【これからの見通し】波乱の一年の締めくくり、薄商いのなか円高の動き警戒も
【これからの見通し】波乱の一年の締めくくり、薄商いのなか円高の動き警戒も
今年は波乱の一年だった。新型コロナ禍からの経済の立ち直りが期待されるなかで、突然にウクライナ戦争が勃発した。市場の楽観ムードは一気に崩れた。エネルギ価格高騰、小麦など食糧品価格の高騰、物流や各国生産体制の混乱で供給ボトルネックが問題となった。
金融市場ではインフレ高進を抑制させるために各国中銀が利上げに走った。そのなかで日銀だけは超緩和政策を継続。日米金利差拡大見通しからドル円は113円台を安値に152円手前まで上伸した。クロス円も買われ、円独歩安の様相を呈した。しかし、年後半に入ると、米利上げペース鈍化やターミナルレートを意識した取引に転じた。さらに、12月日銀会合では予想外のYCC変動幅拡大が出口への思惑を触発、円高方向に揺り戻されてきている。
その他では、英国をめぐる混乱も大きかった。トラス前政権が財源無き減税策を打ち出したことが、英国への信認を失墜させた。ポンドドルは1.20付近から一時1.0350付近まで急落。英国債売りが進行して、年金運用に支障をきたす事態となった。英中銀はインフレ対応で金融引き締めを行うなかで、緊急避難的に債券購入策を強行。ただ、規律を守って一時的な措置にとどめたことで政府と英中銀との軋轢が最高潮となった。そして次のスナク政権ではトラス氏とは真逆の政策を打ち出して市場の混乱は収束された。ただ、緊縮的な政策となっていることで、今後の英景気動向への不安は残っている。
中国の新型コロナ政策も大転換。市民がゼロコロナ政策に反発し、デモ行動が広がったことをきっかけに、中国政府はゼロコロナ政策を破棄した。背景には予定通りにGDPを発表できないことに示されるように、経済成長が痛んだことがあったようだ。足元では経済再開の動きを進めているものの、爆発的なコロナ感染拡大に、世界各国の警戒感が高まっている。
もちろん、混乱の発端となったウクライナ戦争もまだ続いている。
しかし、年末は静かな相場展開が続いている。来年に向けて一休みしたいムードだ。そのなかで、ドル円は134.50付近まで下げ渋ったあと、再び上値が重くなってきている。薄商いのなかで円高の動きが警戒されそうだ。
この後の海外市場で発表される経済指標は、南アフリカ貿易収支(11月)、米シカゴ購買部協会景気指数(PMI)(12月)など。米債券市場は短縮取引となる。きょうは、一年の良い締めくくりとしたいものだ。
minkabu PRESS編集部 松木秀明
執筆者 : MINKABU PRESS
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