とれんど捕物帳 ドル円はリバウンド相場に息切れ感も 過度な米利下げ期待は禁物か

 今週のドル円は下値模索が続き107円台前半まで下落した。週前半は21日線で踏み留まり、6月下旬からのリバウンド相場の流れを温存するかにも思われたが、週後半に21日線をブレイクした。6月に付けた直近安値が106.80円付近があるが、その水準を再び試しそうな気配も出ている。

 週後半にドル円の上値を重くしたのがウィリアムズNY連銀総裁の発言で、7月FOMCでの0.5%の大幅利下げの期待を再び高めたことにあったのかもしれない。総裁は「経済が極度の不安に陥った場合はFRBは積極的に行動すべき」との見解を示していた。その後にNY連銀は、「総裁の発言は20年の研究に基づいたアカデミックなもの」と火消しに回っていたが、市場は大幅利下げの確率を高めている。

 市場の勇み足とも取れなくはないが、よほど利下げ期待感が高いのであろう。もっとも裏を返せば、それは市場の先行き不透明感が深刻である表れとも言えなくもないが。

 今週はそのほかにもパウエルFRB議長を始めとしたFOMCメンバーからの発言が多数伝わっていたが、これまでの印象としては、今月の利下げは濃厚だが、0.5%の大幅利下げではなく、0.25%の利下げに留めるといった見立てが有力。年内2回の利下げがコンセンサスだが、状況によってはあと9月、12月に1回づつ計3回といったところと思われる。

 今週発表になった米小売売上高は予想を上回る強い内容となた。今月初めの強い米雇用統計以来、足元の指標は力強さを示し、指標だけからは利下げを正当化しない。しかし、度々申し上げているが、FRBの利下げは“株主対策”の意味合いが大きいと思われる。来年に選挙を控えたトランプ大統領もそれを切に希望しているであろう。

 ただ、あまり過度に利下げ期待を高めてしまうと、はしごを外される危険性もあるので要注意だ。今月のFOMCは0.25%と見ておいたほうがよいかもしれない。

 株式市場だが、決算発表が本格化してきている。今週は大手銀と大手ITの一角の発表があった。銀行については、足元の利益はリテール部門が好調で予想を上回ったものの、金利収入の見通しを下方修正している。利下げが金利収入を押し下げると見ているようだ。ITに関してはネットフリックスが有料ユーザーの増加が予想を大きく下回り売りが強まっていた。一方、マイクロソフトは増収増益で見通しも強く絶好調。IBMは増益ではあったものの、4四半期連続の減収となった。ただ、IBMの場合は固有の問題とも言えなくはないが。

 いまのところ米株式市場は底堅い反応を見せており、最高値圏を堅持している。先週もお伝えしたが、過去のデータによると、利下げ期待による相場押し上げ効果は企業の増益率見通しがゼロ%を下回ると効果がなくなるとの指摘も出ている。

 気になるところではあるが、情報会社の集計見通しによると、先週まではS&P500採用銘柄ベースで小幅な減益が見込まれていたが、今週の決算を通過して、小幅な増益見通しに変化しているようだ。ただ、来週は大量の決算発表が予定されており、何ともいえない情勢ではある。

 個人的にはFRBの金融緩和で株式市場を支える「FRBプット」をもってしても、株式市場は以前のような適温相場には戻せないと見ている。いずれにしろ、今回の米企業決算はいつも以上に注目で、来週も目が離せない。もっとも、今回の米企業決算で株式市場にネガティブな反応が広がれば、FRBは0.5%の大幅利下げの可能性をちらつかせてくるかもしれない。その場合は、リスク回避の円高も含めてドル円にとってはネガティブな材料となろう。

 さて来週だが、指標としては4-6月期の米GDP速報値が注目されそうだ。1-3月期は個人消費の伸びは鈍化したものの、在庫投資と純輸出の伸びが予想以上で3%を超える好調な数字となった。しかし、今回は前期比年率換算で1.7%程度が見込まれている。在庫投資は前回が強ければ、その次の四半期は反動が出ることが多く、純輸出も世界経済の減速や貿易問題がクローズアップされる中で、今回は鈍化が見込まれているようだ。注目は前回大きく鈍化した個人消費がどうかという点であろう。4-6月分の米小売売上高のデータを見た限りでは個人消費は回復が期待できぞうだがどうか。

 そして、米企業決算だが、来週本格化し、大手どころが次々と発表される。産業ではボーイングやキャタピラー、UTXなどが発表になり、IT・ハイテクではアマゾンやアルファベット、インテル、そして、フェイスブックの発表も予定されている。これらの結果を受けた株式市場の反応は、今後の相場を占ううえでも非常に重要だ。

 更にECB理事会が予定されている。市場では今回は据え置きが有力視されているが、声明やドラギ総裁の会見では追加緩和の可能性を強調してくると見られている。しかし、意外に来週の理事会での利下げ期待は高い。欧州の短期金融市場では来週の理事会での0.1%の利下げ確率を60%程度まで高めている。今月のFRBによる0.5%大幅利下げの確率は40%程度だが、それよりも高い状況。今年に入ってドラギ総裁がハト派なコメントで市場にサプライズを与えたのが既に2回ある点も市場のリスク意識を高めているのかもしれない。もし、サプライズ利下げがあるとするならば、1.10ドル台までの下落の可能性も警戒される。

 さてドル円だが、6月下旬からのリバウンド相場が息切れした感も出ている。ただ、夏場にかけて105円を目指すかは何とも言えないところだ。米株式市場が堅調を維持し、FRBの過度な利下げ期待が後退すれば、上値を再び試しそうだが、現状からは期待薄のところもある。売りが強まるかどうかは未知数だが、来週も上値の重い展開を予想するのが現状では妥当であろう。

 レンジとしては106.00~108.50円を想定。スタンスは「やや弱気」を継続。

◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立継続
短期 →(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立から下へトレンド変化
短期 →(→)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 →(↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立継続
短期 ↓↓↓(↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

出所: minkabuPRESS

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