為替相場まとめ9月29日から10月3日の週
29日からの週は、米連邦政府機関の閉鎖リスクが主要な材料となり、全体的にドル安・円高傾向がみられた。特に29日から30日にかけては、米国の財政協議難航と政府機関の一部閉鎖が現実味を帯びたことをきっかけにドル売りが加速、ドル円は149円台半ばから146円台へと大きく下落した。この過程で、内田日銀副総裁から利上げを示唆する発言や、日本国債利回り上昇を受け円買いも強まった。米政府機関の閉鎖長期化懸念が強く、主要経済指標の発表延期や市場流動性低下といった不透明要素がリスク回避の円買いを誘発する面もあった。一方、欧州ではインフレ加速を背景にECBの据え置き観測が根強く、ユーロ買いが対ポンドなどで優勢だった。10月2日以降は、米新規失業保険申請件数や米雇用統計といった重要経済指標の発表延期により、市場は材料難から方向感を欠いた展開となった。週末の植田日銀総裁の講演では、早期利上げに慎重な論調がみられ、円売りが入る場面もあった。来週にかけて、米政府機関閉鎖の早期解消の有無や経済指標発表の再開が焦点となろう。
(29日)
東京市場は、ドル売りが優勢。米連邦政府機関閉鎖リスクを背景にドル売りが加速した。ドル円は149円台半ばからじりじりと下げている。共和党と民主党の予算協議が難航していることで、10月1日から一部の政府機関閉鎖が現実味を帯びている。共和党下院はつなぎ予算を可決したが、上院で否決され、民主党はメディケイド削減撤廃を要求。上院の議席構成上、合意形成は容易ではない。ユーロドルやポンドドルはドル安で上昇する一方、リスク回避の円買いによりユーロ円やポンド円は軟調に推移している。ドル円は午後に148円台後半まで押し戻され、引き続き政治情勢に警戒感が強い。
ロンドン市場は、東京市場からの流れを引き継ぎ、米政府機関閉鎖懸念を背景にドル売りが優勢となった。ドル円は148.47付近へ下落し、ユーロドルやポンドドルは上昇した。しかし、クリーブランド連銀のハマック総裁が、高インフレ継続の懸念から利下げ時期はまだ先であると示唆したことで、ドル売りは一時的に一服した。一方、円高圧力は継続しており、ユーロ円は173.99付近、ポンド円は199.51付近まで安値を広げた。これは、東京午後の野口日銀審議委員による金融政策調整に関する発言が追加利上げ観測を呼び、ロンドン市場にかけて円高の動きを強めたことが背景にある。現在の為替相場は、日米の金融政策の不透明感と米政府機関閉鎖懸念に大きく左右されている状況だ。欧州株や米株先物は落ち着いた推移を見せている。
NY市場では、ドル売りが強まっている。ドル円は148円台半ばに下落した。先週の150円台への動きは一旦後退している。主なドル下落の要因は、米政府機関閉鎖への懸念である。9月30日の会計年度末を前に、つなぎ予算案の可決が見通せず、10月1日からの閉鎖リスクが高まっている。閉鎖となれば、10月3日の米雇用統計発表延期など、FRBの利下げサイクル織り込みに影響が出るとの懸念もある。ドル円には、日銀の利上げ期待による円高圧力も加わった。利上げに慎重と見られていた野口審議委員が「政策金利調整の必要性が高まっている」と発言したことで、市場では10月利上げの可能性が上昇している。ユーロドルは1.17ドル台半ばに戻し、ポンドドルも1.34ドル台半ばまで上昇したが、これらは主にドル安に影響された動きである。ポンド円は、ドル円下落と円高で199円台に下落し、200円台を維持できなかった。
(30日)
東京市場は、ドル安・円高の動き。ドル円は、前日のドル安・円高を引き継ぎ148.50付近でスタートした。朝方は一時148.84を付けたものの、昼過ぎからドル安・円高が広がった。午後のドル円下落の主因は二つある。一つは、米政府機関閉鎖の可能性の高まりによる米国の混乱警戒でのドル売り。もう一つは、日本国債利回り上昇に伴う円買いだ。本日実施された2年利付国債入札の需要が低調だったことで、金融機関による日銀の早期利上げ観測が強まり、円買いを誘発した。この結果、ドル円は148.17まで下落した。ユーロドルは1.1740、ポンドドルは1.3447まで上昇するなど、対ドルでドル安が優勢となった。一方、クロス円は、対ドルでの各通貨買いにもかかわらず、日本の利上げ期待による円買いの勢いが勝った。ユーロ円は173円台へ、ポンド円は199.17付近まで下落した。
ロンドン市場では、ドル売りと円買いが優勢となった。米政府機関閉鎖の可能性が高まり、米国の政治混乱への警戒感がドル売りを加速。閉鎖となれば、注目指標である米雇用統計の発表延期リスクも高まり、不透明感が広がった。ドル円は、東京市場の148円台後半からロンドン時間にかけて147円台後半へと約1円下落した。また、円買いの圧力も強かった。東京時間に行われた本邦2年債入札の不調が、日銀の利上げ観測を広げ、円買いにつながった。この結果、ユーロ円は173円台後半へ、ポンド円は198円台後半へと下げている。一方、ユーロドルは1.17台後半、ポンドドルは1.34台半ばへと上昇し、ドル売りが色濃く出た。ユーロ対ポンドでは、仏伊のインフレ加速と英のGDP伸び鈍化の対照的な結果から、ユーロ買いが優勢だった。
NY市場はドル安が継続した。ドル円は147円台まで下げ幅を拡大した。前日に続き米政府機関閉鎖への懸念がドルを圧迫。明日の10月1日からの閉鎖となれば、米雇用統計の発表延期リスクが高まり、市場の不透明感とリスク回避の円高が強まった。ドル円は200日線を下放れし、再びレンジ内に戻る格好となった。市場は、閉鎖が短期で終わるか、長期化してドルの重しになるかを注視している。ユーロドルは1.17ドル台半ばまで上昇し、21日線を回復。ドル安に主導された動きとなった。一方、ユーロ円は一時173.40付近まで下落した。本日発表された仏独の9月HICP速報値はインフレの加速を示し、ECBの金利据え置き予想を正当化する内容となった。ラガルドECB総裁は「インフレに対するリスクは抑制されている」としつつも「警戒はなお必要」と述べた。ポンドドルは1.34ドル台で上下動が続いたが、ポンド円はドル円とともに売られ、198円台まで下落した。
(1日)
東京市場は、米政府機関の一部閉鎖を受けて、リスク警戒の円買いが広がった。ドル円は、前日の下げから一旦戻し、147.90付近でスタートした。午前中は、閉鎖前のポジション調整や、日銀短観の改善鈍化を受けた日銀早期利上げ期待の後退(円売り)により、一時148.23まで上昇した。しかし、昼過ぎからは一転してドル売り・円買いが優勢となった。米上院での予算案合意見送りにより、閉鎖がほぼ確実となったことが、ドル安材料として意識され続けた。ロンドン勢が参入する時間帯にかけて一段の下げとなり、ドル円は147.30付近まで下落した。クロス円も円買いに押された。ユーロ円は昼過ぎの173円台後半から173.20へ、ポンド円は199.22を付けた後、198.30付近まで下げている。ユーロドルやポンドドルは、午前の揉み合いからややドル安方向に傾斜している。
ロンドン市場は、米政府機関の一部閉鎖が現実となり、不透明感からリスク回避の円買いが継続している。この状況下でドル円は下落し、146.91近辺と9月18日以来の安値を付けた。この政府閉鎖により、今週の米新規失業保険申請件数や週末の米雇用統計などの重要経済指標の発表延期が濃厚となっており、市場の流動性低下と警戒感を強めている。ロンドン序盤に一時拡大したドル売りは一服したものの、欧州時間の動きが目立った。ユーロドルは1.1780付近まで上昇したが、一連の欧州製造業PMIの弱含みを受けて1.1716付近まで反落。ユーロ円はドル円に連れ安となり、安値を172.50円割れ水準に広げた。ポンドは対ドルで堅調さを維持した一方、対円では軟調とユーロと同様の動きとなった。その中でユーロの軟化が目立ち、ポンドは対ユーロで堅調に推移している。市場は閉鎖の長期化リスクと、指標発表の遅延に注目している。
NY市場は、米政府機関閉鎖に加えて、9月ADP雇用統計が予想外の減少を示し、ドル円は終始軟調に推移した。短期金融市場ではFRBの年内利下げ確率が約90%に急上昇した。ドル円はADP統計発表後に下げを加速させ、一時146円台に下落し、21日線も下抜けた。しかし、米株式市場が落ち着いた反応を見せプラスに転じたことで、ドル円も147円台を回復。100日線と200日線のレンジ攻防となっている。ユーロドルはロンドンでの上昇(1.1780ドル近辺)からNY時間に入って戻り売りに押され、ドル買い戻しの影響を受けた。9月のユーロ圏HICP速報値は前年比2.2%に伸びが拡大したが、ECBの利下げサイクル終了との見方が有力視されている状況に変化はなかった。ポンドドルも一時1.35ドル台に上昇し100日線と21日線を回復したが、NY時間で1.34ドル台に戻した。ポンド円は円高の影響で197円台に下落後、198円台に下げ渋ったが、100日線(197.65円付近)を視野に下値模索が続いている。マン英中銀委員のタカ派的な発言も伝わった。
(2日)
東京市場は、方向感に欠ける取引。週明けの海外市場で146.59付近を付けたドル円は、東京朝方に147.32付近まで上昇して取引を開始した。これは、日経平均の堅調さに伴うリスク警戒の一服と円売りに支えられた動きであった。しかし、米連邦政府機関の一部閉鎖が長期化するとの思惑がドルの上値を抑え、上げは続かず。昼前には一転して146.95付近を付ける場面も見られたが、この水準でのドル売りも続かず反発。午後は147.05-25レンジの狭い範囲での膠着した。クロス円は戻りが鈍かった。ユーロ円は昨日急落後に172.80付近までの戻しに留まり、ポンド円は198円台での推移が続いたが、円買い圧力が重石となった。ユーロドルは朝方に1.1724付近を付けた後、昼前に1.1742付近、午後に1.1745付近を付けるなど、小幅ながらややしっかりとした展開となった。ポンドドルは前日海外市場の1.3470付近近辺での揉み合いが続いた。
ロンドン市場では、総じてドル売りが優勢。これは、米政府機関の一部閉鎖継続の影響により、本日予定の米新規失業保険申請件数を含む主要経済指標の発表が延期され、明日の米雇用統計も延期される公算が高まったことが背景。指標情報の欠落が市場に不透明感と米ドルへのネガティブなムードを広げたことが主因。ドル売り圧力の強まりを受け、ユーロ/ドルは1.1757レベルへ、ポンド/ドルは1.3508レベルまでそれぞれ上昇し、高値圏で推移した。一方、ドル/円は、日本時間午後の内田日銀副総裁による金融引き締めを急がないとする発言で一時上下動をみせたが、最終的には米国の政治リスクによるドル売り圧力が勝り、安値を146.73レベルまで広げている。市場の焦点は、米国の政治的対立と政府機関閉鎖の早期解消の有無に移行している。この不透明感が続く限り、ドル上値の重い展開が継続する可能性が高そうだ。
NY市場では、ドル買い戻しが優勢となり、ドル円は147円台に反発した。 ただし、ロンドン時間には146円台まで下げる場面も見られた。米政府機関の閉鎖により経済指標の発表も延期されている中、市場は手がかりに欠けている。市場は米政府機関の閉鎖に関して比較的楽観視しており、冷静な反応となっている。今後、短期間で閉鎖が終了するか、長期化するか(職員解雇の可能性)が注目点だ。ドル円は21日線を下回り、100日線と200日線のレンジ内での攻防が続く。ユーロドルは戻り売りで一時1.16台に下落し、上値の重い展開。一方、ECBは利下げサイクル終了、FRBは追加利下げ継続との見方から、ユーロドルへの強気論も根強い。本日発表のユーロ圏失業率は6.3%に上昇。今後は成長鈍化でさらに上昇する可能性が指摘されている。ポンドドルは一時1.34ドル台前半に下落。ポンド円は4日続落し、197円台半ばまで下げた。英国では高インフレで早期利下げ期待は後退しているが、景気不安に加え、11月の秋季予算案発表を控え、財政リスクがポンドのリスクプレミアムとして織り込まれ始めている可能性がある。
(3日)
東京市場は、円売りが優勢。ドル円は147.77円付近まで円売り・ドル買いが優勢となった。植田日銀総裁が、経済・物価見通しが実現していけば引き続き政策金利を引き上げていくとしつつも「まずは緩和的な金融環境を維持することが大切だ」と、追加の金融引き締めに慎重な態度だったことが手がかり。植田日銀総裁は経済や物価の見通しを巡る不確実性も指摘し、月末に控えている日銀金融政策決定会合での追加利上げ観測をやや後退させた。ドル円と同様に、クロス円も円安推移。ユーロ円は173.21円付近、ポンド円は198.56円付近、豪ドル円は97.43円付近まで上昇した。なお、米政府機関が閉鎖されていることから、今晩の米雇用統計は発表見送りとなる見通し。
ロンドン市場では、ややドルが売られている。米議会に動きがみられないまま、米政府機関の一部閉鎖が続いている。昨日の米新規失業保険申請件数に続いて、本日は米雇用統計発表が延期される見込み。重要な経済統計の手掛かりに欠ける状況となっている。ドル円は東京午前の植田日銀総裁発言で買われたあと、ロンドン時間には売り戻されている。147円台前半から後半で上に往って来い。ユーロドルは1.17台前半での揉み合いのなかでやや上値を伸ばしている。ポンドドルも1.34台前半から後半へと上昇したが、足元では上値が重くなっている。一連の欧州や英国のサービス業PMIが発表されたが、ユーロ圏に目立った変化が見られなかった一方で、英国は比較的大きく下方改定されている。ユーロ買い・ポンド売りが優勢になるなかで、ポンドはやや上値を抑えられている。ユーロ円は173円台前半から173円をやや割り込む動きとどまる一方、ポンド円は198円台後半から前半へと押し戻されている。
NY市場は米ISM非製造業景気指数の弱い結果がドル売り円買いを誘う場面が見られたが、ドル円は東京朝の安値前後までと新規のドル売りは限定的。その後は米株高の動きもあって少しドル買い円売りが入った。米連邦政府機関閉鎖が続く中、先行きへの不透明感が見られるが、利下げ継続との期待もあって、相場への影響は抑えられるとの楽観論がドル円を支えた。クロス円も同様に、米ISM非製造業景気指数後に少し下げたが、その後反発した。特に昨日売りが目立ったポンドは、週末を前にした調整もあって対ドルでもポンド買いが出ており、198.87付近まで買いが出た。ユーロドルはÐ米ISM後に一時ドル売りも続かず。

執筆者 : MINKABU PRESS
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