中国の感染拡大への懸念でリスク回避のドル買い ドル円は134円台半ば=NY為替概況
きょうもドル円は年末向けた薄商いの中で買い戻しの流れが続いた。この日発表の日銀の主な意見では、先日のイールドカーブコントロール(YCC)の調整は緩和解除や出口戦略ではないとの意見が複数の委員から出ていたことが明らかになったこともドル円の買い戻しをサポート。
NY時間にかけて133円台に伸び悩む動きも見られたものの、米国債利回りが上昇に転じたことや、米株式市場も不安定な動きが続く中、リスク回避のドル買いで、ドル円は134円台半ばに戻す展開。
市場では中国のゼロコロナ政策の終了が逆に、世界中での感染増加につながるのではとの警戒感が広がっている。イタリア・ミラノの保健当局はきょう、中国からの航空便2便の乗客のほぼ半数がウイルス検査で陽性だったことを明らかにした。イタリア政府は中国から到着する航空便について、全乗客の検査を義務付けることを命じている。ドイツやフランスの当局も動向を注視。また、米政府も中国からの渡航者に検査での陰性証明を1月から義務付けることを明らかにした。
市場は次回2月のFOMCでの0.50%ポイントの利上げの確率を44%程度で織り込んでいる。先日のFOMCでの委員の金利見通し(ドットプロット)ではハト派がほとんど残っていなかった。逆に19名の委員のうち7名がターミナルレート(最終到達点)が5.25%よりも高くなるとの見通しを示し、意見の偏りはむしろ、よりタカ派的に傾いていることが示されていた。パウエル議長はFOMC後の会見で「利上げの規模はデータ次第」と述べていたが、先週発表の11月のPCEコアデフレータはインフレが予想以上に粘着性があることが示されている。
年明けの来週は12月分の米雇用統計が発表されるが、平均時給が前年比5.0%増が見込まれ、非農業部門雇用者数(NFP)も20万人増の堅調な伸びを示すと予想されている。予想通りであれば、FRBが「労働市場は依然としてタイト」と言うのに十分な根拠を得ることになり、インフレが「コストプッシュ」から「ディマンドプル」の問題へと転換させる可能性があるとの見方も出ている。
中国のゼロコロナ政策の解除はインフレ懸念をさらに加速させるだけで、次回のFOMC前に予定されている経済指標も限られている。FRBのタカ派傾向を考慮すると、0.50%ポイントの利上げの可能性は十分にあり得るという。
ユーロドルは1.06ドル台前半に伸び悩んだ。NY時間の朝方には1.0675ドル付近まで上昇していたが、リスク回避のドル買いが圧迫。ただ、1.06ドル台でのレンジ取引に変化はない。
先日のECB理事会以降、ユーロドルは動意薄の展開が続いており、それはECBのタカ派メッセージに反発しているとも言える。ユーロドルは1.06ドル台での底堅い値動きは続けているものの、いまのところ上値を積極的に試す動きまでは見られていない。しかし、来年のユーロは上昇の可能性を秘めているという、ユーロドルは慎重であるが、1.10ドルまでに上昇する可能性があるとしている。
ECBの課題は景気後退を悪化させ、リスク回避の動きを誘発することを避けることだと指摘している。特に、ドイツ国債とイタリア債の利回りスプレッドがさらに拡大すれば、ユーロの強気派にとってはパーティーが台無しになることから、来年はECBのコミュニケーション手段が効率的に機能することが非常に重要だという。
ポンドドルは一時1.21ドル台まで回復していたものの滞空時間は短く、1.20ドル台前半まで押し戻された。典型的な上値の重い値動きが続いている状況。
ポンドは英経済に逆風が吹く中で年を越しそうだが、来年の荒い展開を暗示しているとの見方が出ている。今年のポンドドルはパリティ割れこそ回避したものの、9月に過去最低を更新していた。一方、英家計の実質所得は4四半期連続で減少し、英国人の生活水準が過去最悪となる中、英経済は以前考えられていたよりも弱くなっていることが推測される。それに加えて、労働争議が雰囲気を悪化させており、ロンドン市内のパブやレストランでは、先週の鉄道ストライキで売り上げがパンデミック前の半分近くまで落ち込んだという。
インフレが高止まりしているにもかかわらず、英中銀は利上げの早期終了を匂わせている。そのような中で投資家は経済的な痛みを相殺する安全弁として、ポンド安を選択する可能性があり、来年のポンドドルはパリティ(1.00ドル)割れも有り得るという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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