為替相場まとめ2月3日から2月7日の週
3日からの週は、円高が進行した。週明けはトランプ関税をめぐってリスク警戒のドル高・円高の動きで始まった。トランプ米大統領は、メキシコとカナダからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと決定。EUに対する関税賦課の可能性も示した。しかし、メキシコとカナダについては首脳会談で事態が収拾され、発動は1カ月間先延ばしされた。一方、中国に対する関税は4日から発行され、中国側も対抗措置を10日から実施すると発表した。市場では10日までの間に双方の話し合いで解決されるとの楽観的な見方もあって、市場の混乱は次第に収束。週明けの急激なドル高からドル安方向へと転じた。一連の米経済統計が弱含んだこともドル売りにつながった。リスク警戒は一服したものの、円相場には円高圧力が強まった。日本の賃金や所得の伸びが予想を上回ったことに加えて、植田日銀総裁や田村日銀審議委員が追加利上げの前向きな発言を行った。さらに赤沢再生相もインフレ認識について日銀と齟齬はない、とした。市場には日銀の追加利上げ観測が広がった。ドル円相場は週明けの155円台後半から週末には150円台を付ける動きとなった。6日の英金融政策委員会(MPC)では予想通り25bpの利下げで政策金利は4.50%となった。タカ派とみられたマン委員が50bpの大幅利下げ主張に転じたことがポンド売りを加速させる場面があった。週全体としては、ドル安・円高・ポンド安の動きが際立った。週末の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったものの、前回分が大幅に上方修正されたことや、失業率が4.0%に低下したこと、そして平均時給が予想以上の伸びを示していた。FRBの利下げへの慎重姿勢を裏付ける内容であった。市場の反応は一時的に留まっている。
(3日)
東京市場は、ドル高・円高の動きが強まった。ドル円は早朝にトランプ米大統領による関税強化の動きを受けた貿易戦争への懸念から、リスク回避の円買いで一時154.67付近まで下落した。その後は米関税強化を背景とした米国のインフレ再燃観測でドル買いが優勢となり、一転して155.89付近まで上昇。しかし、午後は上げが一服して、155円台前半まで伸び悩んだ。トランプ米大統領は、メキシコとカナダからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと決定したほか、欧州連合(EU)に対する関税も「間違いなく実施」と発言。ただ、中国政府は米国との貿易協議の準備中であり、トランプ米大統領も対中関税の大半を延期して対話へ前向きな姿勢だと一部で報じられている。ユーロドルは早朝に2022年11月以来の安値となる1.0141付近まで下落。ドルカナダは午後に一段高となり、2003年以来22年ぶりのドル高水準となる1.4793付近まで上昇する場面があった。クロス円は早朝に貿易戦争懸念からリスク回避の動きで円高に振れ、ユーロ円は158円ちょうど付近まで下落。しかし、その後は下値は広がらず、159円台を回復した。
ロンドン市場では、ドル高が一服するとともに、円高の動きが広がっている。週明け相場はトランプ関税発動報道に鋭く反応しており、オセアニア市場開始時にはドルが急騰した。その動きは次第に一巡。ロンドン時間に入るとドル円やクロス円が軟調に推移しており、円買いの動きが優勢になっている。トランプ米大統領はメキシコ・カナダ・中国への関税発動に続いて、EUにも近く関税を賦課することを表明。欧州株や米株先物・時間外取引が大幅安となっている。ドル円は155円台後半から155円台を割り込むと154.60付近へと安値を広げている。ユーロ円はオセアニア時間にユーロドルとともに158円台前半へと急落したあと、いったん159円台後半まで戻したが、足元では再び158円台半ばへと下落している。ポンド円も連れ安となり、191円台半ばから190円台前半へと再び下押しされている。ロンドン時間にはユーロドルは1.02台前半から半ば、ポンドドルは1.23台乗せ水準での揉み合いに落ち着いている。ユーロ対ポンドではユーロ安圏での推移が続いている。一連の欧州製造業PMIや英製造業PMI、ユーロ圏消費者物価速報など経済指標にはほとんど反応せず。トランプ相場主導の展開になっている。
NY市場では、ドル円が反発。一旦154円ちょうど付近まで下落したものの、一時155円台まで戻している。トランプ大統領がカナダとメキシコ、そして中国への関税発動を発表したことで、リスク回避の円高から、序盤のドル円は売りが強まったものの、メキシコのシェインバウム大統領がトランプ大統領との電話会談後、「米国がメキシコに対して課す関税が1カ月間延期されることになった」と述べたことで、一気に買い戻される展開となった。ユーロドルも買い戻されている。本日は早朝のオセアニア市場で一時1.0150近辺に急落したものの、その後は東京、ロンドン、NYと買い戻しが見られた。メキシコ大統領の発言後、一時1.03ドル台まで一気に買い戻された。しかし、ドイツを中心に輸出志向の強い欧州経済に米国の関税が課されることで、ECBがさらに積極的な利下げに踏み切る可能性があるとの懸念が広がっている。きょうのポンドドルは下に往って来いの展開。一時1.22台まで急速に下落したものの、1.24台に買い戻された。本日の21日線が1.2350付近に来ているが、その水準を一旦下回ったものの再び回復している。一部からは、トランプ関税をめぐる世界的な金融市場の動揺から、ポンドが意外な避難先として浮上しているとの指摘も出ている。ポンドは一旦ドルに対しては下落したが、伝統的な避難先である円を除く他の主要通貨に対しては上昇し、対ユーロでは8日連続で上昇している。これは2021年以来の最長記録。
(4日)
東京市場は、トランプ関税をめぐる動きに翻弄された。週末に日本時間4日午後2時)発動でメキシコ、カナダへの25%関税、中国への10%関税に署名したトランプ大統領だが、トルドー・カナダ首相、シェインバウム・メキシコ大統領との協議により、両国の国境警備強化が示されたことで昨日のNY時間に発動の延期を発表した。ドル円は東京午前に155.41近辺まで上昇。その後155円台前半でのもみ合いとなったが、残っていた中国に対する10%の追加関税はタイムリミットとなり発効される形となった。中国側も最大15%関税、レアメタル輸出規制、米グーグルを独禁法で調査、複数の米企業を信用できない会社に追加した。貿易戦争への警戒感で、154.80台まで円買いが入ったあと、すぐに戻している。ユーロ円も160円台半ばから159円台前半で激しく振幅した。ユーロドルは1.03台半ばから一時1.0270付近まで下落。関税対象国通貨のカナダドルやメキシコペソは急速に買い戻された。豪ドル/ドルは対中国関税発効を受けて売りが入る場面があった。
ロンドン市場では、円安・ドル安の動きが優勢。きょう2月4日はトランプ米大統領がメキシコ・カナダ・中国に対する関税賦課のXデーとなっていた。メキシコとカナダについては国境管理などで当面の合意を得たことで、発動が1カ月先延ばしされた。一方、中国に対してはきょう予定通りに関税賦課が発効された。中国側は2月10日に対抗措置を発効するとしている。ただ、その前に米中首脳会談を行うとの見方があり、市場には関係修復への期待もあるようだ。ドル円は一時154円台の下落も、その後は155.50付近まで高値を伸ばし、155円台前半での揉み合いに落ち着いた。ユーロ円は対中関税発効で159円台前半まで急落も、すぐに切り返して高値を160.60台へと更新。ポンド円も191.80付近を安値に193円台前半まで買われた。ドル相場は軟調。ユーロドルは1.0270付近まで下げた後、1.0350付近へと反発。ポンドドルも1.2380近辺を安値に、1.2430台まで買い戻された。欧州株や米株先物・時間外取引は売りが先行したが、足元ではプラス圏を回復。ただ、EUなどへの関税賦課があるのかどうか不透明感も広がっており、相場はまだまだ落ち着かない状況。
NY市場では、関税への懸念一服のなかで、米求人件数を受けてドル安が広がった。ドル円は155円台まで買い戻されていたが、一気に154円台前半に下落した。米求人件数は760万人と800万人超だった前回から大きく減少し、予想も大きく下回った。予想以上の労働市場の冷え込みを示し、FRBの利下げ期待を温存させる内容となった。ただ、市場ではドル安の持続性に懐疑的な見方が多い。米経済が相対的に力強く推移しているほか、ひとまず落ち着いているとは言え、貿易戦争への懸念は続くと見られており、本日のドル安は一過性に過ぎないと見ている模様。ユーロドルは1.03台後半、ポンドドルは1.24後半までまで買い戻された。ただ、ユーロについてはトランプ関税への脅威はこれからではある。関税リスクの中で、市場ではポンド下落は限定的で英国はユーロ圏なとど比べても有利な立場にあるとの指摘が聞かれる。アナリストは、関税が英経済に過度な悪影響を与えることはないという。
(5日)
東京市場では、朝方から円が買われている。赤沢再生相が「足元はインフレの状態という認識、植田日銀総裁と齟齬ない」と発言。関係閣僚からのインフレの発言に円買いとなった。また8時半に出た現金給与総額と実質賃金がともに予想を大きく超える好結果。前回値の上方修正という強さを見せた。また名目賃金に至っては28年ぶりの高水準となった。この状況を受けて6月までの利上げ期待が42.5%まで上昇している。ドル円は朝方の154.40付近から153円台へと急落、昼過ぎには153.10付近まで下落した。その後の反発力も鈍い。ユーロ円は160.30付近から159円台前半に急落。さらに158.94近辺まで安値を広げた。戻りは159円台前半まで。ポンド円も192円台後半から191円付近、豪ドル円は96円台後半から95円台後半へと下落。ユーロドルは1.03台後半で推移している。
ロンドン市場では、ドル円が一段安。東京朝方に発表された実質賃金の上昇や赤沢再生相が「足元はインフレの状態という認識、植田日銀総裁と齟齬ない」と発言したことなどが、市場での日銀追加利上げ観測を高めた。さらに、ロンドン時間に入ると米債利回りの低下とともに、ドルが全面安となっている。ドル円は153円の大台を割り込むと安値を152.50台まで広げている。ドル安の動きで、ユーロドルは1.03台後半から1.04台前半へ、ポンドドルは1.24台後半から1.25台半ばへと上昇。クロス円は売買が交錯も、ユーロ円は一時158円台後半に安値を広げた。ユーロ対ポンドではユーロ売りが優勢で、ポンド円は191円台割れには至らず191円台前半から半ばで推移している。ユーロ売りの面もみられており、ECBの賃金推計で今年第4四半期の伸びが1.5%に大幅減速することが示されていた。欧州株や米株先物・時間外取引は売りに押されている。金先物は安全資産買いが続き、最高値を更新。米中貿易戦争の行方を不安げに見守る状況となっている。
NY市場は、ドル売りが優勢。一時152円台前半と、ロンドン市場からさらに安値を広げた。この日発表の米ISM非製造業景気指数が予想を下回ったことをきっかけに売りが加速。本日の下げで200日線を下回っており、明日以降の動きが注目される。ユーロドルは買い戻しが続き、本日は1.04ドル台を回復。21日線の上も復帰していることから、下値警戒感は再び後退している。ただ、ECBの追加利下げ期待は根強い。ECBが発表する賃金トラッカーは、賃金の上昇ペースが2025年も引き続き大幅に鈍化するとの予測を示した。ポンドドルも1.25台半ばまで一時上昇。1月27日につけた直近高値1.2525ドルを一時突破しており、完全に上抜けてくるか注目される。 明日は英中銀の金融政策委員会(MPC)の結果が発表される。0.25%ポイントの利下げがほぼ確実視されており、市場は今後のヒントが何か示されるか注目している。
(6日)
東京市場では、円買いが優勢。ドル円は、午前に円高方向に振れ、昨年12月12日以来およそ2ヶ月ぶりの安値となる151.82付近まで水準を切り下げた。田村日銀審議委員が「2025年度後半には少なくとも1%程水度まで利上げが必要」などと発言したことを受けて、日銀による早期の追加利上げ観測が強まり、円買いにつながった。午後にかけては下げが一服。米10年債利回りの上昇を受けたドル買いに支えられ、152円台半ばまで戻した。田村日銀審議委員は午後に「次の利上げの時期は予断もっておらず特段考えていない」などとコメントしたが、市場の反応は限定的。ユーロ円も振幅。午前に一時158円割れに沈んだあと、午後は158円台前半で小動きとなった。日本時間今夜に英中銀政策金利の発表を控える中、ポンド円は190円台前半で推移した。ユーロドルは午後のドル高傾向を受けて、一時1.0385付近まで下落した。
ロンドン市場では、ポンドが急落している。英中銀の金融政策決定では大方の予想通り25bpの利下げが発表された。注目の票割れは7対2での25bp利下げで、マン氏とディングラ氏が50bpの大幅利下げを主張した。市場では8対1での1名は据え置きとの見方が優勢だったことで、一気にポンド売りが強まった。発表前には全般的にドル買い圧力が広がった。米債利回りの上昇に反応。ポンドドルは英中銀発表前から軟調に推移。1.25付近から1.24手前まで下げていた。発表後には1.2360付近まで一段安となった。ユーロドルは1.04付近から1.0350台へと軟化した後は揉み合いに。ドル円は東京市場で152円台後半から151.80付近まで下落。日銀追加利上げ観測に反応していた。しかし、ロンドン時間にかけては買戻しが進み高値を152.90付近に伸ばした。その後は152円台前半へと押し戻されている。ポンド円は大幅安。191円手前から売られ続けており、英中銀発表後には188.30台まで急落した。ユーロ対ポンドではポンド売りが強まっている。英FT指数は上げ幅を拡大。欧州株や米株先物が全般に堅調に推移している。
NY市場では、ドル円に売り圧力がかかった。151円台前半まで一時下落している。東京時間の安値を下回った。円高が続いているほか、NY時間に入ってドル売りの動きが再び出て、ドル円は二重の逆風にさらされていた。明日の米雇用統計や日米首脳会談を前にロングの持ち高調整が活発に出ていた模様。日米首脳会談だが、明日の日本時間未明に行われるが、トランプ大統領が石破首相との会談で、円安について何らかの議論があるかを市場は強く警戒している。円高が続いており、ユーロ円やポンド円も下値を模索。日銀の早期追加利上げ観測が根強い。ユーロドルは買い戻しが出て、1.03台後半まで戻した。ロンドン時間には1.03台半ばに値を落とし、21日線を再び下回る場面も見られていたが、サポートされた格好。ECBは明日、中立金利の新たな推定値を発表する予定。ポンドドルは、ロンドン時間に一時1.2360付近まで下落していたが、NY時間に入って買い戻しが強まり、1.24台を回復。ベイリー英中銀総裁は「利下げに段階的で慎重なアプローチを取る」と述べていたが、その後のインタビューでも「投票結果はコミュニケーションツールではない」とし、投票結果に重きを置き過ぎないよう市場に求めた。
(7日)
東京市場では、ドル円が一時150円台に下落した。東京午前は円買いの動きが入り、ドル円は150.96近辺まで下落した。前日から引き続き日銀追加利上げ観測が円買いを誘った。しかし、赤沢再生相がデフレは脱却していない、とインフレに対する認識をトーンダウンさせたことをきっかけに円売り方向に転じた。米雇用統計を控えた円買いポジションに対する調整の動きも入ったもよう。151.80付近まで買い戻されている。クロス円も同様に振幅。ユーロ円は156.76付近まで下落したあと、157.60付近まで反発。ポンド円も187.60台まで下押しされたあとは、188.70付近へと上昇した。ユーロドルは1.03台後半での揉み合い。ややドルが買われており、朝方の1.0391近辺から午後には1.0373近辺まで小安く推移した。
ロンドン市場では、円安の動きが広がっている。ドル円は東京午前には日銀追加利上げ観測を受けて151円割れまで下押しされたが、その後は買戻しの流れが続いている。赤沢再生相がデフレ脱却には至っていないとして、インフレ認識についてトーンダウンしていたことが円売りを誘ったほか、この後の米雇用統計発表を控えた円買いポジションに対する調整の面も指摘される。ロンドン市場では152円台に乗せている。ドル円の反発とともにクロス円も買われている。ユーロ円は156円台の安値から158円付近へ、ポンド円は187円台後半を安値に189円台半ばへと上昇している。ドル相場はややドル売りが先行したが、その後は戻すなど方向性に欠ける揉み合い。ユーロドルは1.03台後半から1.04付近、ポンドドルは1.24台前半から1.24台後半での小動きとなっている。ユーロ対ポンドではややユーロが軟調。ECBは中立金利を1.75-2.25%のレンジとの見方と報じられている。特段のサプライズ反応はみられていない。
NY市場はトランプ関税のニュースが再浮上し、市場にはリスク回避の雰囲気が広がった。為替市場はドル高・円高が強まったが、円高の動きがドルを勝り、ドル円は一時150円台に下落する場面が見られた。市場が注目していた日米首脳会談での為替の協議については「日米の財務相間で協議継続」と無難に収まっている。本日は1月の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったものの、前回分が大幅に上方修正されたことや、失業率が4.0%に低下したこと、そして平均時給が予想以上の伸びを示していた。FRBの利下げへの慎重姿勢を裏付ける内容であった。市場の反応は一時的に留まっている。
執筆者 : MINKABU PRESS
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