ドル円は原油相場急落で108円台に伸び悩むも堅調な展開は維持=NY為替概況
きょうのNY為替市場、ドル円は終盤に108円台に伸び悩んだものの、堅調な展開は維持した。終盤の伸び悩みについては、米株が下げたほか、原油相場が急落しており、WTIが60ドルを割り込んだことから、米国債利回りの上げも一服し、ドル円も追随した。
東京時間には明日の日銀決定会合に関するニュースが流れ、108.65円付近まで瞬間的に下落したが、下値での買い戻し意欲も旺盛で、一時109.20円付近まで買い戻される場面もみられた。前日のFOMCを通過して、米国債利回りがきょうも上昇しており、10年債は一時1.75%まで上昇した。米国債の動きがドル円の下値をサポートしている構図に変化はない。
前日のFOMCメンバーの金利見通しは、2023年までの金利据え置きを維持した。パウエルFRB議長も会見で、インフレが上昇する可能性は認めたものの、しばらくはゼロ金利を維持する慎重姿勢を強調していた。長期金利への言及もなかったことから、市場ではインフレ期待は今後も上昇し、長期金利はまだ上昇するとの見方から、米国債の売り(利回り上昇)を加速させたようだ。
明日は日銀決定会合の結果が発表される。市場では同時に発表される「政策点検」の内容に注目が集まっている。きょう伝わった最新の報道では、長期金利については変動幅を現行の上下0.20%から若干広げ、上下0.25%程度とする方向。きのうまでは据え置きとみられていた。一方、上場投資信託(ETF)の購入については、年6兆円の目安を廃止し、市場の混乱時にのみ購入する姿勢を明確にすると伝わっている。きのうまでは6兆円の目安は廃止するものの、上限12兆円は維持するとみられていた。
若干引き締め気味に転じることが予想されているが、前日のFOMCを受けての米国債利回りの上昇を見れば、日米の利回り格差拡大にさほど影響もなく、ドル円の下値はサポートされるとみられている。
ユーロドルは戻り売りに押され、1.19ドル台前半に値を落としている。一時1.19ドル台後半まで買い戻され、1.20ドル台を回復するかにも思われたが、上値を抑えられており、1.20ドル水準の上値抵抗は強まっているようだ。市場の一部からは、ECBは今年のインフレは短期的に目標を上回るとみているものの、従来よりもインフレ期待に対して寛容になっており、緩和状態を継続するとの声も聞かれる。
ECBは誤った引き締めを繰り返さないよう注意を払っており、総合とコアの両方のインフレが2%を上回ったとしても、すぐには引き締めに転じず、逆に、完全雇用やバランスの取れた成長といった、ユーロ加盟国全体の経済政策を支援するという副次的な目的をさらに強調する可能性があるという。
なお、欧州医薬品庁(EMA)がアストラゼネカ製ワクチンは恩恵がリスク上回ると結論づけたことが伝わった。ドイツ、フランス、イタリアなど欧州の主要国は深刻な副作用の報告を受けてアストラゼネカ製のワクチンの接種を一旦停止しているが、フランスとイタリアは、EMAが安全と確認した場合には、停止措置を解除する意向を示している。欧州ではワクチン接種の遅れが目立っており、景気回復への影響が懸念されている。その意味でもアストラゼネカ製のワクチン接種の停止は痛手と見られていた。このニュースを受けユーロは買い戻しも見られていた。
ポンドドルはNY時間に入って買い戻しがみられ、一時1.39ドル台半ばまで戻す場面もみられた。きょうは英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、ポンドは売りの反応を示した。英中銀が大方の予想通りに政策を据え置いたが、声明で「インフレに十分な進展の証拠がみられるまで引き締めしない。インフレ見通し弱まれば、行動をとる用意」と述べたことに素直に反応したものと思われる。
ただ、関心が集まっている長期金利の上昇については、「世界の成長の予想以上の進展を反映し、先進国の長期金利はパンデミックの前と同水準まで急速に上昇した。これはより高い実質利回りを反映している」と述べるに留まり、利回り上昇についての懸念は示していない。FRBと同様のスタンスのようだ。NY時間に入ると、そのスタンスを反映しているのか、ポンドは買い戻しが優勢となっている。市場からは、きょうのポンドの控えめな反応は、英中銀が最近の利回り上昇への懸念を一掃することに成功したことを反映しているとの指摘も出ている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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