リスク選好の中、ドル円は106円台を付ける さらに上値を試すか注目の展開=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は上値追いの動きを強め、昨年10月以来の106円台まで上げ幅を拡大した。本日の200日線は105.50円付近に来ているが、その水準を上回る展開。さらに上値を試しに行くか注目の展開が見られているが、過熱感を測るテクニカル指標であるRSIは64付近で推移しており、先々週の104円台半ばまでの下落で過熱感は緩和している。
きょうの市場はリスク選好の雰囲気が広がった。米感染拡大が急速に鈍化する中、大規模な米追加経済対策とワクチン展開が世界的な景気回復へと導くとの期待が高まっている。ロンドン時間までは円安がけん引する形だったが、NY時間に入って、今度はドル買いがけん引。市場では米インフレ期待が高まり、米10年債利回りも昨年3月のピークを上回り1.30%まで一時上昇する中、この日発表のNY連銀景気指数でも仕入価格の上昇が確認されていた。
ユーロドルはロンドン時間に1.2170ドル付近まで上昇していたものの、NY時間にかけて戻り売りが強まり、1.20ドル台に下落する場面もみられた。ただ、1.21ドルちょうど付近に来ている21日線はサポートされている格好。
この日は欧州経済研究センター(ZEW)が2月のドイツ景況感指数を発表していた。期待指数が71.2と予想を大きく上回り、昨年9月以来の高水準に上昇している。ただ、現況指数は前回から1ポイント悪化し、マイナス67.2となっていた。ドイツは3月まで封鎖措置の延長を決めており、第1四半期のドイツGDPはマイナス成長がほぼ確実視されている。ただきょうの指標はドイツ企業が先行きに楽観的であることが示されている。ドイツ経済は6カ月以内に成長軌道に戻ると確信しているとの指摘も出ていた。
一方、きょうはイタリア10年債入札が実施されたが、1100億ユーロ超の入札があり、過去最大の需要となった。本日の入札にはドラギ新首相への市場への期待があらわれたとの見方も多い。同首相のECB総裁時代の危機対応が評価されているようで、イタリア国債の利回りは過去最低水準に低下している。ユーロにとっては懸念の1つだったイタリア政治の混乱が大きく後退。イタリア10年債とドイツ10年債との利回り格差は現在、0.9%程度だが、ドラギ効果で向こう6カ月の間に0.75%まで縮小する可能性も指摘されている。一部からは、ドラギ首相がEU復興基金の取り扱いと構造改革で成功を収めれば、イタリアの政治不信はさらに後退し、利回り格差は2008年以来の0.5%までの縮小も期待されるという。
ポンドは1.39ドルちょうどを挟んで上下動。堅調な動きを続けているポンドだが、市場からは一段高の可能性も指摘される。英国とEUの国境における物流問題が徐々に解消の兆候にあり、貨物輸送などのリアルタイムデータの調査では、先週のフランスから英国への貨物輸送の拒否率は昨年11月最終週以来の低水準に下げた。
物流を巡る問題は残るものの、交通の流れが正常化すれば、英経済への影響は薄れ、英国が追加緩和に踏み切る可能性も低くなると指摘している。目先は1.40ドルの節目を試す展開が見込まれるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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