弱い米指標を受けドル売り先行も後半は戻す ドル円は日銀後の上げ失う=NY為替概況
きょうのNY為替市場、朝方はドル売りが強まリ、ドル円は一時127円台に値を戻した。朝方発表の12月の米小売売上高と米生産者物価指数(PPI)がともにFRBの利上げペース縮小観測を裏付ける内容となったことがドル売りを加速させた。ただ、後半になると米株が大幅安となるなど景気の先行き不透明感も強まったことから、リスク回避のドル買いも見られた。
米小売売上高は予想以上の減少となり、引き続き自動車やガソリンが減少したほか、家電も減少が続いている。米PPIも最終需要がパンデミック開始以来最も低下し、数カ月に渡るインフレ圧力の後退を拡大させた。サービス価格は上昇が続いているものの緩みつつあるようだ。
きょうのドル円は日銀が市場の期待に反して政策を据え置いたことから円安が強まり、一時131円台半ばに急伸する場面が見られていた。しかし、日銀の決定を受けたこの日の上げをNY時間にかけて完全に失った格好。
日銀の政策据え置きは予想されていたことではあった。しかし、5年物と2年物の共通担保資金供給オペを通知したことは予想外だったのかもしれない。黒田総裁も緩和姿勢維持を強調し、過度に期待を膨らませていた市場にとっては想定以上の期待外れとなってしまったようだ。ただ、4月の新総裁就任以降は、緩和解除に積極的に動くとの市場の見方に変化はなく、きょうはその見方を反映した動きともとれる。
一方、市場の思惑通りに日銀が4月以降に積極的な緩和解除に動いたとしても、米欧にようにはならず、限界もありそうだ。日銀はこの日発表の展望レポートでインフレ見通しを上方修正し、22年度の生鮮品だけを除いたコア指数の見通しを3.0%に引き上げた。しかし、23年度は1.6%、24年度は1.8%となっており、インフレ目標よりも低い水準を見込んでいる。世界的にインフレが鈍化傾向を見せ始める中で、今後、この見通しが下方修正される可能性もあり、その場合は少なくとも積極的に利上げを進める必要性はなくなる。
ユーロドルも1.08ドル台後半まで上昇する場面が見られたが、米株が次第に下げ幅を拡大する中、1.07ドル台に伸び悩んだ。ダボス会議に出席していたドイツのショルツ首相が、ドイツ経済はリセッション(景気後退)を回避できると自信を示していたが、市場からも欧州はリセッションを回避できる可能性があるとの声が出ている。予想外の暖冬が市場の見方に変化を与えているのかもしれない。
以前は今年は穏やかなリセッションになると考えていたが、間近に目にしているすべての経済指標を見ると、恐らく景気は上振れるリスクの方が可能性が高いと考えられるという。つまり、リセッションには陥らない可能性があることを意味する。ただし、ウクライナ侵攻やバリューチェーンの変化など、リスクは引き続き存在するとも指摘した。また、利上げによる影響は常にタイムラグがあるため、急速なECBの利上げが経済にどのような影響を与えるかは正確にはわからないとも述べている。
ポンドドルは買いが強まり、一時1.2435ドル付近まで上昇し、先月に上値を拒んだ水準に並ぶ場面も見られた。ただ、その後は1.23ドル台前半に伸び悩む展開。
きょうは12月の英消費者物価指数(CPI)が発表され、11月から伸びが鈍化したものの、景気減速の中でも2桁の伸びを維持した。ガソリンや衣料品の価格低下がインフレの伸び鈍化に寄与した一方、レストランやホテルの価格急上昇や食品価格上昇に一部相殺された。食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比6.3%上昇となり、11月と同水準だった。
モノのインフレは鈍化傾向が続いているものの、サービスインフレは依然として高水準を維持していることが示された。きょうの英CPIを受け市場からは、サービスインフレの強さは英中銀の追加利上げを正当化するとの見方が多く聞かれる。インフレの伸び鈍化は確認されたが、2.0%のインフレ目標達成にはまだ距離がある。基礎的インフレ、活動、賃金の伸びはすべて予想よりも若干強く、英中銀が迷うことはないという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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