為替相場まとめ2月17日から2月21日の週
17日からの週は、円高が進行。日本のGDPの伸びが予想を上回ったことや、米価格の高騰などを背景に消費者物価が高い伸びを示した。高田日銀審議委員がギアシフトとの文言を多用するなど追加利上げ観測を高めた。市場も追加利上げをさらに織り込んで、長期金利が上昇。政治面では、トランプ関税が日本の自動車産業に与える影響が懸念されている。また、ウクライナ停戦をめぐって米ロが接近していることも欧州などに警戒感を高めている。安全資産買いで金相場が現物・先物ともに最高値を更新。不透明感が広がるなかで円買い圧力が広がる面も指摘される。欧州経済については回復が進んでいないとの指摘がECB高官からでていた。英国では雇用統計の改善、インフレの根強さが示され、やや利上げ観測が後退した。ユーロ売り・ポンド買いの動きもみられた。米FOMC議事録ではしばらくは利下げを見送る姿勢が確認されている。ドル相場自体は強弱感が交錯し、目立った方向感はみられなかった。21日東京朝に円高がもう一段強まり、昨年12月3日以来となる149円29銭を付けたが、その後植田日銀総裁が長期債の休場上に機動的に国債買いで対応する姿勢を示して日本の長期債利回りが低下したこともあり、一気に150円台後半を付けるなど、やや不安定な動きを見せている。
(17日)
東京市場では、円が全面高となった。朝方に発表された第4四半期の日本国内総生産(GDP)の市場予想を大きく上回る結果を受けて、日銀による追加利上げ観測を背景に円が買われた。ドル円は、午前に152円を割り込んだあとも下値を広げ、昼頃には151台半ばまで下落した。午後はいったん下げ渋ったものの、戻りは鈍く、東京終盤には一時151.48付近まで下落、この日の安値を小幅に更新した。日銀の早期追加利上げ観測が強まるなか、19日には高田日銀審議委員が発言予定となっており、注目が集まっている。クロス円も軒並み円高となり、ユーロ円は午後に一時159円割れに沈んだ。ポンド円はこの日の高値から1円以上の円高水準となる190.71付近まで下落した。ユーロドルは1.04台後半を中心に朝から方向性の定まらない動きだった。
ロンドン市場では、円が一段高。ドル円はロンドン朝方にいったん買戻しが優勢となったが、反発は151.90台までにとどまり、152.00手前が重くなった。上値の重さを嫌気してその後円買いが強まり、東京午後の安値を割り込んで151.40付近に安値を小幅更新。ユーロ円は159円挟みでの推移から再び軟化、158.60台に安値を広げた。ユーロドルは1.04台後半で揉み合い。動意に欠ける展開で1.0470台を中心とした推移となっている。このあとのNY市場が休場となることで、次第に取引は落ち着いてきている。
NY市場は、米国がプレジデントデー、カナダが家族の日のため休場。
(18日)
東京市場は、ドル買いが優勢。ウォラーFRB理事が「現時点では利下げを支持していない、インフレ落ち着くまで一時停止が望ましい」と述べたことを受けて、米利下げ期待が後退、米債利回りの上昇につながりドル高となった。米10年債利回りは朝の4.486%から4.517%まで上昇している。朝はドル円に円買いが入った。加藤財務相が昨日の第4四半期GDPの好結果を受けて「日本経済、明るい兆しが見えてきている」などと発言し、日銀の早期利上げ期待が広がった。151.40台から151.24近辺まで一時下落。その後はウォラー理事発言によるドル高は午後まで続き、152.22近辺まで1円弱の上昇となった。午後には152円を割り込むなど、ドル買いは一服した。ユーロドルは朝に1.0486近辺の高値を付けた後は、ドル全般に上昇とともに1.0452近辺まで軟化した。ユーロ円は158.55近辺を安値に、159.19近辺まで買われた。豪中銀は4年超ぶりの利下げを発表。声明に「今後の緩和について慎重」との表現があり豪ドル買いを誘った。
ロンドン市場では、ドル買いが一服。ロンドン朝方に発表された英雇用統計で失業率が予想を下回り、賃金の伸びが加速したことを受けてポンドドルが買われると、総じてドル買いが一服している。ドル円は152.20付近を高値に151.70台へと反落。ユーロドルは1.0450付近まで下げたあとは1.04台後半で売買が交錯している。米10年債利回りは4.51%台から4.50%台へと上昇一服。ユーロとポンドが綱引きとなっている。上記の英雇用統計が強かったことがポンド買いを先行させたが、その後、ベイリー英中銀総裁が「ディスインフレが継続している、英国は弱い成長環境に直面」などと述べたことでポンド買いを帳消しにしている。ポンドドルは1.26台から1.26台割れで上下動。また、独ZEW景況感指数は予想を上回る回復をみせた。新政権への期待によるものと分析されていた。これを受けてユーロポンドが買い戻されている。クロス円はドル円とともに上昇一服。ユーロ円は159円台乗せから158円台後半へ、ポンド円は192円手前から191円手前まで反落した。個別材料に敏感に反応も、全般的な方向性は見えづらい展開になっている。
NY市場では、ドル円が方向感に欠けている。151円台に値を落としたものの、終盤になって152円近辺まで戻している。イベントを通過して次の材料探しになっている中、本日は方向感のない展開が続いた。ただ、200日線を下放れており、下向きの流れは継続している。節目の150円に向かって下値を掘り下げるのか注目の動きに。ユーロドルは戻り売りに押され、一時1.04台半ばに下落。1.05台に入ると上値抵抗が強まるようだ。そのなかで、米大手銀の2月のファンドマネジャー調査によると、ユーロが過小評価されているとの見方を示す投資家の割合が2023年4月以来、約2年ぶりの高水準となった。ポンドドルは1.26を挟んで方向感のない展開。ストラテジストからは、英労働市場の低迷を示す証拠が積み重なれば、ポンドは下落の可能性があるとの指摘も出ていた。賃金はデータが示すほど堅調ではない兆候があると指摘されていた。
(19日)
東京市場は、ドル円相場が振幅。午前には152.31近辺まで上昇。注目された日本銀行の高田審議委員は、ある程度利上げに前向きな姿勢を見せたものの、想定を外れるものではなく、いったん円売りとなった。6日に行われた高田委員と並んでタカ派といわれる田村委員の発言が、相当に利上げに積極的なものであったため、事前の期待が強まっていた面があった。その後はドル全般の売りが重石となり反落。午後に入って151.63近辺まで下落。朝に1.0440近くに軟化したユーロドルが1.0460付近まで買われるなど、ドルは小幅ながら全般に売りが出ており、ドルインデックスも107.08から106.90を付けた。午後の高田委員による記者会見も目立った反応は見せず。委員は利上げ姿勢継続を示すも、利上げのペースや水準に先入観はないとしている。NZ中銀政策金利は市場予想通り50bpの利下げとなった。利下げは4会合連続、直近3会合連続での50bp利下げとなった。オア総裁は今後の利下げ継続を示唆し、いったんはNZドル売りも、利下げ幅が次回、その次と25bpずつになる見通しを示したことで反発している。
ロンドン市場では、ユーロ安・ドル高・円高の動き。欧州株は軟調に推移しており、リスク警戒感がみられる状況。パネッタ伊中銀総裁がユーロ圏の景気の弱さが予想以上に根強いとの認識を示した。また、米国とロシアがウクライナ停戦をめぐる協議を始めており、欧州側は警戒感を持って見守っている。さらに本日ワシントンではEUと米国との貿易協議が行われる。多くの課題をかかえて欧州には不透明感が広がっている。一方、シュナーベル理事は利下げ一時停止または停止する時期に近づいているとの認識を示した。また、この日発表された英消費者物価指数は前年比+3.0%と予想以上に伸びが加速したが、サービスCPIは前年比+5.0%をわずかに予想を下回っていた。ポンドは対ユーロで買われる場面があったが、対ドルや対円では売りに押されている。ドル円は151円台半ばへと一時軟化。ユーロ円は158円付近、ポンド円は191円台割れへと下押し。ユーロドルは1.04台前半、ポンドドルは1.25台後半へと軟化している。
NY市場は、方向感に欠ける展開。ドル円は151円台での推移が継続。前日のNY時間終盤に152円台に戻したものの、上値を抑えられている。市場はイベントを通過して次の材料探しになっているようだ。トランプ大統領が関税脅威を強め、大統領は自動車、半導体、医薬品の輸入品に25%前後の関税を課す可能性が高いと述べ、早ければ4月2日にも発表すると述べていた。ただ、米株式市場はほとんど変化していないなど、広範なリスク選好のムードに大きな影響は与えていない。午後に1月分のFOMC議事録が公表されたが、FRBの利下げへの慎重姿勢を裏付ける内容となった。ただ、それは十分に織り込まれている内容でもあり、大きな動きには繋がっていない。ユーロドルは1.04台での上下動に終始。ポンドドルはやや戻り売りが出ているものの、大きな動きは見られていない。本日はシュナーベルECB専務理事のインタビューが伝わり、「ECBは間もなく、利下げの一時停止または終了について議論をに迫られるだろう」と述べていた。第1歩として3月の理事会で声明から「金融政策は景気抑制的」という文言を削除するかどうかを議論すべきだと主張。「抑制的かどうかに、もはや確信が持てない」とも付け加えていた。1.26台から上値を抑えられているものの、1月中旬からのリバウンド相場は失われていない。本日は1月の英消費者物価指数(CPI)が発表になり、予想を上回る内容となった。根強いインフレを示唆する内容ではあったものの、エコノミストからは1月の英CPIの急上昇も、英インフレは低下傾向との見解が出ている。
(20日)
東京市場では、円高が進行。日銀の追加利上げ観測などを背景に朝から円買いが優勢となり、午後に前日終値比1円以上の円高となる150.11付近まで水準を切り下げた。明日に1月の日本消費者物価指数(CPI)の発表を控え、ポジション調整とみられる動きも重石となった。また、日本10年債利回りは約15年ぶりの高水準となる1.44%台まで上昇したが、植田日銀総裁は石破首相との会談で長期金利上昇について話題に出なかったと明かし、円買いにつながった。クロス円も軒並み軟調。ユーロ円は156.61付近まで、ポンド円は189.12付近まで下落し、この日の安値を更新した。円相場主導の展開のなか、ユーロドルは1.0430付近での揉み合いに終始。
ロンドン市場では、円高が一服している。ただ、ドル円、クロス円いずれも反発の動きは限定的。引き続き東京市場からの円買いの流れは続いている。ドル円はロンドン朝方に150円台割れから149.95近辺まで安値を広げた。その後は150.40台まで反発も再び150円付近へと軟化している。ユーロ円も156.32近辺に安値を広げた後157円付近まで反発したが、大台回復には至らず156円台後半で推移。ポンド円は188.80付近を安値に189.70付近まで買い戻されたが、その後は189円台前半へと再び下げている。ドルストレートではドル売りが優勢。ユーロドルは1.04台前半から半ばに向けた動き。ポンドドルは1.25台後半から1.26台に乗せてきている。ユーロ対ポンドではユーロ売り先行も、その後は買い戻されている。円買いをメインとしてドル安の動きも加わっている。日銀の追加利上げ観測が広がっているほか、ウクライナ停戦をめぐる米国と欧州の温度差が不透明感を広げているようだ。ただ、欧州株、米株先物いずれも目立った売り圧力はみられていない。これまで上昇してきた分に調整が入る動きにとどまっているようだ。
NY市場ではドル安円高が強まった。ドル円は東京時間に引き続き、節目の150円を割り込み、一時149円台半ば割れを付けた。米小売り大手ウォルマートの決算が弱く、米個人消費の減退を警戒する動きからドル売りとなり、ドル円の重石となった。ユーロドルが1.05台を付けるなど、ドルは全面安となっている。ドル主導となったことで、クロス円はやや不安定な動き。ユーロ円はドル円の下げから156円50銭割れを付けた後、対ドルでのユーロ買いを支えに157円30銭台を付けている。
(21日)
東京市場では前日海外市場でのドル安円高の流れが朝に強まり、注目された日本の1月全国消費者物価指数(CPI)発表の直前に149円29銭と年初来の安値を付けた。日本のCPIは市場予想通り前年比+4.0%と2年ぶりに4%の大台に乗せた。生鮮を除くコアは+3.2%と、市場予想の+3.1%を超える伸びとなった。この結果を受けてドル円は安値圏もみ合いとなったが、安値を更新できず反発。さらに、衆院予算委員会に出席した植田日銀総裁が「長期金利が急激に上昇すれば機動的に国債買い入れを増額する」などと発言したことで、日本の長期金利が下落し、円売りが強まる形で昼過ぎに150円74銭まで上値を伸ばした。朝の1.45%から1.39%まで下げた日本の長期金利(10年国債利回り)はその後1.42%を付けるなど持ち直し、ドル円も高値から150円10銭台まで売りが出た。ユーロドルは1.05を挟んでの推移。ユーロ円は朝の円高に156円84銭を付けた後、158円22銭まで上昇。午後は少し落とすも158円前後としっかり。
ロンドン市場でドル円は少し調整が入って150円台前半を中心とした推移となっている。植田日銀総裁が衆院予算委員会で答弁を行い、長期債利回りの上昇について、機動的に買入れを増額すると発言したことで円債利回りが低下。1.45%から1.39%を付ける中で円売りとなったが、東京午後から円債利回りの低下が一服したことで、ドル円も上値を抑えられた。
NY市場に入ってドル円は一時148円台まで下げ幅を拡大した。本日の市場は、この日発表の米経済指標が揃って弱い内容となったをきっかけにリスク回避の雰囲気が広がった。ドル高・円高が見られていたが、特に日銀の早期追加利上げへの期待感が高まる中で、リスク回避の円高がドル高以上に強まった。
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執筆者 : MINKABU PRESS
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