為替相場まとめ8月31日から9月4日の週
31日からの週は、ドル買いが優勢だった。前の週はジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演で、新戦略として雇用の重視、インフレ2%目標を超える状況の容認などへの姿勢の変化が示された。市場でのドル安の流れを確固たるものとしていた。今週も前半はドル安の動きが強まり、ユーロドルは重要な心理的水準「1.20」を一時上回った。この動きが市場に達成感を広げ、ユーロドルは反落。レーンECB理事が「ECBは為替レートを目標にしていないが、ユーロドルのレートは重要問題」と述べたことがユーロ高に対するけん制との見方を広げた。ユーロドルは1.17台まで下落する場面があった。この動きがドル相場全体にドル安の巻き返しにつながった。ポンドドルにとっては英中銀総裁が「マイナス金利を採用する計画はないが、選択肢としては残している」としたことを売り材料とする見方もあった。豪ドルなど資源国通貨にとってはドル高とともに原油相場が下落したことが重石。中国との摩擦も悪材料に。ドル円は106円台へとじり高の動き。安倍辞任ショックによる下落の動きを戻している。菅官房長官が次期総裁選を制するとの見方が広がっており、アベノミクス継承、前進への期待が加わった。週末の米雇用統計が失業率が大きく低下、再びドル買いの反応が広がった。為替市場にはドル安の流れに調整が入ったが、株式市場でも米IT関連株に利益確定売りが強まるなど全般に調整色の強い一週間だった。
(31日)
東京市場は、ドル円が振幅。前週末の安倍辞任ショックで107円手前から105円台前半まで大幅下落となったあと、週明け早朝には105円台後半へと反発。週末の報道で菅官房長官が出馬の意向を示したことで、政治空白やアベノミクス終焉などの懸念が後退した。しかし、総じてドル安の圧力が強く上値を抑えられて105円台前半から半ばの水準へと押し戻された。ユーロドルは朝方に1.1930近辺と、前週末から一段高となったが、その後は1.19台割れまで反落。ただ、前週末水準はサポートされており、ドル安の流れは維持された。豪ドル/ドルは0.73台後半から半ばでの振幅。米中関係の緊張に加え、豪中関係の緊張が重石となっていた。豪ドルにはあすの豪中銀理事会、明後日の豪GDPなどを前にした調整売りもあったようだ。
ロンドン市場は、円売りが優勢になっている。週明けの米株先物が時間外取引で堅調なこと受けて、欧州株も買われている。NY原油先物も高値を伸ばす動き。全般にリスク動向が良好なことが背景。また、一部では日本の政局安定への期待もあるようだ。先週末は安倍首相が電撃的に辞任を表明し、安倍ショックともいえる円高の動きをもたらしていた。しかし、週明けには菅官房長官を支持する動きが自民党内で有力となってきており、総裁選びの混乱が回避される期待もでてきているようだ。安倍ショック相場の巻き返しの面も指摘されている。ドル円は105円台での振幅を経て、ロンドン時間には高値を伸ばし、106円に接近している。クロス円ではユーロ円が126円台前半へ、豪ドル円が78円近辺へと高値を伸ばしている。ポンド円はやや上値が重いが、141円付近へと水準を上げている。ドル相場は方向性に欠けている。ドル指数は前週末付近での上下動となっている。
NY市場で、ドル円は一時106円台を回復。ロンドン市場での上昇の流れを受けて、NY序盤には106.10近辺まで高値を伸ばした。日本株が反発したことや、安倍首相の後任として菅官房長官が支持を集めているといった報道が流れており、アベノミクス路線に変更はないとの見方があった。しかし、全般的にはドル安圧力が根強く、取引後半には105円台後半へと押し戻された。ユーロドルは上向きのトレンドが持続し、1.19台半ばまで上げ幅を拡大した。大きな心理的節目である1.20をうかがう展開となって来た。しかし、1.20水準を越えるようだと、ECBのけん制が入るとの指摘も多い。ポンドドルは1.33台後半へと上昇。昨年12月以来の高水準となった。英国とEUとの通商交渉が前進を見せないなかで、ポンドの高値警戒感も聞かれた。
(1日)
東京市場は、ドルが全面安となった。ドル円は朝方に106.03レベルまで一時上昇した。しかし、前日の海外市場と同様に106円台では一段の買いに慎重な姿勢がみられ、その後は調整が入った。ユーロドルが堅調。8月18日高値1.1966レベルをあっさりと上抜けると、一時1.1990台と心理的に大きな節目となる1.2000レベルに迫った。ドル円もドル安圧力を受けて105.60台まで反落した。豪中銀は政策金利の据え置きを決定。タームファンディングファシリティについては、条件を変更することによる規模の拡大と、期間の延長を決定する追加緩和措置を発表した。ただ、豪ドル/ドルはドル安の流れのなかで0.74付近に高止まりした。ドルカナダも1.3000に迫る動き、年初来安値圏での推移。
ロンドン市場は、ドル安の流れ継続も、やや調整の動き。ユーロドルは1.1997レベルまでの上昇にとどまった。ロンドン序盤にも再度上値を試したが高値に並ぶと売りに押された。下押しは1.1960近辺まで。ドル円は東京で105.60レベル、ロンドン序盤に105.59レベルまで下押しされたが、その後は105.90近辺まで反発。ただ、106円台には届かず上値は引き続き重い。ドル安進行が目立ったのがポンドドルで、1.34近辺での揉み合いから再び買われると1.3480近辺へと高値を伸ばした。この日発表された独仏ユーロ圏の製造業PMI確報値は改善した。独失業者数は予想以上に減少した。ただ、8月ユーロ圏消費者物価指数は前年比-0.2%と予想外の落ち込み。英PMI確報値はわずかに下方修正された。休場明けの英株が下落したほかは、欧州株や米株先物は堅調さを維持。原油先物も上昇するなどリスク動向は安定している。
NY市場では、ドルの買い戻しが強まった。ユーロドルは序盤に1.2011レベルまで上昇したが、すぐに戻り売りに押されて1.19ちょうど付近まで反落。ユーロロングの過剰な積み上がりが指摘される中で、1.20台はひとまず達成感があったようだ。この日の米ISM製造業景気指数が好調だったこともドル買いのきっかけとなった。レーンECB専務理事は「ECBは為替レートを目標にしていないが、ユーロドルのレートは重要問題」と述べており、ユーロ高けん制との見方も広がった。ポンドドルも1.3480近辺まで上昇し、昨年12月以来の高水準となったが、その後は戻り売りが強まって1.33台へと反落した。ドル円は一時106.15近辺まで上昇する場面があった。ただ、106円台では売りも交錯している。
(2日)
東京市場で、ドル円は106円を中心とした推移。朝方には105.85近辺まで下押しも、すぐに値を戻して106.10台まで買われた。前日NY高値には届かず、その後は106円付近での揉み合いとなった。ユーロドルは前日に一時1.20台をつけたが、その後は売りに押されている。東京市場では1.19台を割り込む場面があった。ただ、その後は1.1900を中心に推移している。この日発表された第2四半期の豪州GDPは前期比-7.0%と予想を超える悪化となった。2四半期連続のマイナス成長でテクニカルリセッションに陥った。豪ドル/ドルは0.7336レベルまで安値を広げた。その後は0.73台半ばに落ち着いた。
ロンドン市場は、ドル買いが再燃している。ユーロドルの下落が目立っており、1.1850近辺へと下押しされている。前日には一時1.20台に乗せたものの、一気に売り戻された経緯がある。節目水準の到達した達成感やECB理事のユーロ高けん制発言に反応していた。また、強い米指標がドルの買い戻しにつながったとの見方もあった。ポンドドルもロンドン序盤に1.33台前半へと一段安になった。ただ、対ユーロや対円での買い戻しが入り、下げ足は鈍っている。ユーロ円が126円割れ水準で戻り鈍く推移する一方、ポンド円は141円台前半まで下落したあとは142円手前まで買い戻されている。このあと、英中銀総裁などが議会証言を行う。為替動向に対するコメントには注意したいところ。ドル円は106円台乗せから高値を106.23レベルまで伸ばした。総じてドル買い優勢であることに加えて、菅官房長官が正式に総裁選出馬を表明、アベノミクスや日銀との関係を継承し、前に進めるとしたことが円売りを誘った面もあったようだ。
NY市場は、ドル買いが優勢。全体にポジション調整の動きが広がっている。ドル円は一時106.30近辺まで上昇。ただ、ユーロ円やポンド円は下落するなど円高の動きもみられ、ドル円の上値を抑えた。ユーロドルは前日の1.20到達以降の売りが継続、1.18台前半まで一時下落した。21日線を割り込む場面があった。ECB理事のユーロ相場に関する言及を気にする面もあったようだ。ポンドドルは1.32台に一時下落した。きょうはベイリー英中銀総裁を始めとした英中銀理事の議会証言が行われていたが、ベイリー総裁が「見通しの不確実性はかつてないほど高い」と述べていたほか、ラムスデン副総裁が、「必要なら資産購入ペースの大幅拡大も可能」と述べたことにも敏感に反応していた。朝方に8月のADP雇用統計が発表になっていたが、雇用増加数は42.8万人と予想を大きく下回った。感染第2波が拡大する中で企業が採用に慎重になっている気配もうかがえる。雇用回復に減速傾向が見られる中で、週末の米雇用統計に暗雲が立ち込める内容ではある。
(3日)
東京市場は、落ち着いた値動き。ドル円は前日海外市場の動きを受けて106円台前半での取引。そのなかで一時106.34レベルと前日高値を更新したが、そこまでの上昇にとどまった。ユーロドルはドル買いの動きが優勢。午後に入ってからは1.1800レベルを割り込む動きとなった。今週に入って1.20を一時超えたことで一服感が出ている。一昨日レーンECB専務理事兼チーフエコノミストがユーロドルの上昇を警戒する発言を行ったことで、市場にユーロ買いに対する警戒感が出ている面も。
ロンドン市場は、ドル買いの流れが継続。ドル円は106円台前半での揉み合いから106円台半ばへ向けて上抜けした。ユーロドルは序盤に1.18台割れと一段安になったあとは1.18台で下げ一服。ただ、全般にドル買い優勢となる中で上値は重い。ポンドドルは1.33を挟んだ上下動を経て、1.32台半ばへと一段安に。豪ドル/ドルも0.73台割れへと水準を下げている。ユーロは対円や対ポンドで買い戻しの動きが入った。あすの米雇用統計を控えて調整が入る面も。ユーロ圏と英国の8月非製造業PMI確報値は、ユーロ圏が上方改定、英国が下方改定された。ただ、英国の数字は依然として過去最高水準であり、下方改定のインパクトは小さかったようだ。8月ユーロ圏小売売上高が前月比-1.3%と予想外の落ち込みを示したが、ユーロは底堅く推移している。
NY市場で、ドル円は反落。106円台半ばをつけたあとは106円近辺まで反落した。米株式市場がIT・ハイテク株中心に調整色を強め、ダウ平均が一時1000ドル超下落する中で、ドル円はリスク回避の円買いに押された。ただ、106円台割れには至らなかった。ユーロドルはロンドン朝方に1.17台まで下落していたが、NY時間には1.18台後半まで買い戻されている。市場では、ECBの口先介入が今後も続いたとしても、基本的なユーロ買い・ドル売りの流れに変化はないとの見方がでていた。ユーロ圏と米国の実質ベースの利回り格差が縮小し、ユーロを有利にし続ける限り、ECBが流れを反転させられる余地は小さいという。一方、ポンドドルも下げを一服させたものの、1.32台後半と本日の安値圏での推移が続いた。市場の一部では、英中銀がマイナス金利を採用するのではとの憶測が再び出ている。ベイリー英中銀総裁がきのうの議会証言で、「マイナス金利を採用する計画はないが、選択肢としては残している」と繰り返し言及していた。
(4日)
東京市場は、小動き。米雇用統計の発表を控えて様子見ムードが広がっている。ドル円は106円台前半の狭いレンジで揉み合いとなった。ユーロドルは前日NY終値の1.18台半ば付近での揉み合いに終始した。積極的な売買は避けられていた。ユーロ円は朝方に前日の米株大幅安を受けた警戒感で、125.50台まで軟化したがその後は105.80前後へと戻している。日経平均は寄り付く直後の安値をつけたあとはマイナス圏で売買が交錯、260円安で取引を終えた。
ロンドン市場は、やや円安の動き。前日の米株の大幅安を受けて欧州株も売りが先行したが、すぐにプラス圏に転じている。為替市場では米雇用統計の発表を控えて様子見ムードが広がるなかで、やや円安の動きが優勢になっている。ドル円は106円台円半での揉み合い。一時106.25レベルまで上昇も、上値追いの動きは限定的。ユーロ円は125円台後半での振幅。ポンドねンは140円台後半から141円台半ばを試したが、上値重く141円近辺へと戻している。ドル相場はややドル安の動きだが、ユーロドルは1.18台円前半から後半で、ポンドドルは1.32台後半から1.33台前半で振幅後はレンジ中ほどに落ち着いている。この日発表されてドイツと英国の8月建設業PMIはいずれも予想に届かず。回復の勢いは弱まっている。英中銀委員が追加緩和の可能性を指摘したが、ポンド売りの反応はレンジ内に収まっていた。
NY市場はドル買い戻しの動きが優勢となり、ドル円は底堅い動きを続けている。前日に引き続き106.50付近まで一時上昇。一方、ドル円の上値は重い印象。クロス円が下落するなど、円高が上値を圧迫している。米株式市場がきのうに引き続きIT・ハイテク株を中心に調整色を強め、ダウ平均は一時500ドル超急落した。そのような中でリスク回避の円高・ドル高の動きが見られ、ドル円は106円台で水準を保っている状況。
執筆者 : MINKABU PRESS
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