ドル円は買い戻し優勢 金融不安をきっかけに逃避通貨としての円を見直す動きも=NY為替概況
きょうのドル円は買い戻しが優勢となり、132円台後半まで上昇した。ドルの売り圧力は一服しているものの、それ以上に円売り圧力がドル円を下支えしているようだ。また、月末、期末、日本の年度末の接近ということもあり、実需の買いも出ていた模様。金融不安がひとまず一服していることもあり、リスク選好の円売りを指摘する向きもいる。
FRBの利上げサイクルもメドが見え始めている中、このところ市場では、金融不安をきっかけに逃避通貨としての円を見直す動きが復活している。ただし、今後のシナリオはリスク回避の円高と見ている向きが多いようだ。120円との声も上がっている。今回の金融不安の台頭で、今後米銀を始めとした各国の金融機関が融資を厳格化してくることが想定され、景気の下振れリスクが高まるのではとの警戒感が広がっている。それに米株式市場などが敏感に反応すれば、リスク回避の円高に結び付きやすいという。
その場合、市場が期待している日銀の出口戦略も想定ほど進まない可能性もあるが、市場は金利よりもむしろ、成長リスクに趣きを置いた取引に移行する可能性が留意されるとしている。
ユーロドルは1.08ドル台前半に値を落としている。しかし、上昇トレンドは維持しており、年初来高値の1.10ドル台を目指す展開は継続。先日のECB理事会では0.50%ポイントの大幅利上げは実施したものの、ガイダンスからは次回以降の利上げ示唆の言及は削除された。今回の銀行危機に配慮したものだが、その後のECB理事の発言からは追加利上げを志向していることがうかがえる。
ECBは今回の銀行の混乱と金融政策を切り離すことに重点を置いている。もし、ユーロ圏の銀行が流動性不足に直面した場合、まずは緊急流動性支援(ELA)に傾注し、その後はFRBの動きを真似る可能性があると考えられている。金融緩和は最後の手段と見られているようだ。
ELAは流動性不足に直面している固有の銀行を対象に提供され、金融政策スタンスには影響を与えないようにするという。その後、FRBが新しく設定した銀行定期資金調達プログラム(BTFP)のような手段で対応。それは国債価格下落に起因する担保不足に対応したツール。最終手段として利下げが行われ、資産購入は恐らくそのあとになるという。
ポンドドルは1.23ドル台前半に上げが一服。しかし、市場の想定よりも英中銀の利上げが長引くのではとの見方から、ポンドが堅調に推移していることに変わりはない。英中銀は昨年12月から利上げを開始し、先週の利上げまで計4%以上急激に政策金利を引き上げてきた。
それに伴い英住宅ローン金利も急上昇したが、それが引き続き英住宅市場に重くのしかかっている。本日発表の2月の個人向けの英住宅ローン貸付の月間増加額は7億ポンドと前回の20億ポンドから急減し、パンデミック期を除けば2016年4月以来の最低額となった。一方、住宅ローンの承認件数は6カ月ぶりに上昇したものの、4万3500件とパンデミック前の水準を35%ほど下回る水準に留まっている。
今回のデータは銀行セクターの混乱を前にしたものだが、その後、英銀行は融資条件をさらに引き締めているとも言われている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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