ドル円はロング勢の見切り加速 戦略見直し発表もユーロは反応薄=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は一本調子の下げを演じ、109.60円近辺まで下げる場面もみられた。心理的節目の110円を割り込み、ロング勢の見切り売りが加速した模様。前日までは、米国債利回りは急低下しているものの、米株式市場の底堅さがドル円の下値をサポートしていたが、本日はダウ平均が一時500ドル超下落するなど、その支えが無くなった格好となっている。きょうの下げで21日線を大きく下放れる展開が見られ、テクニカル的にも上値期待は大きく後退しているようだ。
FRBはややタカ派な方向に転じているものの、出口戦略は予想以上に緩やかなものになるとの見方が有力になりつつある。それでもECBや日銀よりは早く緩和解除が期待されることから、ドルは来年にかけて上昇との見方の一方、上げは控えめに留まるという。FRBの正常化はECBや日銀よりは早いものの、英中銀やカナダ中銀など他の多くの中銀よりは遅れるとみられている。一方、景気回復の勢いを示す指標はユーロを支持していることから、大幅なドル高は起こりそうにないという。
ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.1870ドル近辺まで買い戻される場面もみられた。前日は1.17ドル台まで下落していたが、押し目買いが入った模様。この日はECBが戦略見直しの結果を公表していたが、事前に予想されていた内容と一致したこともあり、「ニュースで売って事実で買う」動きとなったのかもしれない。
そのECBの戦略見直しだが、7月22日の理事会から適用されるという。9月と見られていただけに予想以上に早い適用。政策に気候変動を加味するとしたほか、再注目のインフレ目標については、上下に幅を持たせるシメントリックな2%の中期インフレ目標に変更された。必要に応じてインフレのオーバーシュートを容認し、柔軟性を持たせた格好。従来は「中期的に2%弱かそれに近い水準」という曖昧な目標だった。シメントリックな中期インフレ目標はバイトマン独連銀総裁も賛同していた目標でもある。ただ、前日に既に観測報道が伝わっていたことや、事前の予想通りでもあり、それ自体へのユーロの反応は限定的となった。市場からは、目先は金融政策への直接的な影響は少ないが、政策がより長く緩くなることを意味する可能性もあり、ユーロを圧迫するとの指摘も出ている。
若干の驚きだったのが、持ち家のコストもインフレ判断に考慮することを推奨していた点。通常の家賃の上下動に依存する指標だが、ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)の場合、算出に帰属家賃は含まれていない。いずれにしろ、予想通りの内容でサプライズは無かった。
ポンドドルは下げこそ一服しているものの、1.37ドル台で推移しており、上値の重い展開が続いている。ポンドは対ユーロや円でも下落し、ポンド円は150円台まで下落する場面がみられた。100日線を下回っており、明日以降の動きが警戒される。
ポンドを圧迫している要因は、FRBがタカ派にややシフトした一方で、英中銀は依然としてハト派姿勢を堅持していることが挙げられる。市場は22年夏に0.1%で利上げを開始し、23年3月に0.25%の追加利上げを予測している。しかし、現在の楽観的な見方の後退が続くと、利上げ開始は先送りになるリスクもありそうだ。ジョンソン英首相は7月19日に制限措置の全面解除を計画しているが、その場合、感染が増える可能性があるとも警告しており、投資家も依然としてポンドには慎重姿勢のようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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