株安でドル買戻し ただ、ドルの先安観は強い＝ＮＹ為替概況

　きょうのＮＹ為替市場はドル買い戻しが優勢となり、ドル円は１０３円台に戻した。ただ、ドルの先安観が強い中、菅首相が１月９日からの緊急事態宣言の再発令を決断したことで、リスク回避の円高も加わり、きょうのドル円は一時１０２．７０円付近まで下落。昨年１２月の安値水準を一時下回ったこともあり、明日以降、１０３円台を維持できないようであれば、下値警戒感はさらに強まりそうだ。

　ＮＹ時間に入ってからのドル買い戻しは、米株に戻り売りが強まり、ダウ平均が一時７００ドル超下げ幅を拡大したことでリスク選好のドル売りが一服したことによるもの。明日のジョージア州の米上院議員の決戦投票や６日の米大統領選の上下両院合同会議による選挙人投票の集計を警戒しているようだ。

　特にジョージア州の決戦投票で共和党が２議席を確保するようだと、税制改正や景気刺激策強化、そして、インフラ投資などバイデン新政権が押し進めようとしている政策の実現性が不透明になるとみられている。６日の米大統領選の選挙人投票の集計についても波乱を警戒する動きもあるようだ。

　ただ、基本的にはドルの先安観は強い。米国は昨年末に６００ドルの直接給付や３００ドルの失業給付上乗せ措置を含む、９０００億ドル規模の追加経済対策を決めた。今年の米個人消費が活発化するとの期待も高まる中で、市場にはインフレ期待の高まるとの見方も出ている。米国債市場では、インフレ期待を表す、１０年物のブレークイーブン・レ－トが一時、２０１８年以来の２％超えとなった。

　一方、ＦＲＢはある程度のインフレ期待の高まりであれば許容する姿勢を強調しており、低金利継続姿勢をコミットしている状況。インフレ期待は高まる一方で、ＦＲＢが景気に配慮し利上げを控え、あえて、ビハインド・ザ・カーブの政策を取れば、ドルの購買力は低下する。そのような中で、今年のドル円は下値警戒感が強まると予想されている。

　ユーロドルはＮＹ時間に入って伸び悩む展開を見せ、１．２２ドル台半ばに値を落とした。序盤は１．２３ドル台に再び上昇して始まったものの、ＮＹ時間に入ってドル安が一服し、ユーロドルも戻り売りに押される展開。

　市場ではドル先安観が強まる中で、今年もユーロドルの上値期待は強い、目先は１．２５５０ドルまでの上昇も期待されているようだ。ユーロ圏のインフレは前年比でマイナスが続いており、ＥＣＢもデフレと戦う中で、マイナス金利政策は当面続くとみられる。それでも名目金利からインフレ期待を差引いた実質金利は、デフレの分、ユーロ圏が米国を上回っている。その状態はしばらく続くとも見られている中、その欧米の実質金利の格差がユーロドルを支援するとの声も聞かれる。

　ポンドは軟調。対円でも下落しており、ポンド円は１４０円を割り込んでいる。ジョンソン英首相はイングランド全体で、新型ウイルスの感染拡大の防止のため都市封鎖を実施すると発表。期間は月曜日の夜から２月中旬まで。学校についても、すべての小学校から大学がまで閉鎖されるとしている。外出は特定の理由のみで、テレワークができない場合の出勤、生活必需品の購入、運動、病人の支援、医療の予約などに限られる。必要不可欠ではない小売店やホスピタリティ、パーソナルケアサービスはすべて閉鎖が求められるとしている。ポンドはすでに報道が伝わっていたこもあり、発表後の反応は限定的。

　昨年は英、ＥＵの貿易交渉がようやく合意に到達した。合意発表後は一旦調整も出ていたが、昨年末にかけてポンドは上値追いが続いている。しかし、ここに来てＥＵ離脱後の英経済が直面している問題を考慮すると、ポンドの上値には慎重にならざるを得ないとの声も聞かれる。貿易交渉が合意は長年の不確実性を取り除いたが、既にそれは織り込まれており、やや買われ過ぎともとの見方もあるようだ。

MINKABU PRESS編集部　野沢卓美