ISMが予想下回りドル売り強まる ドル円は一時108円台に下落=NY為替前半
きょうのNY為替市場はドルの戻り売りが優勢となっており、ドル円は一時108円台に下落する場面がみられた。この日発表の4月のISM製造業景気指数を受けてドル売りの反応が強まり、ドル円は一時108.90円近辺まで下落した。ロンドン時間には109.70円近辺まで一時上昇し、110円をうかがう展開も見られていた。
ISM指数は60.7と前回から低下。予想は65.0と強い数字が見込まれていた。詳細を見ると新規受注や雇用が低下したほか、サプライチェーン問題で上昇が続いていた入荷遅延も上げを一服させている。
FRBは先週のFOMCで、インフレ上昇は一時的との見方を変えずに慎重姿勢を強調していたが、今回のISM指数で米製造業の過熱感に一服感が示され、FRBの姿勢を裏付ける内容となった。この発表を受けて米国債利回りも低下しており、米10年債は1.6%を割り込む中で、為替市場はドル売りの反応を見せている。ただ、本日の21日線は108.90円付近に来ており、その水準でサポートされてはいる。ただ。維持できるか注目される。
今週は週末の米雇用統計を始め、重要指標が目白押しとなっている。米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の予想が98万人増と前回よりも強い予想が出ているが、一部からは失業保険のデータから100万人を超えるとの予想も出ているようだ。
ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.2075ドル付近まで一時上昇。先週末は月末要因もあり、ユーロドルは戻り売りが強まり、1.20ドル台前半まで下落していた。しかし、大きな心理的節目となっている1.20ドル台が維持されているほか、本日1.1995ドル付近に来ている21日線も維持されている格好。1.2055ドル付近に来ている100日線も上回り、リバウンドの流れはいまのところ維持されているようだ。
ワクチン展開の進展で世界経済回復への期待が高まる中、ユーロ圏の回復を期待する声も強まっている。回復が勢いを増し、ユーロ圏の各国でワクチン接種が加速するにつれて、ユーロはその魅力を取り戻す可能性があるという。第2四半期のユーロ圏経済はすでに順調なスタートを切っており、ドイツでは先週、ワクチン接種の新記録を樹立し、フランスでも6月までに18歳以上なら誰でもワクチン接種が許可される予定となっている。武器の数が増えれば、ユーロ圏の回復は急速に勢いを増し、ユーロは輝きを取り戻すとの指摘も聞かれる。
ポンドも買い戻しが優勢となり、対ドルでは1.39ドル台を回復。先週末のポンドドルは1.38ドル台前半まで下落し、21日線を下回っていたが、きょうの反転で、その水準はサポートされた格好となっている。1.40ドル台にはなお慎重なものの底堅い動きを続けている。一方、本日のポンドは対ユーロでも買い戻しが優勢となっている。
今週は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されているが、そこで資産購入ペース縮小を打ち出してきるのではとの期待もありポンドをサポートしている。一方で、政治的には不透明感が強まっている。今月のスコットランドの総選挙で独立を問う住民投票の実施を主張するスコットランド国民党が過半数を獲得しそうな勢いだ。また、ここに来てジョンソン首相のスキャンダルが話題を集めている。首相は政治献金で官邸を改修し、それを公表しなかった疑惑がかかっている。選挙管理委員会は「違反があったかを疑う合理的な根拠がある」と強調し、正式に調査に乗り出すと表明した。市場では、危機からの脱出を管理するジョンソン政権の能力を傷つける可能性も指摘されている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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