とれんど捕物帳 年内というのは若干驚きも、上にも行けず下にも行けず
今週のドル円は上にも行けず下にも行けずで110円台での上下動に終始していた。年初にフラッシュ・クラッシュの発生で105円を瞬間的に割り込んだが、それ以降は順調に戻しており、111円台前半に来ている200日線をうかがう展開まで回復している。米中貿易協議への楽観的な期待やFRBの突然の姿勢転換により、株高が誘発されドル円をサポートしている。
米中貿易協議については相変わらず混沌としているが、決裂という最悪の事態は免れそうな気配で、3月からの関税引き上げはひとまず延期というシナリオが有力視されている。中国は米製品の輸入を増やすことには前向きなようだが、本丸の構造改革に関しては消極的なようだ。中国共産党にとって、人民解放軍と伴に中国の国有企業はの力の源泉であり、そう簡単に改革することはできないであろう。個人的に今回はとりあえず、米製品の輸入増で合意し、トランプ大統領も3月1日の関税引き上げの期限を延長したうえで交渉継続といった結果になるのではと予想している。この問題は長期戦だ。
そしてFRBだが、今週は1月開催分のFOMC議事録を公表していた。FOMCメンバーのほぼ全員がバランスシート縮小の年内停止を支持していることが明らかとなっている。ただ、利上げについては、停止の示唆はなく、利上げの可能性も残す内容となった。メンバー内で意見が分かれているらしい。この先の指標次第という雰囲気を残している。ほぼ、市場の見立て通りではあったと思われるが、個人的にはバランスシート縮小停止はあると思っていたが、年内というのは若干驚きではあった。
FRBのバランシートは2月20日時点で、全体では3.95兆ドル、その中で米国債、MBS、僅かだが政府機関債といった保有証券の残高は3.8兆ドルとなっている。現在FRBは、保有証券の償還にともなって帰ってきた元金のうち、最大で月間500億ドルを超える部分だけ再投資にまわしている。要は最大月間で500億ドルは政府などを介して市中から流動性を回収している。米国債が300億ドル、ほぼMBSだが、その他が200億ドルとなっている。
FRBの突如の身の代わり様に市場からは苦言も出ているようだ。「バランスシート正常化の確かな理由を一切示さないまま、正常化のプロセスを切り上げようとしている」といった意見も聞かれる。FRBは世界経済の減速を前面に挙げているが、個人的には昨年末にかけての株急落に“ビビッた”と考えている。特にパウエル議長が12月FOMCでの会見で、「バランスシートは自動操縦(Autopilot)で縮小される」との発言に株式市場が敏感に反応した点が大きかったのかもしれない。ただ、以前も述べた通り、FRBが株主対策に動くことは、道徳的には分からないが、景気対策として理にはかなっているように思われる。実際、パウエル議長が姿勢を転換してから、株式市場はリバウンド相場が続いており、市場の雰囲気も一気に改善している。
こちらの身の変わり様はマッハ級だが、昨年末には超悲観的だったエコノミストの間からも、「今年は乗り切ってしまうのでは?」という今度は超楽観的な見方が増えているようだ。
そんな話はさて置き来週だが、経済指標は少なめだが、米GDP速報値やパウエルFRB議長の議会証言などが予定されている。べトナムで米朝首脳会談もある。パウエルFRB議長の議会証言が、今週の議事録で市場が抱いたイメージから、それ程かけ離れた内容にはならないでろう。
個人的には米GDP速報値に注目したい。政府機関閉鎖の影響で発表が遅れていたが、10-12月(第4四半期)のデータだ。政府機関閉鎖や市場の混乱などもあり、第2、第3四半期yよりは鈍化が見込まれている。ただし、GDPの7割を占める個人消費については力強い内容を見込んでいるようだ。予想範囲内であれば、ポジティブな受け止めも期待したい。
今週の動きを見ると市場は踊り場に来ており、次の材料を待っている雰囲気も出ている。来週のイベントを受けて、ポジティブな雰囲気が広がり、ドル円は200日線を再び試す展開を期待したいところではある。
来週のドル円の予想レンジだが、109.50~112.00円のレンジを想定。スタンスは「やや強気」を継続。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 →(→)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 →(→)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 中立継続
短期 →(→)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 →(↓↓)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下から中立へトレンド変化
短期 ↑(→)
minkabu PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。