リスク回避のドル買い優勢 ワクチンの早期開発期待が後退=NY為替概況
きょうのNY為替市場、ドル円は緩やかな買い戻しが見られ、105円台半ばに戻している。東京時間には105円台前半まで下落していた。きょうはリスク回避のドル買いが優勢となっている模様。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がワクチンの臨床試験の中断を発表したことで、ワクチンの早期開発への期待が後退している。また、米追加対策の協議に依然として出口が見えないことも市場のモメンタムを後退させているようだ。
ただ、ドルと円の方向感が同じ中で、ドル円に方向感はない。上値は105.80円の水準が意識され、下値も105円割れを試そうという気配まではないようだ。105円台前半がサポート水準として機能しており、105円台での上下動が続いている状況に変化はない。
このところドル円と米国債利回りの正の相関は小さくなっている。市場では11月3日の大統領選でのバイデン候補の勝利を織り込もうという動きも見られているが、市場からは、民主党が大統領選を勝利し、更に上院も過半数を獲得。ホワイトハウスも議会も席捲した場合、米国債の利回りは上昇すると見られている。民主党は大規模な経済対策を打ち出しており、その分、国債の供給も膨らむとの見通しからだ。
ただ、必ずしも金利水準が構造的に切り上がることには繋がらないとの見方も出ている。景気刺激策の規模や内容が不明なことから財政出動が構造的な金利上昇を確実にするわけではないという。FRBの国債購入はしばらく続くことが予想されており、下支えされていることも市場に安心感を与えているのかもしれない。
ユーロドルは戻り売りが強まっており、一時1.1730ドル付近まで下落。本日の21日線が1.1750ドル付近に来ているが、その水準を下回っており、明日以降の動きが警戒される。
否定的な意見も多いが、市場にはECBの利下げ期待が根強くある。中銀預金金利のマイナスの深堀。ただ、一部からは、現在マイナス0.5%としている預金金利をさらに深堀してもリスク・リワードは見合わず、好ましくないとの意見も出ている。追加利下げによって、リバーサル・レートを不透明にし、認識もしくは実効金利において、ECBの選択肢を狭めるという。ECBは最後の0.1%を使い果たしたと市場が認識してしまった場合、逆にユーロを急上昇させてしまう危険性があるという。
*リバーサル・レート
利下げが、逆に緩和効果を反転させる水準
ポンドは対ドル、対円で一本調子の下げを演じている。ポンドドルは1.29ドル台半ば、ポンド円は136.75円付近まで値を落とす動き。きょうの為替市場はリスク回避のドル買いが優勢となる中で、ポンドも売りに押されている格好だが、英・EUの貿易交渉は依然として難航しており、ジョン英首相が独自に期限として設定している10月15日を今週の木曜日に控える中、合意なき離脱へのリスクも警戒しているようだ。
ジョンソン首相は「合意なしの対EU貿易に恐れることはない」と述べ、バルニエEU首席交渉官は「最終的な詰めに入れるほど進展なかった」と述べていた。英FT紙によると、ジョンソン首相とフォンデアライエン欧州委員長、ミシェルEU大統領が明日、電話で協議する予定となっていると伝えており、その動向が注目される。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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