米PPIはインフレ鈍化示すも後半にドル買い優勢に=NY為替概況
米PPIはインフレ鈍化示すも後半にドル買い優勢に=NY為替概況
きょうのNY為替市場、後半にドル買いが優勢となった。朝方発表の5月の米生産者物価指数(PPI)が前日の米消費者物価指数(CPI)に続きインフレ鈍化を示したことで、為替市場はドル売りで反応。同時刻に発表になった米新規失業保険申請件数も予想を上回り、雇用市場の軟化を示していた。
しかし、動きが一巡するとドル買いが復活した。米株が一時軟調に推移するなどリスク回避の雰囲気がドル買いを誘発したとの指摘も出ていた。ドル円は一時156.60円近辺まで急速に下落したが、下値での押し目買いも出てPPI発表前の水準に戻す展開。
ただ、FRBは前日のFOMCでタカ派に変更したものの、年内利下げへの扉は開いたままではある。今週のインフレの下振れサプライズは心強く、FOMC委員の大半が利下げを1回にするか2回にするかで意見が分かれている。そのことから、年内に複数回の利下げを垣間見せるような市場価格設定が続いても不思議ではないといった見方も出ていた。
ドル円については明日の日銀決定会合の結果を見極めたい雰囲気も出ている。日銀は月6兆円をメドに実施している国債購入の減額を検討する。現在、保有国債の償還が6兆円程度であることから、減額となれば事実上の量的引締め(QT)の開始となる。
減額の具体的な数字を示すのか、それとも、個人消費中心に成長の勢いが鈍い中で、方向性だけ示してフリーハンドにしておくのかは不明。また、海外勢中心に追加利上げの期待も根強いが、今回はそれらのヒントも探ることになりそうだ。7月の追加利上げが一部で見込まれている。
ただ、各国中銀が利下げに慎重なアプローチを取り始めている中で、日銀の政策変更でもって円安の流れに変曲点が訪れるとの見方も少ない。
きょうのユーロドルは一旦1.08ドル台に上昇したが、上昇の流れを維持できずに、1.07ドル台前半まで下落している。フランスの政局が不透明になる中、仏独の利回り格差が2017年以来の水準に拡大。フランスでは国民議会(下院)の解散総選挙が実施されるが、右派のルペン氏率いる「国民連合(RN)」がリードしており、マクロン大統領の中道連合は現在の250議席から半減する可能性がある。ただ、RNは過半数には届かない見通し。
「RN」が勝利した場合、より緩和的な財政政策が導入されるとの懸念から、仏国債を売って、より安全なドイツ国債を購入する動きが加速しているようだ。
ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.27ドル台半ばに下落。本日の21日線が1.2740ドル付近に来ていたが、その水準はサポートされている。リバウンド相場の流れ自体は続いているものの、今月に入って1.28ドル台は強い上値抵抗となっているようだ。
来週は20日に英中銀が金融政策委員会(MPC)を開催する。ただ、その前日の19日には英消費者物価指数(CPI)が発表され、来週はポンドにとって重要な週となりそうだ。アナリストからは直近の賃金とインフレ指標が予想を上回ったことや、選挙期間中でもあることから、来週の利下げはないという。むしろ、来週の英CPIでインフレ鈍化が示され、それによって8月の利下げ開始の期待が高まる可能性があるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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