ドル円は下げ渋る 銀行株が買い戻されリスク回避一服=NY為替概況
きょうのドル円はNY時間に入って買い戻され131円台後半に下げ渋っている。きょうのドル円は戻り売りが優勢となり、ロンドン時間の朝方には一時130円台半ばまで下落する場面が見られた。
週末にUBSによるクレディスイスの買収が伝わったほか、主要国の中銀による流動性供給強化の発表があったものの、市場の不安は燻っている。スイス当局はクレディスイスが発行している、高利回りの分、弁済順位が最下層の偶発転換社債(CoCo債)として知られる「その他ティア1債(AT1債)」を無価値化すると発表。債権者からは株式よりも弁済順位が低いとして怒りの声も上がっているが、スイス当局は、この決定がクレディスイスの資本増強につながると説明し、民間投資家にも痛みの分担を求めた。
ただ、NY時間に入ると米株式市場で銀行株が買い戻され、リスク回避の雰囲気が一服している。それに連れてドル円も下げ渋っている状況。しかし、金融システムの問題が落ち着いたとしても、今後、銀行の融資が厳格化されることも予想される。米経済は景気後退に入るとの見方も強まっており、ドル円も上値が重そうだ。
今週はFOMCが予定。今回の件でFRBがどう対応してくるか確認したいところではあるが、いまのところ、0.25%ポイントの利上げが有力視されている。しかし、据え置きのシナリオも25%程度の確率で見ている状況。利上げは実施されるものの、その先は慎重なアプローチを強調してくるのではとの見方も多いようだ。
ユーロドルは本日も買い戻しが優勢となっており、1.07ドル台を回復している。21日線の上での推移を続けており、目先は先週の高値1.0760ドルが意識される。
UBSがクレディスイスを買収したことで、ひとまず金融システムへの懸念が一服している。クレディスイスの場合、もともと経営不安が強まっていたところに米地銀の預金の取り付け騒ぎが問題に追い打ちをかけた格好となった。米銀とは違った不安が急速に高まった格好だが、ユーロ圏の金融機関も、南欧中心に信用不安を引き起こさないか、また、主要国の金融機関にも経営不安が燻っており、警戒感は根強い。本日はラガルドECB総裁が議会証言を行っていたが、域内の金融機関は問題がないと述べていた。
ただ、市場では今後、ECBは利上げを緩めるのではとの見方も出ている。実際、ECB理事のストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は「引き締めサイクルは終了に近づいている。利上げはほとんど過去の話」と述べていた。
ポンドドルは1.22ドル台後半まで上昇。21日線や100日線を上放れる展開が見られており、目先は直近高値の1.24ドル台半ばの水準を上抜き、1.25ドルを試す展開になるか注目される。
今週木曜日に英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、0.25%の利上げが有力視されている。ただ、据え置きの見方も根強く、当日の委員の投票は大接戦になるのではとの見方も出ているようだ。
金利はすでにピークと思われる水準に非常に近い状態にあり、微妙なところだという。今週開催されるFRB、英中銀、スイス中銀のうち、英中銀が最も利上げを見送る可能性が高いと指摘している。また、その前日に2月の英消費者物価指数(CPI)が発表され、その結果も決定における重要な要因となる可能性がある。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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