ドル円、一時146.10円付近まで下落 ただ、円安シナリオも根強い=NY為替概況
ドル円、一時146.10円付近まで下落 ただ、円安シナリオも根強い=NY為替概況
きょうのNY為替市場、ドル円は後半に下げ渋ったものの、序盤は売りが先行し、一時146.10円付近まで下落する場面が見られた。本日の21日線が146.20円付近に来ており、その水準に一時顔合わせした。21日線はサポートされている。
ドルは主要通貨に対してまちまちな動きを見せる一方、円は日米の合意と、本人は否定はしているものの、石破首相の進退に関する憶測が高まっており、市場も神経質な展開が見られていた。
円安シナリオも根強くある。主要国の中で、米国との交渉で最初に合意に漕ぎ着けたのが日本だったが、それでもモデルは円に対して弱気のままだとの指摘が出ていた。円への逆風となっているのは、実質金利が極めてマイナスである点と、巨額の財政赤字、そして低迷する経済に加えて悪化する人口動態といった構造的な要因だという。
今回の日米の合意は、こうした問題を解決するものではない。むしろ米国が高関税を固定し、自国に新たな資本を投じることを約束させている点で、問題を多少なりとも悪化させる可能性さえあるという。
また、政局が流動化しているが、アナリストからは次期首相が高市氏ならば円安シナリオの可能性があるとの指摘も出ていた。高市氏は積極財政派で、財政拡大が予想されるほか、日銀に利上げを遅らせるよう圧力かけるのではないかという思惑から、円安に繋がる可能性があるという。
きょうのユーロドルはNY時間に入って買いが優勢となり、1.17ドル台後半まで買い戻された。ドルが軟調に推移していることに加え、日米の合意を受けて、EUも15%で合意に接近との報道も流れ、ユーロはサポートされた。
米国は日本と同様にEUからの輸入品に15%の関税賦課で協定締結に接近しているという。ただ、航空機、蒸留酒、医療機器など一部の製品は対象から除外する見通し。この15%関税には米国が設定した基礎税率10%が含まれており、既存の関税率が約4.8%であることを踏まえると、15%は実質的に現行水準の関税を踏襲するものだという。
一方、明日はECB理事会が開催される。今回は据え置きがほぼ確実視されており、市場は9月理事会に向けたヒントを探っている。理事会前にEUと米国が合意するか確認する必要はありそうだが、もし15%で決まったとしても、影響を検証する時間が必要となり、今回は明確なヒントを示す可能性は低いとも見られているようだ。ただ少なくとも、市場の9月利下げへの期待を打ち消すようなメッセージを発することは無いとも見られている。
ポンドドルは3日続伸し、1.35ドル台後半まで上昇。本日の21日線がその付近に来ており、顔合わせした格好となっている。本日のポンドは対ユーロでも上昇しているが、ポンドに関しては英財政問題を背景に対ユーロでの最近の下落は今後も続く見通しだとの指摘がアナリストから出ている。理由として英国の厳しい財政状況を挙げている。
前日発表されたデータでは、6月の英政府借入額が予想を上回る207億ポンドに達し、月次の記録が始まった1993年以降、6月としては2番目に高い数字となった。「この数字は英財政の持続可能性へのリスクに再び注目を集めるものだ」という。このような状況から、今後のポンドのリスクは下向きに傾いていると指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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