ドル買い優勢の中、ドル円は138円台に上げ幅拡大 6月の米利上げ確率上昇=NY為替概況
ドル買い優勢の中、ドル円は138円台に上げ幅拡大 6月の米利上げ確率上昇=NY為替概況
きょうも為替市場はドル買いが優勢となる中、ドル円は138円台に上げ幅を拡大した。200日線を上放れし、上値追いのムードを高めている状況だが、140円を視野に入れた動きになるか注目される。朝方は強い上値抵抗が観測されていた138円ちょうどの水準に慎重さも見られていたものの、この日発表の米経済指標が予想を上回ったほか、ローガン・ダラス連銀総裁の発言を受けて短期金融市場で6月の米利上げ確率が上昇し、ドル円は上げ幅を伸ばした。総裁は「まだ利上げ停止の論拠が見当たらない」と述べていた。
米債務上限問題に関しては何も具体的な進展は伝わっていない。しかし、市場は楽観的なムードが広がっている。その点はリスク選好の円安材料。
一方、ここ数カ月、市場は年内利下げ期待を高め、FRBのタカ派姿勢に抵抗してきたが、直近の経済指標に力強い内容が相次いでおり、FOMC委員からの発言も、追加利上げまでは強調していないものの、タカ派姿勢を温存している。市場では警戒されているリセッション(景気後退)はないのではとの楽観的な期待も高まっており、年内利下げ期待をやや後退させている。その点はドル高材料となっている。
ドル買い・円安の二重の追い風の中で、ドル円はしばらく上値を試すのではとの期待に繋がっている模様。
ユーロドルは重要なサポート水準である1.08ドルをブレイク。一時1.0765ドル付近まで下落し、本日1.0805ドル付近に来ている100日線を下回った。
市場からは、製造業への逆風が欧州の景気回復にブレーキをかける可能性があるとの指摘が出ている。ドイツのZEW調査や仏中銀が発表した最新の調査は、イタリアとドイツを中心に3月の鉱工業生産が大きく落ち込んだ後、製造業の暗い見通しを反映しているという。
サプライチェーンの混乱緩和による下支え効果はすでに薄れ、ドイツでは来年末まで生産が停滞すると予測。欧州経済は逆風に対する回復力を示し、ユーロ圏の上位4カ国と英国は第1四半期に成長したが、英国とドイツは僅かな伸びに留まっており、これは暗い話題だとも付け加えた。
ポンドドルは一時1.23ドル台に下落。21日線を下放れる展開となっており、下値警戒感が高まっている。きょうはベイリー英中銀総裁などの英中銀委員の議会証言が行われていたが、バランスシート縮小のペースを速める可能性が高いことを示唆していた。英中銀は現在、量的引き締め(QT)を四半期当たり約200億ポンドのペースで進めている。満期償還金を再投資しないほか、保有資産の売却も積極的に行っている。
来週は4月の英消費者物価指数(CPI)の発表が注目されるが、前年比で2桁の上昇を示していた総合インフレは8%台への鈍化が見込まれている。特にエネルギー価格が前年4月の急上昇によるベース効果で、数字を押し下げると見込まれているようだ。昨年4月の英国の電気ガス料金は47.5%上昇していた。昨年の英公共料金は政府による上限価格設定の四半期ごとの調整を受けて、7月と10月にも上昇し、それに伴うベース効果が今後も出ることが予想されるという。
その他、食品価格の上昇ペースは5月以降、より緩やかになると考えられるという。4月の総合インフレは3月の前年比10.1%から8.2%に、コアインフレはほぼ横ばいの6.1%が見込まれ、英中銀は6月の0.25%ポイントの利上げを最後に利上げを停止する根拠になるとの指摘も出ている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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