為替相場まとめ6月1日から6月5日の週
1日からの週は、ドル円相場が底堅いドル高・円安トレンドのなかで「160円の節目」を巡る攻防が続き、値動きは膠着感が強まった。背景にある最大の要因は、日米欧の絶対的な金利差であり、これが円キャリー取引を強力に下支えした。日本政府が過去最大規模の円買い介入を実施した後も円安観測は揺らがず、市場は一貫してドル円の160円台乗せを試す展開となった。さらに、中東情勢の緊迫化も相場を押し上げた。米国とイランの交渉難航や軍事衝突報道を受けて原油価格が一時97ドル付近まで急騰し、「有事のドル買い」が強まったうえ、日本の貿易赤字拡大懸念を通じて円売り圧力が加速した。一方で、円安基調にブレーキをかけたのが政府・日銀による介入警戒である。高市首相による投機的円売りへの牽制、植田日銀総裁の利上げ示唆、さらには「日銀が6月利上げを検討」との報道が流れるたびに、市場は敏感に反応し、ドル円は159円台前半へ急落する場面を繰り返した。しかし、FRBがウォーシュ新議長のもとでタカ派姿勢を維持し、年内利下げ観測が後退したことに加え、米求人件数の強さが確認されたことで、ドル円の下値は極めて堅く、押し目は即座に買い戻される展開が続いた。欧州通貨では、インフレ高止まりを背景にECBの追加利上げ観測が強まり、ユーロ円が186円台を回復。対ポンドでも英欧中銀の利上げスタンスの差で堅調に推移した。週末の米雇用統計を受けてドル高が強まり、ドル円は一時160.35付近まで上昇。FRBのタカ派姿勢を正当化する内容ではあった。
(1日)
東京市場では、ドル高円安がやや優勢となったが、値幅は限定的だった。ドル円は先週末終値の159.27円前後で開始。米国とイランの暫定合意を巡る修正要求から主張の溝が意識され、原油高を背景に午前中に159.50円まで上昇した。しかし、株高によりリスク警戒が和らぐと159円台後半での買いは慎重になり、午後は159.40円台での揉み合いに終始した。ユーロドルはドル高を受けて1.1642ドルまで下落したが、午後は株高に伴うユーロ円の買い(185.88円まで上昇)に支えられて1.1650ドル台へ買い戻された。ポンドドルも午前中に1.3446ドルまで下落したものの、午後にかけて下げ幅をほぼ解消。対円では午後から円売りが優勢となり、214.79円を付けた。
ロンドン市場では、様子見ムードが広がった。中東情勢を巡り、米国がイランの核放棄を、イランがイスラエルの撤退等を要求して対立が続いており、打開策待ちの膠着状態となった。ドル円は159円台後半での介入警戒感もあって上値が重く、159円台半ばで小動き。NYタイムの米ISM製造業景況指数の発表を控えて模様眺めとなった。ユーロドルは1.16台半ばの狭いレンジ。欧州製造業PMIの改善や、1年後インフレ予測が4.0%となったECB調査への反応は限定的だった。ポンドドルは1.34台後半で振幅。英製造業PMI確報値が53.9へ上方改定されたことでポンド買いが優勢となり、ユーロポンドが軟化したほか、ポンド円は214.88円付近まで買われた。
NY市場は、ドル高が優勢となった。イランが米国との意思伝達を停止したとの報道(トランプ大統領は否定)で、ドル円は一時159.75円付近まで上昇。160円を伺う展開だが介入警戒感も根強い。日銀の6月利上げ確率は80%程度織り込まれているが、FRBのタカ派姿勢(ウォーシュ議長初のFOMCで年内利下げ可能性後退)から、ドル円の下値は堅いとみられている。ユーロドルは一時1.1605ドル付近へ下落。ただ、ECB高官の発言がタカ派的とされ、今月の利上げと年末までの追加利上げ観測から米欧金利差縮小が意識され、ユーロは底堅さも残した。ポンドドルは1.34ドル台半ばへ戻した。英国へのAIやバイオ関連の構造的な海外資金流入がポンドを下支えしている。
(2日)
東京市場で、ドル円は159.60から159.74円のわずか14銭という極めて狭いレンジで揉み合った。中東情勢の警戒によるドル買いが支えとなった一方、160円手前では日本の通貨当局による為替介入への警戒感が強く、上下ともに動きづらい展開となった。午後に入ると、一時1300円超下落していた日経平均が下げ幅を大幅に縮小。韓国株などアジア市場全体で株安が一服したことで、リスク選好の円売りが優勢となった。この株反発を受けてクロス円が上昇。ユーロ円は186.00円手前の売りをこなして186.10円まで上昇し大台を回復。ポンド円も215.32円、豪ドル円も114.66円まで買われた。ユーロドルは1.1652ドル、ポンドドルは1.3482ドルまで値を伸ばした。
ロンドン市場では、円安とドル安が交錯し、ドル円は159円台後半で小幅な値動きにとどまった。原油相場の上昇一服や米債利回りの低下、欧州株の堅調さを受けてドル指数が低下した。しかし、絶対的な金利差や低ボラティリティを背景とした円キャリー取引の根強さから円売りも重なり、ドル円は一時159.75円までじり高となったが介入警戒で上値は限られた。ユーロ圏の5月消費者物価指数(CPI)速報値は前年比+3.2%に加速し、市場のECB6月利上げ観測を後押し。これを受けてユーロ円は一時186円台に乗せた。ポンドドルは1.34台後半で推移。英住宅ローン統計は承認件数が増加したものの金額が減少というねじれた結果となり、ポンドの反応は薄かったが、ポンド円は215円台前半へ上昇した。
NY市場では、米求人件数が予想外に強い内容となり、ドル高からドル円は160円に急接近した。ただし離職率の低下など労働市場の不整合も指摘され、160円台乗せには至らなかった。市場では介入リスクが過小評価されているとの声もあるが、投資家は日銀会合での利上げ効果を見極める構え。ユーロドルは1.16ドル台での重い推移が継続。ユーロ圏のインフレ加速により来週のECB利上げは正当化されたが、ドル高が重石となった。ユーロ円は円安を背景に186円台を回復。ポンドドルは一時1.34ドル台後半へ買い戻されたが後半に伸び悩んだ。ポンド円は215円台半ばまで上昇し、4月末の介入にともなう下げを取り戻したが、英経済や政治リスクからポンドの上値は重いとの見方もある。
(3日)
東京市場は、朝方に有事のドル買いが強まり、ドル円は一時160.00円を付けた。イランが近隣諸国へ弾道ミサイルを発射したとの報道や、米軍がイランの軍事施設を攻撃したとの報道を受け、地政学リスクへの警戒からドルが買われた。しかし、大台を維持する勢いはなく、その後159.82円まで調整した。日経平均が後場に一時2000円を超える急上昇を見せたことでリスク警戒は限定的となり、円売りの動きが下支えした。ユーロドルは有事のドル買いで軟調となったが、1.1600ドルの節目を試すには至らなかった。ユーロ円は朝方に186.04円を付けた後に185.70円台へ小反落。ポンドドルはドル高に押されて1.3437ドルへ下落し、前日強かったポンド円は反動から214.92円まで売りが出た。
ロンドン市場は、根強いドル高のなか、ドル円は神経質に乱高下した。160.00円で上値が阻まれた後、高市首相が投機的な円売りへの対応を明言し介入警戒感が鮮明化。さらに植田日銀総裁が「物価上振れリスクが高まれば利上げを議論」と早期利上げに前向きな姿勢を示したため、ドル円は一時159.37円付近まで急落した。しかし、円キャリー需要や全般的なドル買いに押され、すぐに159.80円付近へ猛反発した。中東情勢の膠着で原油先物が97ドル付近、米10年債利回りが4.485%付近へ上昇しドル買いが優勢に。ユーロドルは1.1605付近、ポンドドルは1.34台前半へ下押し。ユーロ円は185.12付近、ポンド円は214.44付近まで一時急落後、ADP雇用統計などを控えて買い戻された。
NY市場は、ドル高が優勢となるなか、ドル円は再び160円台に上昇した。日本の過去最高額の円買い介入にもかかわらず円安が進む背景には、中東情勢の緊迫による原油高(日本の貿易赤字拡大懸念)や日米金利差がある。植田総裁の利上げ示唆で一時159.30円付近へ下落する場面もあったが、6月利上げが80%超織り込まれても円安抑制効果は少数派とみられ、ドル円の下値は堅い。週末の米雇用統計を控えて膠着気味となった。ユーロドルは、米求人件数やISM非製造業景気指数が予想を上回り、FRBの年内利上げの可能性も浮上したことからドル高が進み、1.15ドル台へ下落。ポンドドルも1.34ドル台前半の200日線まで下落。英中銀の7月利上げ観測はあるが、ポンド円は214円台へ値を落とした。
(4日)
東京市場で、ドル円は午後に一時円高に振れたが、調整は続かなかった。前日に160.09円を付けた後、朝方は160円台の高値圏で推移。イスラエルとレバノンの停戦合意報道によるドル安で159.85円前後へ下落するも、すぐに買い戻された。昼過ぎ、通信社が「日銀が今月利上げを検討、年内追加利上げの可能性も」と報じると、円買いが強まり一時159.61円まで急落。しかし、ここでもすぐに159.90円台に戻すなど、円高方向への調整には極めて慎重な姿勢が示された。ユーロドルは1.15ドル台での売りが慎重となり、ポジション調整から1.1610ドル台へ小幅上昇。ユーロ円は185.37円まで急落後に反発。ポンド円も一時214.37円まで下落したが、すぐに押し目を買い戻された。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢となった。イスラエルとレバノンの停戦合意報道により有事のドル買い圧力が後退し、原油安も加わってユーロドルは1.16台半ば、ポンドドルは1.34台半ばへ上昇し高値を広げた。一方、ドル円は東京午後の日銀利上げ報道による急落(159.61円)からすぐに159.90円付近へ買い戻された後は膠着状態となった。欧州通貨の上昇に伴いクロス円は買われ、ユーロ円は186円目前、ポンド円は215円付近へ上昇。4月のユーロ圏小売売上高が予想を上回り前回値も大幅上方修正されたことで、ECBと英中銀の利上げスタンスの差(ECBの追加利上げ姿勢)が意識され、ユーロ買い・ポンド売りが優勢となった。ポンドドルは1.3450付近まで値を伸ばした。
NY市場では、ドル円は160円付近で膠着し、翌日の米雇用統計を控えて次のアクションを待つ状況となった。中東情勢は流動的だがエスカレートは回避されるとの見方から和平合意への期待がある。再来週の日銀・FRB会合を前に、目先は米雇用統計(非農業部門雇用者数8.5万人増予想)の労働市場データを見極めたい雰囲気。ユーロドルは1.16台半ばから前半へ伸び悩んだ。中東紛争の解決が進まない場合、来週のECB理事会(利上げ想定)を前に1.15ドルまで下落するとの指摘もあるが、ユーロ円は円安が継続し186円台へ上昇、堅調なトレンドを維持した。ポンドドルは政治リスク(18日の補欠選挙)の過小評価が指摘されるなか1.34ドル台前半で推移し、ポンド円は214円台へ伸び悩んだ。
(5日)
東京市場は、小動き。今夜の米雇用統計発表を控えた様子見ムードに加え、米イラン和平協議における資産解除合意の接近報道から週末の状況変化が警戒され、積極的なポジション調整が手控えられて狭いレンジに留まった。ドル円は159.90円から160.04円、ユーロドルは1.1610ドルから1.1619ドルのレンジ。雇用統計は伸び鈍化予想ながらまずまずの水準が見込まれ、ドル買い材料として意識されている。一方、前日海外市場の流れを引き継いだクロス円は、朝方にユーロ円が185.70円、ポンド円が214.59円まで下落してやや上値の重さが意識されたものの、その後は買い戻されてもみ合いに転じるなど、総じて落ち着いた値動き。
ロンドン市場は米雇用統計を控え、短期的なポジション調整からややドル安の推移。ドル円は160円付近で値幅14銭と膠着状態にある。一方、ドル円の静止に伴いクロス円は上昇し、ユーロ円は186円台前半、ポンド円は215円台後半へ高値を伸ばした。ユーロドルは1.16台前半で買い優勢、ポンドドルも1.34台後半へ上昇したが、ユーロ対ポンドではユーロ売りが優勢。この日発表された1-3月期のユーロ圏GDP確報値が前期比-0.2%と、改定値の+0.1%から予想外のマイナスに転じたことが重石となった。従来のECBと英中銀の利上げスタンスの差を背景としたユーロ買いに対し、雇用統計前の調整が入った格好。原油や米10年債利回り動向は落ち着いており、市場は日本時間午後9時30分の指標発表を待ちとなっている。
NY市場は朝方発表の5月の米雇用統計を受けてドル高が強まり、ドル円も一時160.35付近まで上昇。途中に突如売りが出て159.75まで急速に下げたものの、直ぐに160円台に戻す展開。介入かどうかは不明。米雇用統計はFRBのタカ派姿勢を正当化する内容ではあった。米国債利回りも急上昇し、短期金融市場では年内のFRBの利上げ確率を完全に織り込んでいる。米雇用統計を受けて米株式市場に大きく調整売りが強まり、原油相場も90ドルを一時割り込む中、ドル円は160円台に再上昇。来週以降、日本の当局が再び介入を本格化させるか注目される。
執筆者 : MINKABU PRESS
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