸し、10月14日の高値152.61に迫ったが更新はならず、その後は152.30台で調整となった。海外勢による円売りが続く中、「高市トレード」と呼ばれるドル高・円安基調が相場を下支え。クロス円も総じて堅調で、ユーロ円は176.30付近から176.80台へ上昇し高値圏でもみ合い、ポンド円も202.80台から203.64付近まで上伸。ユーロドルは1.1600前後で狭い値動き、ポンドドルは1.3330近辺から反発し1.3350台を付けている。
ロンドン市場は、このところの流れを受けて円売りが継続している。ドル円は東京市場での上昇の流れを受けて152.70付近へと高値を伸ばしている。ユーロ円は177円付近へと上昇、ポンド円も203.70付近に高値を伸ばしている。ただ、ロンドン時間の値動きは東京市場ほどの勢いには欠けており、足元ではじり高の動きになっている。いわゆる高市トレードで、拡張的財政政策や金融緩和姿勢などが市場における日銀早期利上げ観測を後退させている。現時点まで、特段の円安けん制もみられていない。海外勢などによる円キャリー取引を誘発しやすい状況が続いている。米政府がロシア石油大手に制裁を加えるとの報道に原油先物が2週間ぶりの高値水準へと急上昇しており、豪ドルなど資源国通貨買いにつながる面も観察されている。豪ドル円は99円台前半に上昇している。
NY市場では、ドル円が一時152.80円付近まで上昇し、高市トレードによる直近高値153円台をうかがう展開が継続している。原油急騰に伴う米国債利回りの上昇がドル円を押し上げた要因となった。財政政策の緩和的見通しが円安シナリオを支える一方で、日銀の12月利上げについては見解が分かれる。来週の米CPI発表を控え、FRBの利下げ織り込み過ぎとの指摘もある。ユーロドルはNY時間で買いが優勢となり1.16ドル台前半で推移するが、全体的に動意は薄い。ユーロ円は買戻しで177円台に戻した。エコノミストはECBが当面2.00%で金利を据え置く可能性が高いと見ている。ポンドドルは5日続落で1.33ドル台前半に下げ幅を広げた。ポンド円はリバウンドで203円台後半まで上昇。英CPIの下振れサプライズや第4四半期に英景気関連データが下振れする傾向から、年末にかけて英中銀が利下げに動く余地が広がり、ポンドの逆風になるとの指摘が出ている。
(24日)
東京市場で、ドル円は終日ドル高・円安基調が継続し、10日以来となる153円台を回復した。152.50付近で始まった後、昨日上値を抑えていた152.80付近を突破し、午後に高値153.06を記録した。この円売りは、片山財務相が円安けん制発言を見送ったことが一因と見られる。高市首相の所信表明演説に対する市場の反応は限定的であった。クロス円もドル円の上昇に連れ高となり、ユーロ円は177.60、ポンド円は203.80台までそれぞれ値を上げた。一方で、トランプ大統領が自身のSNSで、カナダがロナルド・レーガン元大統領に関する「偽の広告」を使用したことを問題視し、カナダとの貿易交渉を即時終了すると発表したことで、ドルカナダは一時1.4028まで急騰し、ドル高・カナダ安が進行した。この影響により、カナダ円はドル円の上昇にもかかわらず108.95まで急落する場面も見られた。ユーロドルとポンドドルは、全体的なドル高の流れを受け、小幅ながらドル高で推移した。
ロンドン市場は、米CPI待ちで小動きになっている。ドル円は東京市場で一段と円安が進行、ロンドン朝方にかけて153円台乗せとなる場面があった。しかし、その後は152.70台まで調整売りが入るなど売買が交錯している。クロス円も同様に上昇したあとは、上げ一服。ユーロ円は177円台、ポンド円は203円台で振幅している。この日は仏・独・ユーロ圏・英国などの10月PMI速報値が発表された。独、ユーロ圏、英国などいずれも予想を上回る結果となった。ユーロドル、ポンドドルいずれも買い反応をみせたが、持続性には乏しい値動きとなっている。ユーロドルは1.16台前半で、ポンドドルは1.33台前半での上下動にとどまっている。
NY市場でドル円は152円台で激しい上下動を見せた。この日発表の9月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回りFRBの追加利下げを正当化する内容だったことで、ドル売りの反応を見せた。ドル円も一気に152円台前半に急低下していたものの、すぐに買い戻されている。その後発表の10月の米PMIが予想を上回ったことでドル高の反応が強まった。ドル円も下げをほぼ取り戻し、153円台に瞬間上昇する場面も見られたが、153円台の上値抵抗も強く、152円台後半で推移。
執筆者 : MINKABU PRESS
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