リスク回避のドル高の中で、ドル円は143円台で売買交錯=NY為替概況
リスク回避のドル高の中で、ドル円は143円台で売買交錯=NY為替概況
本日の市場は米株式市場に売りが強まるなど、リスク回避の雰囲気が強まる中、為替市場はドル高の動きが見られた。一方、ドル円については円高も見られ、143円台で売買交錯している。中国の貿易収支が予想以上に弱い内容が示されたことから、中国経済への不透明感が更に高まっていることで市場に警戒感が広がっている。
ただ、ドル円の上値期待は根強い。日本の厚労省がこの日公表した6月の毎月勤労統計(速報値)が日銀の金融緩和姿勢を正当化し、円安基調が続くのではとの見方が出ている。実質賃金が前年比で1.6%減と予想以上に減少し、この結果を受けて、特にドルやポンドに対する円ショートに自信を深めたという。
「今回の数字は日銀の金融緩和姿勢を正当化するものであり、インフレリスクはまだ下向きとの見方を裏付けている。ボラティリティー(予想変動率)が急上昇しない限り、円は戻る雰囲気にはない」と言及。そのうえで、「ドル円は短期的に144円を突破し、6月30日の高値145.05円付近を試す可能性がある」とも指摘した。
ユーロドルは戻り売りに押され、1.09ドル台半ばまで下落。100日線が1.09ドル台前半に来ているが、その水準を再び試しそうな気配も出ている。先週はサポートされていた。
きょうはドイツの7月の消費者物価指数(HICP)確報値が発表されていたが、それを受けて、ドイツのインフレは今後数カ月でさらに鈍化するとの見方も出ている。前年の電気料金のベース効果によるエネルギー価格の上昇にもかかわらず、7月の総合インフレは前月の6.8%から6.5%に鈍化していた。また、エネルギー価格と食品価格を除いたコアインフレも、ユーロ圏全体と同様に来月から急低下し始める可能性があるという。
ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.26ドル台に下落。きょうは7月の英既存店売上高が発表になっていたが、前年比で1.8%と昨年10月以来の低い伸びとなっていた。一部からは、直近の英経済指標に軟化が見られていることから、英中銀は次回9月の金融政策委員会(MPC)で、利上げを一時停止するのではとの見方が出ており、ポンドを圧迫しているとの指摘も出ている。
しかし一方で、その可能性はまだ低いとの指摘も出ている。9月に英中銀が利上げサイクルを一時停止するとの観測は時期尚早だとしている。英中銀は次回のMPCで、0.25%ポイントの追加利上げを行うと見ているという。
一部のオブザーバーは、英中銀は利上げサイクルを一旦停止し、後に利下げに踏み切る可能性を示唆している。しかし、賃金の伸びやサービス価格の上昇によってインフレが上昇し続けていることを考慮すると、これはまだ時期尚早だという。その次の11月の会合までには、上記の圧力も緩和される可能性が高く、その時になって初めて、英中銀は現状維持を検討するだろうと述べている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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