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とれんど捕物帳 ドル円が更に上値を目指すにはドル高が必要

為替 

 今週は何と言ってもドル円がレンジを上に突破したというのが日本の投資家にとっては最大の話題であっただろう。個人的にはレンジを抜けるとすれば下と思っていただけに正直驚きではあった。週末に発表された米雇用統計が予想外の強さを見せたこともドル円の買いを加速させ、大きな心理的節目の110円をうかがう展開を見せている。

 今週は何度書いたであろう。経済再開とその後の景気回復への期待で、市場にはリスク選好の雰囲気が広がっている。株式市場は上値追いの展開を見せ、円安がドル安を凌駕したといったところであろうか。クロス円の上昇にドル円が押し出されたとの解説もあったが、恐らく日本の機関投資家が株式市場の動向をにらみながらドル円に断続的に買いを入れ、レンジ相場を決め込んでいた短期のショート筋が一斉にストップを余儀なくされたものと見ている。

 感染第2波や米中対立への警戒、そして、米抗議デモも加わり、市場にはネガティブな材料が揃っていたものの、市場の経済再開への期待感が根強い。米雇用統計は強い内容だったものの、足元の実体経済を俯瞰で見渡せば、この雰囲気がいつまで続くかは懐疑的に見ている。

 ただ、奇妙なほど市場は楽観的だ。FRBを始めとした各国中銀が、これまでになく大胆に市場に流動性を供給している。それに加えて各国政府が景気対策第2弾を模索しており規模も大きい。

 特に株式市場は楽観的だ。一部からは、「アナリストは、今年はともかく、21年、22年の利益見通しをまだ変えておらず、それを市場は十分に織り込んでいない」といった、めでたい捉え方まで聞こえてくる。やはり過剰流動性の成せる技なのであろう。地方債から何から、何でも買いまくっているFRBの保有資産は既に7兆ドルを超えている。最新のデータだと6月3日時点で7.17兆ドルにFRBの保有資産は膨らんでいる。FRBもいずれ日銀のようにイールドカーブコントロールを導入して、それなりに緩和は抑制して行くとも見られているが、しばらくは増加傾向が進すむ気配だ。

 ドル円も含めて更なる上値を期待したいところではあるが、全体的に過熱感が出ていることは否めない。どこまで経済再開による回復を織り込んでよいのか、そろそろ分岐点に差し掛かりつつあるように思われる。6月相場は4月、5月のようには行かないといった慎重な声も聞かれ始める中で、そろそろ直近の上げ相場に対する相応の調整が入るリスクは警戒しておく必要はありそうだ。調整が入った後の相場が本物のトレンドである。

 さて来週だが、ドル円がこのまま110円を突破して上値追いを続けるのかが気になるところであろう。ドル円が110円を超えて上値を追うにはドル買いの流れが必要だ。予想外に強い米雇用統計をきっかけに週末の為替市場では、ドルの買い戻しがやや見られていた。米経済が他国以上に早期回復を見せ、FRBの緩和姿勢も他国の中銀よりも早期に解消されるとの期待感が出たのかもしれない。

 このところのドル安進行に過熱感が見られている。ドルインデックスのRSIは一時26まで低下し、下げ過ぎの基準である30を下回る場面も見られた。そろそろ何かをきっかけにドル安に一服感が出てもおかしくはない状況だ。ただし、ドル円が上値を試すには株式市場が安定していることが条件となる。株式市場も過熱感が高まっており、その点は要注意ではある。

 来週はFOMCが予定されている。政策は据え置きが確実視されており、声明やパウエル議長の会見が注目される。今回はFOMCメンバーの金利予測など経済見通しも公表される。全体的にはハト派なトーンが維持され、必要なら行動する姿勢を強調してくるものと見られる。ただ、予想外に強かった米雇用統計を受けて、スタンスに何らかの微妙な変化があるか注目したい。ただ、過度に悲観的もしくは楽観的なメッセージが出るようであれば、過熱感の出ている市場は敏感な反応を示すかもしれない。

 想定レンジとしては108.50~111.00円を想定する。スタンスは「中立」から「やや強気」に変更したい。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下から中立へトレンド変化
短期 ↑↑(→)

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

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