米雇用指標が底堅さを示し、ドル円は一時134円台 利下げは正当化できない=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル買いが強まり、ドル円は一時134円台まで買い戻された。本日の21日線が134.10円付近に来ており、目先の上値メドとして意識される。この日発表の2つの米雇用指標がともに米労働市場の底堅さ示したことがドルの買い戻しを誘発したようだ。
12月のADP雇用統計は23.5万人増と予想(15万人増)を上回ったほか、12月最終週の米新規失業保険申請件数も20.4万人と9月下旬以来の低水準となった。景気後退への懸念があるにもかかわらず、労働需要は供給を遥かに上回り、賃金も上昇圧力が続き、消費者は消費余力がある。また、解雇率も極めて低く、求人倍率も上昇。
明日は12月の米雇用統計が発表されるが、非農業部門雇用者数(NFP)は20万人増、民間部門雇用者数は18.3万人増が見込まれている。失業率も3.7%と歴史的な低水準に留まるとみられている。
インフレはピークの兆候も見せ始めているが、労働市場が底堅い場合、インフレが思ったほど鈍化せずに、FRBの引き締め政策も長期化の可能性が高まる。FRBは否定しているが、市場は早ければ今年中にもFRBは利下げに移行するとの観測が出ている。それは雇用情勢次第といった面も大きそうだが、少なくとも今回の数字からは、市場の期待は正当化されそうにはないようだ。
ユーロドルは1.05ドル台前半に下落。21日線を下回る動きが見られており、明日の米雇用統計を受けて下げを加速させるか注目される。
ただ、今年前半はECBの引き締めに焦点が当たり、ユーロが上昇する可能性が指摘されている。リスク選好の高まり、エネルギー価格の下落、ウクライナ紛争の沈静化により、市場はECBの引き締めに焦点をより当てるようになり、ユーロは今年前半に上昇する可能性があるという。
12月FOMCで公表したFRBの経済見通しからは、米インフレはECBのユーロ圏のインフレ見通しよりも遥かに速く鈍化を予想している。従ってECBは積極利上げの実施が予想され、その利上げサイクルはFRBよりも長くる可能性があるという。1月の季節性がユーロドルのスロースタートを示唆するとしても、春に向けて上昇は加速すると見ているようだ。
ポンドドルは1.18ドル台まで一時下げ幅を拡大。200日線を下放れる展開が見られており、明日以降の動きが警戒される。
市場からは、英経済のファンダメンタルズが厳しいため、英中銀は今年中に利下げを実施するとの観測が出ている。そのため、ポンドが弱含みに推移する可能性があるとの指摘も出ている。
労働市場のひっ迫から、英中銀がタカ派トーンを強める正当な理由があるとしても、昨年は設備投資の伸び悩みや生産性の低さ、EU離脱の不確実性の継続を背景にポンドを押し上げることができなかった事例が多々あるとも指摘した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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