【来週の注目材料】米消費者物価指数はやや強め予想、予想を超える上昇には警戒感=米CPI
【来週の注目材料】米消費者物価指数はやや強め予想、予想を超える上昇には警戒感=米CPI
今月3日に発表されたアメリカの雇用統計が良かったことなどを受けて、7月の利下げへの期待は少し下がりました。一時は60%まで上がっていた「年内3回利下げ」の見通しも後退し、いまは「年2回」が最も有力とみられています。「3回」がそれに続いていて、一時は10%を下回っていた「1回以下」の予想も20%を超えてきていて、見方が分かれている感じです。
米国の金融政策を左右するFRBの2大命題は、「雇用の最大化」と「物価の安定」です。そのため雇用統計と並んで注目されている物価統計の中で、市場の注目度が最も高い6月の消費者物価指数(CPI)が7月15日に発表される予定です。アメリカのインフレ目標の指標はPCE(個人消費支出)価格指数ですが、PCEは計算が複雑で対象地域も広いため、CPIよりも発表が遅れます。ちなみに6月のPCEは7月31日に公表予定です。CPIとPCEは数値に違いはあるものの、動きの傾向はだいたい似ているので、市場ではCPIの方に注目が集まりがちです。
前回の5月CPIは前年比で+2.4%となり、4月の+2.3%よりやや強めでしたが、市場予想の+2.5%には届きませんでした。変動が激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は+2.8%で、4月と同じ水準でしたが、こちらも予想の+2.9%には及ばず。前月比ではどちらも+0.1%で、4月の+0.2%からはやや鈍化しています。
前年比の内訳では、食品が+2.9%と4月の+2.8%より少し加速しました。価格高騰が続いている卵は2カ月連続で前月比ではマイナスとなりましたが、前年比では+41.5%と依然として高い伸びを見せていて、全体を押し上げています。一方、エネルギーは-3.5%と4カ月連続でマイナス圏に。ガソリン価格は12カ月連続のマイナスで、マイナス幅も-12.0%まで広がっており、こちらは全体を抑える方向に働いています。
コア部門では、食品とエネルギーを除いた財の価格が+0.3%となりました。前回は1年4カ月ぶりのプラス圏となる+0.1%となりましたが、そこから伸びが強まっています。関税の影響で注意が必要な衣料品は2カ月連続でマイナスで、今回は-0.9%と前回の-0.7%より下げ幅が広がっています。ただし、新車(+0.4%)や中古車(+1.8%)は、4月から伸びていて、関税強化への警戒から駆け込み需要が出た可能性もあります。コンピュータやおもちゃなど輸入に頼っている商品は前月比で伸びていますが、前年比だとそこまでではないようです。
コアサービス部門は+2.8%と、3月・4月と同じ水準になっています。CPIの中で住居費は36.2%を占めていて、その住居費は+3.9%と、4月の+4.0%よりやや鈍化しました。CPI上では6.5%、PCE価格指数ではもっと比重の大きい医療サービスは+3.0%と、4月の+3.1%から少し落ち着いたようです。とはいえ、輸送サービスは+2.8%と4月の+2.5%から伸びていて、全体を支える要因になっています。
今回の6月分の予想は前年比+2.6%、コア前年比+2.9%と共に5月から伸びが強まる見込みです。前月比はともに+0.3%の予想で、こちらも5月から伸びが強まる見込みとなっています。米国のガソリン価格は、米エネルギー情報局調査ベースの全米全種平均で5月の1ガロン=3.278ドルから6月は3.276ドルとほぼ同水準でした。ただ昨年のガソリン価格が5月の3.725ドルから6月の3.576ドルへ低下しており、前年比で見ると-12.0%から-8.4%へマイナス幅が縮小しています。CPIは都市部のみの平均なので全く同じではありませんが、傾向は変わらないため。マイナス幅縮小の分、総合指数の押し上げが見込まれます。コアの伸びについては、関税の影響とみられます。関税の影響が予想を超えて強く、伸びが予想をはっきり上回っていた場合、年内の利下げ回数の見通しなどにも影響を与え、ドル売り円買いとなりそうです。
MINKABUPRESS 山岡

執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。