ドル円は一時145円台半ばに下落 前日同様に予想下回る米指標でドル売り=NY為替概況
ドル円は一時145円台半ばに下落 前日同様に予想下回る米指標でドル売り=NY為替概況
きょうのNY為替市場で再びドル円は145円台半ばに一時下落した。この日発表のADP雇用統計とGDP改定値がインフレ鈍化への期待を裏付ける内容となったことで、米国債利回りが下げ、ドル売りが強まった。
特にADP雇用統計は雇用増加数が17.7万人増と予想を下回り、増加幅は過去5カ月で最も小さかった。労働需要の軟化の兆しがさらに強まっている。前日の米求人件数も予想より弱い数字だったが、米労働市場が徐々にシフトダウンしていることが示されている。
労働力の需給が均衡に接近するにつれて、労働者はパンデミック時に獲得した交渉力の一部を失いつつある。米国人の労働市場に対する見方も悪化し、自発的に離職する人が減ってきている。こうした力学が賃金の伸びを鈍化させており、職に留まった労働者の8月の給与は前年比5.9%増と、2021年以降で最小の伸びとなった。転職した労働者は9.5%増だった。
米個人消費が依然として底堅いことから、ドル円は下値を支えられているが、労働市場のムードが悪化を顕著するようであれば、戻りを試す流れに変化する可能性もある。その意味では金曜日の米雇用統計は重要なポイントとなりそうだ。いまのところ、非農業部門雇用者数(NFP)は17万人増が見込まれており、平均時給も伸び鈍化が見込まれている。予想を下回る内容であれば、敏感に反応しそうだ。
145円より上でロングを形成した向きのストップの水準としては、8月23日安値144.54円付近が意識される。テクニカル的には21日線が145円ちょうど付近に来ており注目。
ユーロドルは一時1.09ドル台半ばまで買い戻された。ユーロドルは今週に入ってからの買戻しで、200日線でサポートされ、本日は21日線を回復している。本格的なリバウンド相場に変化するか注目の動きが見られているが、明日の米PCEデフレータや金曜日の米雇用統計などの結果を受けてのドルの反応次第のところが大きい。
きょうはドイツとスペインの消費者物価指数の速報値が発表になっていたが、ドイツのインフレは予想ほど低下せず、スペインは逆に加速していた。9月に再び利上げに踏み切るかどうかを思案中のECBに域内の物価圧力の断面を示した格好。
明日はユーロ圏全体の消費者物価の発表が予定されているが、本日のドイツとスペインの数字は、予想を上回る結果となる可能性が示唆されている。ECB理事らは、消費者物価が9月14日の理事会の決定に重要だと強調していた。
9月の利上げについては市場でも見解が完全に分かれており、情勢が見えない状況。もし、消費者物価がインフレの高止まりを示せば、ECBに利上げを決意させる可能性もありそうだ。
*ドイツ消費者物価指数(速報)(8月)21:00
結果 0.3%
予想 0.2% 前回 0.3%(前月比)
結果 6.1%
予想 6.0% 前回 6.2%(前年比)
*ドイツ調和消費者物価指数(HICP)
結果 0.4%
予想 0.2% 前回 0.5%(前月比)
結果 6.4%
予想 6.3% 前回 6.5%(前年比)
*ユーロ圏消費者物価指数(HICP)(概算値速報)(8月)31日18:00
予想 0.3% 前回 -0.1%(前月比)
予想 5.0% 前回 5.3%(前年比)
予想 5.2% 前回 5.5%(コア・前年比)
ポンドドルは買い戻しが優勢となり、1.27ドル台を回復。きょうの上げで21日線を回復し、明日以降の動きが注目される。ただし、ポンド関連のイベントは少なく、むしろ、米経済指標を受けたドルの動きに左右されそうだ。
英中銀がきょう、7月のマネー・アンド・クレジット報告を公表していた。それによると、貯蓄者は101億ポンドを固定金利口座に移したという。市場からは「他で金利が上昇しているため、貯蓄者は自分の足で最も金利の高い口座に移っている。金利のピークが近づくにつれ、多くの貯蓄者は今後1、2年は必要ないとわかっている資金で高金利を固定することを選んでいる」との指摘も出ていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。