強い米CPIもドル売りの反応 ドル円は109円を試す動き=NY為替前半
きょうのNY為替市場はドル売りが優勢となり、ドル円は109円台前半に再び値を落としている。朝方に3月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、総合指数は前年比で2.6%、コア指数も1.7%の上昇と予想を上回る伸びを示した。
ベース効果のほか、エネルギー価格上昇、そして、サプライチェーンの混乱などがインフレを押し上げている。バイデン大統領の1.9兆ドルの追加経済対策も寄与したものと思われる。3月は封鎖措置も緩和され、人々の動きも回復する中で特にサービス業の価格上昇が確認された。
しかし、発表直後こそ米国債利回りの上昇と伴にドル高の反応がみられたものの、直ぐに戻り売りに押されている。ドル円も109.60円付近まで瞬間的に上昇後、109円台前半に押し戻される展開。市場では高インフレはすでに予想されていたことでもあり、それでもってFRBが慎重姿勢を変えるとも考えづらい中、ドルロングの調整の絶好の機会となったのかもしれない。また、米インフレの強さが世界的な景気回復への期待に繋がり、ドルの相対的な魅力を低下させている可能性もありそうだ。
ドル円は109円ちょうどを試す場面が見られる中で、目先は109円台を維持できるか注目される。きょうの米CPIへの反応は下値警戒感をさらに強める動きではある。
ユーロドルは1.19ドル台半ばまで上昇。きょうの上げで再び200日線を回復しており、明日以降、大きな心理的節目の1.20ドルを目指すか注目の展開が見られている。一部からはEUの今後のワクチン展開の加速でユーロドルの下落は抑制されるとの声も出ている。米インフレの予想される上昇は、米国債利回り上昇とドル高につながる可能性があるものの、ユーロ圏のワクチン接種は遅いスタートとなった分、今後の加速が期待され、それと伴にユーロ圏の見通しも改善されることから、ユーロを支援するはずだという。
ワクチン展開は現状は米英が先行しているが、周回遅れの欧州や新興国が追いついて来れば、米英の優位性は薄れ、欧州は脚光を浴びやすい。成長見通しもそれに伴って上方修正される可能性もある。
ポンドドルは米CPIの発表後に売りが強まり、一時1.36ドル台に下落する場面がみられた。特段のポンド売りの材料亜は見当たらないが、ドルとポンドはユーロに対して同方向で動いており、米CPIを受けてユーロに買い戻しが強まったことが、ポンドをドル以上に圧迫した面があったのかもしれない。ただ、本日1.3695ドル付近に来ている100日線はサポートされており、調整売りは続いているものの、底堅さも依然として残している。
ただ、市場の一部からは、ポンドの2つの下値リスクが指摘されている。EU離脱がによる英経済への圧迫とスコットランド議会選挙を挙げている。特にスコットランド議会選挙については、北アイルランドで英国とEUの間で結ばれた北アイルランド議定書を巡る抗議デモも発生しており、負傷者も出ている。その情勢が5月の議会選挙での独立派の勝利の可能性を高めるという。世論調査ではスタージョン党首率いるスコットランド民族党(SNP)が過半数を獲得する勢いが示されている。同氏は住民投票の実施を公約としており、「スコットランドには独立国としての将来を選択し、EU加盟国としての恩恵を再び取り戻す権利がある」と主張している。もし、選挙後に独立を問う住民投票のリスクが高まるようであれば、ポンドにとっては波乱材料と見ているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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