株安でリスク回避のドル買い 円高への期待が高くドル円の戻りは鈍い=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル買いが優勢となり、ドル円は132円台に戻している。この日発表の第3四半期の米GDP確報値が上方修正されたことや、米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことをきっけにドル買いの反応を見せた。また、米株式市場に再び売りが強まっており、ダウ平均が一時800ドル超下落する中、リスク回避のドル買いも見られた。
ただ、ドル円は日銀サプライズによる急落からの買い戻しが出ているものの、急落の割には戻りが鈍い印象もある。クリスマス休暇を前に市場参加者も少なくなる中、市場のモメンタムは低下しているようだ。
日銀が10年物国債利回りの許容変動幅を上下0.50%に拡大するという想定外の動きに出たことを受け、市場では来年の円高への期待が高まっている。中にはドル円は120円割れも有り得るとの見方も出ている。オプション市場では今後3月間にドル円は122円台半ばまで急速に下落し、その後も緩やかに118円台半ばまで円高が進むシナリオを織り込む動きも出ている。
今回の動きは日銀の正常化プロセスの小さな一歩に過ぎず、来年も緩和解除を進めてくるとの見方が有力視されている。一方でFRBやECBなどはまだタカ派姿勢を堅持しているものの、今年の積極利上げでターミナルレート(最終到達点)が見えてきた感もある。日銀はまだ始まったばかりで、まだまだ引き締め余力があると見ているようだ。
しかし、来年は世界的なリセッション(景気後退)が警戒される中で、日銀がどこまで緩和を解除できるかは未知数。思ったほど他国との金融格差は縮小しない可能性は留意する必要がありそうだ。一方、景気後退によるリスクが高まりが、従来のリスク回避の円買いを復活させる可能性も考えられなくはない。
ユーロドルは1.05ドル台に値を落としたものの、下値を積極的に試す動きまでは見られてない。次第に上値は重くなっている雰囲気はあるが、本日1.0525ドル付近に来ている21日線の上はしっかりと堅持しており、リバウンド相場を維持している。
先週のECB理事会は市場の想定以上にECBはタカ派姿勢に傾いていることが示された。ラガルド総裁は2月と3月の理事会でも0.50%ポイントの利上げも有り得ると言及していた。これらを受けて市場の見方も修正が相次いでいるが、いまのところ、来年の上半期までに計1.25%ポイントの利上げ予想が比較的多いようだ。その場合、中銀預金金利のターミナルレート(最終到達点)は3.25%になる。
ただし、物価と賃金のスパイラルが進行しないこと、半面、冬のリセッション(景気後退)が予想外に加速しないことが前提条件となっているようだ。
ポンドドルは瞬間的に1.20ドルを割り込む動きが見られた。きょうの下げで1.2080ドル付近に来ている200日線を下回る動きが見られており、明日以降の動きが警戒される。
ポンドや英国債、その他の英資産は魅力的なしとの指摘も出ている。高水準の政府債務、厳しい経済見通し、そのほか、EU離脱の影響を考慮すると、ポンドや英国債などの英資産はあまり魅力的ではないという。
高水準の政府債務を減らすには、緊縮財政や経済成長による歳入増などの様々な対策があるが、英国は社会保障制度や医療制度に問題を抱えており、緊縮財政は痛みを伴う上、成長の見通しも弱くなる。また、EU離脱が間違っていたという印象もすぐには変わりそうもないとも指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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