パウエル証言にドル売りもドル円は買いの反応=NY為替概況
パウエル証言にドル売りもドル円は買いの反応=NY為替概況
きょうのNY為替市場、パウエルFRB議長の下院での議会証言が行われ、ドル円は買いの反応を見せ、一時142.35円付近まで上昇した。11月以来の高値を更新した。議長は事前原稿で「金利は年末までに幾分高くなると当局者は見ている。インフレを2%に戻すにはまだ長い道のり」と言及していたことで、ドル円は米国債利回りの上昇と伴に買いが強まった格好。一方、議会証言が始まってからは、議員の質問に対して「6月休止とドットプロットの上方修正は完全に一貫している。もっと緩やかなペースで金利を上げるのが理に適っている公算」などと述べていた。
ドル自体は軟調な反応が見られ、対ユーロやポンドでは下落しているものの、対円では上昇。日米の金利差が更に拡大するとの観測がドル円を押し上げている。円相場は今年に入って対ドルで8%近く下落しており、主要通貨中では2番目に低パフォーマンスとなっている。ただ、後半になると米国債利回りも下げに転じたことから、ドル円も141円台に戻している。
ユーロドルはNY時間に入って買いが膨み、1.09ドル台後半に上昇。1.10ドルをうかがう展開を見せている。依然として市場は金融政策に関心が集中する中、ECBとFRBがどこまで金利を引き上げるのかを占っている。ECBについては7月利上げは確実視されている一方、夏休み明けの9月については意見が分かれている状況。
本日はカジミール・スロバキア中銀総裁の発言が伝わっていたが、コアインフレの抑制が確認された場合のみ、利上げを一時停止することができると述べていた。それには、コアインフレが抑制されることを示す高レベルの確証が必要だという。コアインフレが頑固なままであれば、9月にもう一段の引き上げを望む声が優勢になるのは道理だとも述べた。現在のユーロ圏のインフレは、総合指数こそ低下傾向を鮮明にしているが、コアインフレに関しては全く兆候すら見せていない。
そのような中、今後のデータによってユーロドルは変動する可能性があるとの指摘が出ている。インフレ動向や労働市場に関するデータが発表される数週間後に変動の可能性があるという。ECBとFRBはコアインフレと景気の先行き不透明感から、ターミナルレート(最終到達点)を決定することが難しくなっているという。そのため、両中銀がデータを注視する姿勢を強める中、サプライズがあればこれまで以上に敏感に反応するという。
ポンドドルはNY時間にかけて買戻しの動きが出ており、1.27ドル台後半まで戻している。ロンドン時間には一時1.26ドル台まで下落する場面が見られた。ポンドドルは次第に上値が重くなって来ている印象だが、この日発表の英消費者物価指数(CPI)は予想を上回り、英中銀の利上げ期待を強化する内容となった。
英CPIを受けて短期金融市場では、年内に英中銀が6.00%まで金利を引き上げるとの見方をかなりの確率で織り込んでいる。英中銀金融政策委員会(MPC)は明日を含めて年内はあと5回だが、現行の4.50%から6.00%に到達するにはどこかで0.50%ポイントの大幅利上げを実施しなければならない計算となる。
ただ、ポンドの反応は逆。発表直後こそ買いの反応を見せたものの、直ぐに売りに押されている。英インフレ上昇と英中銀の利上げが経済に打撃を与えかねないとの解釈が出ているようだ。追加利上げの可能性は経済活動を阻害し、最終的には景気後退を引き起こし、ポンド安をもたらすという。
明日のMPCに関しては0.25%ポイントの利上げが依然として有力視されているが、大幅利上げのリスクは小さいものの、可能性はないとは言えないとの指摘も出ている。
英消費者物価指数(5月)21日15:00
結果 0.7%
予想 0.4% 前回 1.2%(前月比)
結果 8.7%
予想 8.4% 前回 8.7%(前年比)
結果 7.1%
予想 6.7% 前回 6.8%(コア・前年比)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。