ドル円は145円台に下落 PCEは無難通過も明日の米雇用統計前に調整強まる=NY為替概況
ドル円は145円台に下落 PCEは無難通過も明日の米雇用統計前に調整強まる=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は戻り売りが強まり、145円台に再び下落した。朝方発表の7月の米PCEのデータを受けて発表直後はドル売りの反応を示していた。ドル円も145円台に下落したものの直ぐに買い戻されていた。
PCEデフレータはインフレの落ち着きを示しているものの、個人消費支出が強い数字となっており、FRBの勝利宣言には程遠く、インフレ抑制を目指すFRBにとって新たな懸念材料とも受け止められている。
一旦146円台まで買い戻されていたが、その後に一気に下落。本日の米国債利回りは低下しているものの、特段の売り材料は見当たらない。本日は8月末の取引で、月末に絡んだ実需の売りがロンドンフィキシングにかけて出ていたようだ。
市場は明日の米雇用統計に注目している。次回のFOMCに大きな影響を与えることが予想され、「賃金の伸び鈍化が確認できなければ、ソフトランディングは不可能だ」との声も聞かれる。非農業部門雇用者数(NFP)は16.5万人増が見込まれ、米労働市場の鈍化傾向を示すと見られている。しかし、平均時給についてはなお、前年比で4%台が見込まれている状況。
*米雇用統計(8月)1日21:30
非農業部門雇用者数
予想 16.5万人 前回 18.7万人
失業率
予想 3.6% 前回 3.5%
平均時給
予想 0.3% 前回 0.4%(前月比)
予想 4.3% 前回 4.4%(前年比)
ユーロドルはロンドン時間から一本調子の下げを演じ、一時1.0840ドル付近まで値を落としている。きょうの下げで21日線と100日線に跳ね返された形となっており、明日以降の動きが注目される。200日線が1.0815ドル付近に来ており、目先の下値サポートとして意識される。
本日は8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表になり、総合、コア指数とも前年比5.3%と予想を上回る内容となった。昨年からのベース効果とここ数カ月の原油価格上昇により、予想よりもエネルギー価格の下落が小さかったことが要因となっている。ただ、昨年のドイツにおける9ユーロの交通乗車券に関連するベース効果もあり、今後はさらに鈍化の可能性が高いと見られている。しかし、労働市場が依然タイトであるため、ECBのインフレ目標に一致する水準までの低下はまだ先とも見られている。
予想を上回るHICPではあったが、ユーロは逆にネガティブな反応を見せ、短期金融市場でも、来月のECBの利上げの可能性を40%と見込んでいたが、30%に低下している。ユーロ圏経済に景気後退への懸念が台頭している中で、本日の予想を上回るHICPは逆にスタグフレーションへの懸念に繋がった模様。本日はシュナーベルECB専務理事の発言が伝わっていたが、「成長見通しは6月にECBが予測したよりも悪化しており、基調インフレも頑固なまでに高いままだ」と述べていた。
*ユーロ圏消費者物価指数(HICP)(概算値速報)(8月)18:00
結果 0.6%
予想 0.3% 前回 -0.1%(前月比)
結果 5.3%
予想 5.0% 前回 5.3%(前年比)
結果 5.3%
予想 5.2% 前回 5.5%(コア・前年比)
ポンドドルも一本調子の下げを見せ、戻り売りが優勢となった。きょうの下げで21日線に跳ね返された格好となり、明日の米雇用統計を受けた反応が注目される。100日線が1.26ドル台半ばに来ており、その水準を下抜けるか注目。
市場の英中銀の追加利上げへの期待は高く、英中銀はFRBよりも早く今回の利上げサイクルを開始しているが、そのFRBやECBよりも遅く利上げサイクルが終了すると見られている。次回9月も0.25%ポイントの利上げが見込まれているが、短期金融市場では100%完全には織り込んでおらず、90%程度となっている。一時期は0.50%ポイントの大幅利上げを織り込む動きも見られていたが、景気後退への懸念が強まる中で、市場も慎重になって来ているようだ。
きょうはピル英中銀チーフエコノミストの発言が伝わっていたが、「英金利は急速に上昇し、その後急速に低下するのではなく、しばらくの間、緩やかな高水準に留まるテーブルマウンテンのようなプロフィールが望ましい」とコメントしていた。これを受けて利上げ観測が更に後退している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。