とれんど捕物帳 米景気後退への警戒感を本格的に緩め始めたか!
今週のドル円はようやく111円台前半にあった200日線を突破し、112円台まで上昇する展開となっている。週後半からドル買いが復活し、ドル円を押し上げた格好となった。110円台で揉み合った後の上放れなので期待感も高い。来週以降、昨年の高値水準である114円を目指しに行くのか注目の動きではある。
何が週後半にドル高を誘発したのかは何とも言えないところではあるが、恐らく米国債利回りの上昇であろう。その利回り上昇を何が誘発したのもまた、何とも言えないところではある。週後半にかけて米国債のイールドカーブは急速に利回り格差が拡大しスティープ化している。恐らく市場は、今年に入ってからの様々な出来事を通過して、昨年末に強まった景気後退への警戒を、ここに来て本格的に緩め始めたのではと考えている。米中貿易問題も最終合意にはほど遠いものの、何らかの暫定合意はできのではと期待感が出ている。壁建設の問題も無難に通過した。また、FRBが引き締め姿勢を緩めた。表向きは世界経済の減速にしてあるが、恐らく“株主対策”と思われる。
自身も含めて、このまま米景気拡大が続くと見ている人は少ないであろうが、少なくとも今年に関しては無難な着地点に収まるのではとの期待が高まっているのかもしれない。
今週は2つの経済的な注目イベントがあった。パウエルFRB議長の議会証言と10-12月期の米GDPだ。パウエル証言は既に市場に広まっている雰囲気を踏襲した内容で特にサプライズもなく市場も無難に通過している。ただ、バランスシート縮小の終了に関しては明確に言及していた。恐らく今月19.20日に予定されているFOMCでは何らかのアナウンスが期待される。現在は月間最大500億ドルペースでバランスシートを縮小しているが、それをある時点で止めるのか、縮小ペースを徐々に緩めて終了するテーパリング方式なのか、それとも別の方法なのか注目される。恐らく縮小ペースのほうである可能性が高いと見られるが、市場の一部からは、市中銀行の準備預金を考慮しながら、ある時点で止めるとの見方も出ている模様。いずれにしろ注目したいところではある。
ただし、金利に関してはオープンにしていると言って良いであろう。利上げの選択肢を残している。FRBは中立と言われる水準までFF金利の誘導目標を持って行きたがっている。その水準がまだ明確ではないのであろう。今後の経済指標、特にインフレ指標次第ということにしているようだ。CMEがFF金利先物の取引から算出しているFEDウォッチでは年内の利上げ確率は数%程度に留まっている。市場ではまだ年内の利上げを織り込んでいない。FRBは「辛抱強く」という文言を繰り返し強調しているが、市場からすればずっと辛抱強くい続けてくれということなのであろう。
そして、米GDPだが、前期比年率換算で2.6%と予想を上回った。GDPの7割を占める個人消費は7-9月期からは減速したものの底堅さを示しており、今回は設備投資が大きく上昇したことがサポートした。在庫投資も増加しており、センチメントは落ち込んでいたものの、企業は意外に生産は行っていたようだ。今回の米GDPを受けて市場には楽観的なムードが広がり、更にドル高を誘発していた。
少し気になったのが、トランプ政権が掲げる3%成長との関係だ。マスコミでは今回のGDPを受けて2018年の通期では2.9%成長となり、トランプ政権は目標を達成できなかったとしている。2015年のオバマ大統領の時に2.9%であったが、トランプはオバマを超えられなかったとしている。しかし、ホワイトハウスは、前年同期比で見れば3.1%とトランプ政権と共和党は減税の効果もあって勝利した強調している。無理矢理の様な解釈で、どうでもよいのだが、オバマ大統領の時はまだリーマンショックからの回復基調の中での2.9%で、今回は伸び切った段階からの2.9%だ。価値としては今回のほうが大きいのかもしれない。ただ、その分、赤字も積み上げたが。もっとも、トランプ大統領がやらかさなければ、3%は文句無く達成していたと想像する。それに今回はあくまで速報段階だ。
さて来週だが、注目は米雇用統計とECB理事会であろう。再び米経済指標に市場の注目が集まりそうで、米雇用統計は格好の指標の一つではある。非農業部門雇用者数(NFP)は18.5万人が予想されている。米政府機関閉鎖の影響で失業率は上昇したが、力強い雇用が示されている。ただ、前回が強い内容だったこともあり、今回は反動が出るものと予想されているようだ。それよりも注目は平均時給かもしれない。予想では前年比3.3%となっている。昨年夏から3%台に乗せており、それが維持されている。賃金はインフレを誘発しそうな水準に入ってきているが、いまのところ、PCEも消費者物価指数(CPI)も2%付近で落ち着いている。ただ、いまの市場の雰囲気からすると、予想通りの数字でればタカ派な反応がみられるのかもしれない。
そして、ECB理事会だが、TLTROかLTROかは不明だが、何らかの新たな緩和策が示唆される可能性がある。実際のアナウンスは4月との見方もあるが、内容次第ではユーロ売りの反応も警戒される。
いずれにしろ、ドル買いの流れが続く可能性を留意したいところではある。来週のドル円の予想レンジだが、来週に達するであろう21日線水準を下値メドとし、上値は112円台後半をメドとしたい。レンジとしては110.80~112.80円を想定。スタンスは「やや強気」を継続。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(→)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(→)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(→)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↑↑(→)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立継続
短期 ↑↑↑(↑)
minkabu PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。