全体的に様子見の雰囲気強い パウエル議長からの言及はなし=NY為替概況
きょうのNY為替市場は序盤にドル買い戻しの動きが見られ、ドル円も132円台半ばまで上昇する場面が見られた。市場では先週末の米経済指標を受けてFRBの利上げペースが緩むのではとの期待が出ており、為替市場ではドル売りの流れが強まっている。短期金融市場では次回のFOMCでの利上げは0.25%ポイントとの見方を強めている。
しかし、今週に入って伝わっている米地区連銀総裁などFOMC委員の発言はこれまでのタカ派姿勢を維持する内容が多い。そのような中で市場はパウエルFRB議長が本日の講演でタカ派な言及をするのではと警戒していた。しかし、議長は経済や政策の見通しについての直接の言及をしなかったことからドルは上げを戻している。
ただ、全体的には様子見の雰囲気も強い。市場は木曜日の米消費者物価指数(CPI)の結果待っている。市場の期待通りにインフレの鈍化傾向を引き続き示すようであれば、ドル売りの流れが加速する可能性もありそうだ。同時に米株式市場がポジティブな反応を示せば、リスク選好の円安も期待されるが、ドル円は130円割れを試すとの指摘も出ている。
きょうのユーロドルは上げが一服しているものの、1.07ドル台でのしっかりとした値動きが続いており、リバウンド相場の流れが続いている。昨年末まではユーロに悲観的な見方も多かったが、想定外の暖冬と天然ガス価格の下落がその見方を逆転させているようだ。
米大手銀からは、もはやユーロ圏のリセッション(景気後退)を予想していないとの声も出ている。昨年終盤の経済が予想以上に底堅く、天然ガス価格も大きく下落し、中国がゼロコロナ政策を予想外に早く撤廃したことが見通し改善につながったという。今年のユーロ圏GDPをプラス0.6%と予想。従来はマイナス0.1%を見込んでいた。
エネルギー危機を背景に冬季の低成長を予想していたものの、総合インフレはこれまでの想定よりも早期に低下し、23年末までに約3.25%に鈍化すると見積もった。モノの値上がりが落ち着くことからコアインフレも次第に低下するとみているものの、労働コスト上昇によるサービス価格への押し上げ圧力は続くとみられると説明。
ただ、2月と3月のECB理事会での0.50%ポイント利上げ、5月の0.25%ポイント利上げで中銀預金金利が3.25%に達するとの見通しは据え置いた。5月の利上げが最後になるとみているようだ。
ポンドドルは1.21ドル台半ばでの推移。米株式市場が今年に入ってからの買い戻しの流れを維持していることから、景気に敏感なポンドも買いの流れを維持している。本日の21日線は1.2110ドル付近に来ているが、その水準の上をいまのところ堅持している状況。
一方、ポンドに対する慎重な見方も根強い。今年も英政治が熱狂的な状態にある可能性が高く、海外投資家は株式やポンドを含む英資産を避ける可能性があるとの指摘が出ている。首相が再び交代する可能性は低いが、その可能性が全くないというわけではないという。
スナク首相は数多くの課題に直面しており、分裂し反発を強めている政党で困難で論争的な法案を通すことは困難であり、市場は、首相交代あるいは選挙リスクを過小評価しているように思われるという。そのような中、英資産、特に株式とポンドは他に比べてアンダーパフォームで取引され続ける可能性が高いとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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