中国の感染再拡大でリスク回避のドル買い ドル円は142円台に上昇=NY為替概況
きょうのNY為替市場はリスク回避のドル買いが強まり、ドル円は142円台を回復した。中国で感染が再拡大しており、一部の都市でロックダウンが再び導入され、中国政府が大都市での地区検査を義務付けると発表している。首都北京での死者の報告も出ており、市場は中国経済への警戒感を再び高める中、為替市場ではリスク回避のドル買いが優勢となっている。
きょうの上げでドル円は100日線の水準を回復。今月発表の10月分の米インフレ統計を経て、市場は米インフレのピークへの期待を高めている。FRBの利上げペース縮小期待も高まる中で、ドル高の勢いが以前ほどなくなって来ていることから、ドル円も再び150円台を目指そうという雰囲気まではない。
日本の生鮮食品だけを除いたコアインフレは10月に40年ぶりの高水準に急上昇し、第4四半期の個人消費を圧迫する可能性が高まっている。それでも、日銀は企業の設備投資と需給ギャップの動向に重点を置いており、日銀がすぐに緩和政策から脱却することはないとの見方が根強い。
来年1月には政府による物価支援策が打ち出され、多少のインフレ緩和も期待できる。コアインフレは第4四半期に3.6%前後で推移したあと、第1四半期に急減速すると予想されている。円安による加工食品や輸入品の価格上昇は継続が予想されるが、電気・ガス料金の補助により、この期間のコアCPIは1.0%ポイントも低下する可能性があるとの見方も出ている。少なくとも来年4月までの黒田総裁の任期中は現状維持が濃厚なようだ。
ユーロドルは戻り売りに押され、1.02ドル台前半まで値を落としている。チャート的には200日線に完全に上値を抑えられた形となっており、再びパリティ(1.00ドル)割れを試しに行くか警戒される。
一部からは、ユーロ圏の景気後退を警戒してECBが政策転換するのではとの見方が出ている。ただ、インフレ環境が依然厳しいことから、ECBはまだ政策転換のサインを出す可能性はないとの指摘も聞かれる。10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年比10.6%に上昇し、これがピークとなる可能性はある。しかし、基礎的インフレは上昇を続け、構成要素の大半はまだ前年比2%以上の価格上昇を示し、さらに上昇しているという。
このような状況下でECBは、まだ軸足を移すことを示唆できず、当面は利上げを継続することになるという。ただ、12月の利上げ幅は10月の0.75%ポイントから0.50%ポイントには縮小すると予想しているようだ。
ポンドドルは戻り売りに押され、一時1.17ドル台に下落した。リバウンド相場の流れは維持しているものの、先週に1.20ドル台を付けたあとは買いの雰囲気が盛り上がらず、戻り売りに押される展開が続いている。
市場からは今週のポンドドルは下落の可能性を指摘する声も出ている。夏の終わりから乱高下してきたポンドは、先日の秋季財政報告の発表以降、脚光を浴びることが少なくなった。そのような中で依然として景気の弱さへの懸念から、今週は1.17ドルちょうどに向けて下降する可能性があるという。
今後は12月15日に開催される英中銀金融政策委員会(MPC)が重要イベントだが、そこではどの程度成長率が軟化し、どの程度の積極引き締めが行えるかを検討することになる。成長率に関しては、今週水曜日に発表される11月の英PMI速報値が注目されるが、4カ月連続で50を下回り、景気後退を示す可能性が高いという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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