とれんど捕物帳 外貨準備の「ドル離れ」も指摘される

為替 

 先週末に急上昇し、流れが変わったにも思えたドル円だが、今週の動きを見た限りにおいては、なお上値は重いようだ。株式市場はなぜか絶好調でリスク回避の円高という雰囲気はない。実際、対ドルでは円は上昇しているが、対ユーロやポンド、資源国通貨に対しては円安の動きが見られている。要はドル安が根強くドル円の上値を抑えているといった状況だ。

 そのドル安だが、7月は過去10年で最も下落している。8月に入ってもその流れが続いているといったところのようだ。その前まではリスク回避のドル買いだったのだが、一気に流れが変わっている。要因としては様々挙げられている。

 (1)米国での感染第2波が依然として収束の気配を見せない中で、欧州など他の地域よりも米経済は回復が遅れるのではとの見方。(2)FRBの追加緩和期待。(3)失業給付金の上乗せ措置が既に期限切れとなる中で、米追加経済対策の協議が難航しており、満足の行く対策が出ないのではとの不安。そして、(4)各国が外貨準備のドルの割合を引き下げているといった「ドル離れ」の指摘などがある。

 個人的に最も気掛かりなのは(4)の「ドル離れ」の動きだ。IMFの最新のデータによると、各国中銀のドルの外貨準備の割合は62%だ。この10年は概ね60%超を維持してきている。2位はユーロだが、それでも20%程度でドルとは大きな差がある。絶対的な準備通貨の地位であり、今後もそれは変わらないとみているが、パンデミックの対応で大胆な経済対策を相次いで打ち出す中で、財政支出が巨額となっており、財政赤字への懸念も言われ始めている。

 大統領選が控えていることもあり、今後も米国は追加の景気対策を打ち出す予定で、財政支出は更に拡大することが予想される。格付け会社フィッチ・レーティングスは先週、米国の債務は2021年までにGDPの130%を超えると予想し、米国のトリプルA格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。多くの国が同様に支出を拡大しているが、米財政赤字がパンデミック前からすでに先進国で最大となっていた点も鑑みれば、市場が不安感を示し始めてもおかしくはないであろう。

 もっとも、ドル安要因としての米財政赤字は以前から言われていた話ではある。それでもユーロ圏の財政危機などもあり、代替が効かないとして、市場はドルを選択して来た。それと伴に紆余曲折はあったが、金融危機以降ドルは概ね上昇傾向を続けてきている。

 ただ、もう一つ環境に変化がある。金利だ。今週、米10年債利回りは0.5%まで低下していたが、各国との金利差が急激に埋まっている。ユーロ圏や日本ではこれまでもゼロ金利が続いていたが、米国もゼロ付近まで急低下してきたことは大きいであろう。

 FRBも当面は低金利政策を続けるとみられている。今週、イエレンFRB前議長が講演を行っていたが、FRBの「枠組み見直し」は9月までには完了するであろうとしたうえで、「新たに平均インフレ目標を採用する可能性がある」と語っていた。

 その「枠組み見直し」だが、現在のように常に2%のインフレ目標を狙うというのではなく、インフレが徐々に平均で概ね2%という目標に変更するというものである。これまでよりも緩い目標に変更することによって、FRBに低金利政策を維持する余裕ができ、急速にインフレ期待が高まったとしても、FRBは様子を見られる。今週、米地区連銀総裁から、「インフレが2.5%になったら利上げを検討」との発言も出ていたが、これまでよりもインフレの認識水準が高い印象もある。

 財政赤字の拡大、低金利の長期化といった要因を考えれば、準備通貨としてのドルの魅力が幾分落ち、新型ウイルス感染のパンデミックが、金融危機以降続いたドル高のゲームチェンジャーになると市場がみてもおかしくはないのかもしれない。

 個人的には、ワクチンや新薬が開発され、ウイルス感染への恐怖感が世界的に後退すれば、金融市場の景色も一変するような気もする。ただ、それまではドルは軟調な展開がしばらく続くのかもしれない。

 さて来週だが、ドルは軟調な展開がしばらく続く可能性もあることから、ドル円も上値の重い展開が警戒される。8月は夏休みで市場参加者が少なくなることもあるのか、ボラティリティが上昇するともいわれている。しかし、今年はウイルス感染もあり、例年と同様の夏休みになるのか疑問もあるところだ。オプション市場では、それを警戒した動きも出ているが、これまでのところ、その動きは見られていない。為替市場で言えば、既にドル安に過熱感が見られ、ドルがいつ買い戻されてもおかしくはない状況ではある。しかし、上記のような状況で、ドルを積極的に売るのも躊躇されるところと思われる。そのような中でドル円が意外に105円台を中心に狭い範囲での上下動に終始するシナリオも想定される。

 ドル円の想定レンジとしては、104.50~106.50を想定。スタンスは「中立」から「やや弱気」に変更したい。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回の配信は8月22日(土)の午前を予定しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

為替ニュース/コラム

一覧を見る

注目ニュース

新着ニュース

主要通貨レート

直近24時間の重要経済指標

Pick Up 雇用統計 FOMC