為替相場まとめ10月28日から11月1日の週
28日からの週は、日米政治イベントを軸に神経質な展開となった。週明けは衆院選での自公連合の過半数割れを受けて、円売りが先行した。しかし、野党連合の可能性は低いとして円安圧力は一服。市場の関心は来週の米大統領選の行方や週末の米雇用統計へと移った。米大統領選についてはトランプ氏優勢からハリス陣営と拮抗へと混とんとした状況になっている。双方の「ゴミ発言」で泥仕合の様相となった。また、この週は月末を挟む週でもあり、イベントを控えた調整の動きもみられた。週後半には株式市場が軟化している。日経平均の大幅反落の背景には、日銀決定会合の動きも加わった。日銀は予想通り政策金利を据え置いたが、展望レポートで来年の物価見通しに上振れリスクと指摘。さらに植田日銀総裁が「時間的に余裕がある」との文言を使わないと発言、毎回の会合で判断としたことが年内を含めた早期利上げ観測につながった。英国ではリーブス財務相が予算案を発表。想定通りの増税方針を示した。英国債による調達を増やす計画が示されたことが、市場に不安を広げた。トラス政権時のようなパニックは回避されているが、ポンド売り圧力が掛かった。総じて、10月のドル高の流れにやや調整が入る週となっている。そして、週末の米雇用統計ではで非農業部門雇用者数(NFP)が1.2万人増と予想外に弱い内容となったことから、発表直後は米国債利回りの急低下と伴にドル売りが強まった。ドル円も151円台に急速に下落する場面も見られたものの、売りが一巡すると買い戻され、終盤にかけて逆に買いが強まっている。NFPについては、ハリケーンとボーイングのストの影響が出た可能性が高く、特殊事情ということもあり、市場も今回はやり過ごした模様。
(28日)
東京市場では、ドル円が一段高。午前に7月31日以来およそ3カ月ぶりの高値に並ぶ153.88付近まで水準を切り上げた。衆議院選挙を経て政治先行き不透明感が広がるなか、一部で日銀による追加利上げ観測が後退したことなどが円売りにつながった。午後はいったん153.30台まで伸び悩む場面があったが、日経平均が一時820円超の大幅高となったことなどから押しは限定的となり、東京終盤はこの日の高値圏で揉み合いとなった。クロス円も軒並みの円安。ユーロ円は午前に一時166円台に乗せたあと、午後は165円半ばから台後半で揉み合い。ポンド円は一時199.35付近まで上昇したあと198円台後半まで伸び悩んだ。ユーロドルは午後にややドル高となり、一時1.0782付近まで弱含んだ。
ロンドン市場は、円買いとドル売りの動き。ドル円は東京市場で153.88近辺まで買われたあとは上値重く推移している。ロンドン時間に入ると米債利回りの上昇が一服しており、ドル円も153円台割れから152円台半ばへと反落している。ドル売りの動きでユーロドルは1.07台後半から1.08台乗せへ、ポンドドルは1.29台半ば割れから1.29台後半へと上昇。クロス円はドル円とともに反落しており、ユーロ円は165円台後半から165円台割れへ、ポンド円は199円付近から198円台割れへと下押しされている。週末の衆院総選挙結果を受けた円売りの動きは一巡している。このあとのNY市場では特段の経済統計発表は予定されていない。今週は金曜日の米雇用統計に向けて、明日から一連の米雇用関連指標などが発表される。また、来週には米大統領選が実施される。注目イベントが目白押しとなるなかで、一方向への値動きは、続きにくい状況となっている。
NY市場で、ドル円は再び153円台に戻した。ドル円は152円台に伸び悩んでNY時間に入ったものの、再び153円台に戻す展開となった。東京時間には前日の衆院選の結果を受けて円安が加速し、153円台後半まで上昇していたが、海外市場に入ってさすがに高値警戒感も出ていた。衆院選の結果は自公の与党で過半数割れとなった。市場でも与党の苦戦が伝わっていたが、想定以上の敗北になった印象。衆院選を受けて政権維持には連立の枠組み拡大が必要となる。その場合、財政支出が増加し、日銀の金融政策の見通しを複雑にする可能性があるとの指摘も出ていた。今週の日銀決定会合で植田総裁が利上げに慎重姿勢を強めるかどうかが注目される。また、来週の米大統領選を巡ってドル円はさらにリバウンド相場を加速させるとの見方も。減税と高関税を好むトランプ氏が大統領に選出されれば、ドル高とのシナリオから、今月に入ってドルは急騰。ドルは買われ過ぎの領域に入っているものの、選挙後にもうしばらく、現行のドル高が続く可能性があるとの指摘も出ている。ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが膨らみ、1.08台に復帰。ポンドドルは一時1.30ちょうど付近まで買い戻される場面が見られた。週末にイスラエルによるイランの軍事施設に対する報復攻撃が実施されたが、それを受けて原油相場が急騰。
(29日)
東京市場では、やや調整の動き。ドル円は153円台前半から午後に一時152.76近辺まで売りが出た。目立った材料が出たわけではなく、ポジション調整がなどが主体と見られる。米大統領選でのトランプ氏優勢報道もありドル高が意識されているが、154円から155円にかけては売りが入っているとみられ、今日はやや上値が重い展開。27日の衆議院選挙で自公が議席を大きく減らし過半数割れとなったことを受けて政局混乱警戒の円売りが強まったが、その動きも一服。ただ、下値では買いもでて153円付近に戻すなど振幅した。ユーロ円はドル円同様にやや調整売り。対ドルでユーロの動きが抑えられるなか、ドル円の動きにほぼ沿う展開で、朝の165.80台から、午後に165.10台まで軟化した。ユーロドルは1.0806-1.0819の13ポイントレンジ。
ロンドン市場は、やや円安の動き。ドル円は東京市場で153円台割れから152円台後半に軟化も、ロンドン時間には153円台を回復し、153円台後半に高値を広げる動き。ユーロ円は165円台前半から166円台乗せ水準、ポンド円は198円付近から199円台半ばでの上下動。いずれも前日NY終値水準を軸に方向性に欠ける振幅。ドルストレートは小動き。ユーロドルは1.08台前半から1.08台割れ水準、ポンドドルは1.29台後半で売買が交錯。ユーロ対ポンドではややポンド買いが優勢。中東情勢の緊迫化が後退したことで原油先物は下げ一服。欧州株は前日の米株高を受けて堅調。米10年債利回りは4.26%付近から4.31%付近まで一時上昇した。日本の政治情勢については自民・公明に国民民主が政策協力で参加する線が次第に見えつつある状況。米大統領選はトランプ対ハリスの優劣は拮抗しており以前不透明。
NY市場では、ドル円が153円台に高止まり。ドル円相場は衆院選後の材料を消化し、米国の動向に注目が移っている。来週の米大統領選を巡ってドル円はさらにリバウンド相場を加速させるとの見方も出ており、今度はドル高がドル円を押し上げると見ているようだ。今週は重要な米経済指標が目白押しで、明日は第3四半期の米GDP速報値、明後日はPCEデフレータ、そして、金曜日には米雇用統計が発表される。米GDPは強い内容が予想されており、FRBの緩やかな利下げ観測を裏付けそうだ。PCEデフレータはインフレの落ち着きを示す予想。米雇用統計だが、非農業部門雇用者数(NFP)は11万人増と2020年以来のだいぶ低い数字が見込まれている。ただし、今回はハリケーンの特殊事情が影響すると見られていることから、正確な基調判断には不向きな数字との意見も多いようだ。ユーロドルは一時1.07台に再び下落していたが、終盤に1.08台に戻している。ポンドドルはユーロとは違い緩やかな上昇を見せ、1.30台を回復。明日はリーブス英財務相が秋季予算案を公表する予定だが、それが緊縮財政のみならず長期投資にも取り組めば、ポンドは恩恵を受ける可能性があるとの指摘が出ている。
(30日)
東京市場は、落ち着いた値動き。ドル円の朝からのレンジは153.08から153.44まで。上下ともに午前中の動きで、午後は動きがさらに落ち着いた。この後の米ADP全米雇用レポート、米第3四半期GDP速報値などのイベント待ち。さらに明日は米PCE価格指数、明後日は米雇用統計と重要指標の発表が続き、さらに来週火曜日に米選挙を控えていることから、やや動きにくい展開となっている。米指標は昨日の米JOLTS求人件数が3年半ぶりの低水準となった。ハリケーンの影響が大きいとみられ、同じくハリケーン警戒が強い雇用統計本番も厳しい数字が見込まれるが、影響は限定的となりそう。ユーロドルは1.0813-1.0826の13ポイントレンジ。ユーロ円は165円台後半推移となった。豪ドルは、午前中の第3四半期CPIが予想を下回りやや売りが出たものの値動きは続かず。
ロンドン市場では、ポンドが反落。この後の英予算案の発表を控えて英債利回りが低下しており、ポンド売り圧力となっている。リーブス英財務相はこれまで増税や歳出削減などの方針を示唆してきており、市場にショックを与えない配慮をしてきた。財源無き財政出動だったトラス首相時代のような混乱にはならないとの見方が大勢。ただ、きょうのポンド相場は調整に押されており、対ドルは1.30台から1.29台へ、対円は199円台から198円台へと軟化。対ユーロでもポンドが売り戻されている。米債利回りが低下するなかで、全般的にはドル売りが入っている。ドル円は153円台前半での揉み合いから152円台後半へと下押しされている。ユーロドルは1.08台前半から1.08台半ば超えまで一時上昇。独GDP速報値が予想を上回り、2期連続のマイナスを回避したことや全国版に先立って発表された州ごとの独CPIが前回から上昇したことなどでユーロ買い反応がみられた。対ポンドでのユーロの買い戻しも手伝っていた。英予算案とともにこの後発表される米GDP速報値なども注目されている。
NY市場では、ドル買いが一服。そのなかでドル円は153円台で底堅さを維持した。米ADP雇用統計が予想以上に強い内容だったことから買いの反応が見られたものの、154円台を試に行く動きまでは見られていない。一方で下押しする動きも見られず、200日線の上でのリバウンド相場をしっかりと維持している状況。第3四半期の米GDP速報値は前期比年率+2.8%とやや鈍化したが、消費の強さが示される良好な内容だった。ドル売りが優勢となったものの円安の動きもあり、ドル円は下支えされている。明日の日銀決定会合への警戒感もドル円の下値をサポートしていたようだ。今回は据え置きが確実視される中、植田総裁がどのようなガイダンスを示唆してくるかに注目が集まっている。ユーロドルは一時1.0870ドル付近まで買い戻され、200日線に顔合わせした。。第3四半期のユーロ圏のGDP速報値は前期比プラス0.4%と予想を上回った。10月のドイツ消費者物価指数(HICP)速報値も発表され、前年比2.4%とこちらも予想を上回っていた。市場では次回のECB理事会での利下げは50bpの大幅利下げではなく、通常の25bpの利下げになるとの見方に傾いた。ポンドドルは上下動。NY時間の序盤には1.2935ドル付近まで下落していたが、その後は1.30台を回復する場面も見られた。英秋季予算案がリーブス英財務相から発表された。国民保険料の引き上げなどで400億ポンド規模の増税を発表。公共サービスへの支出を増やし、前保守党政権が残した財政赤字の穴埋めに充当する。新たな財政ルールを発表。投資資金調達のための公的借り入れ枠の拡大を認めるもので、債務拡大にさらに拍車をかけることになる。英国債利回りが上昇し、ポンドをサポートした。
(31日)
東京市場は、円買いが強まった。ドル円は、午前に153円台前半から半ばで揉み合ったあと、午後は円高に振れ、一時152.75付近まで下落した。日銀金融政策決定会合では、政策金利は市場予想通り据え置かれた。ただ、展望レポートで2025年度の物価見通しについて「上振れリスクの方が大きい」との記載があったことなどから日銀による追加利上げ観測が強まり、円が買われた。下げ一服後は、いったん153円台を回復する場面があったが、戻りは限定的。日本時間午後3時30分からの植田日銀総裁の会見を前に、再び152円台後半まで下落している。クロス円も午後に円高に振れ、ユーロ円は165.76付近まで、ポンド円は197.88付近まで水準を切り下げた。ユーロドルは1.08台半ばの狭いレンジで推移し、朝から16ポイントにとどまった。
ロンドン市場は、円買い先行後に一服。日銀決定会合で予想通り政策金利が据え置かれたが展望レポートで2025年度の物価見通しについて「上振れリスクの方が大きい」としたことで円買いに反応した。さらにロンドン早朝の植田日銀総裁会見ではこれまでの「時間的余裕がある」との表現を取り下げて、毎回の会合でデータを確認するとしたことが、市場での年内利上げ観測につながった。ドル円は153円台割れから一時151円台まで下落した。ロンドン時間に入ると下げ一服となっているが、152円台後半までの動きにとどまっている。また、欧州株や米株先物・時間外取引が軟調に推移しており、調整色が広がるなかで、米債利回りも低下している。ユーロドルは1.08台半ばから後半へ、ポンドドルは1.29台半ばから1.30付近まで上昇。ドル売りが優勢となっている。リーブス英財務相が、政府には経済成長強化のための更なる計画がある、と述べたことでポンド買いに、ユーロ圏消費者物価速報が前年比+2.0%と前回の+1.7%から上振れたことでユーロ買いに反応する場面もあった。クロス円はドル円とともに振幅しており、足元ではユーロ円が166円前後、ポンド円が198円台に下げ渋っている。
NY市場では、ドル円が再び151円台に下落。途中に月末絡みの実需の買いが入る場面も見られたものの終盤にかけ売りが強まった。日銀決定会合・展望レポートについては全体的にハト派な印象もあったが、市場が期待していたほどでもなく、日銀はオープンの姿勢を示唆している。円相場は円高の反応を示し、ドル円は売りの反応を見せていた。来週の米大統領選などのイベントリスクに向けて為替市場はこれまでドル高の反応を強めていたが、ここに来てそれに向けた調整も一段落し、今週に入ってドル高は一服。その流れの中での日銀決定会合を受けて、ドル円は売られやすかったものかもしれない。ユーロドルは買い戻しが入り、本日1.0870付近に来ている200日線を上抜いた。ポンドの下げがきつい。ポンドドルは急速に1.28台半ばまで一時下落。英国債市場で売りが続き、利回りが急上昇している。英10年債は一時4.53%近くまで上昇。市場の一部からは前日のリーブス英財務相の秋季予算案が指摘されている。今回の英国債の下落は2年前のトラス政権が、財源の裏付けがない大型減税を発表した際の混乱とは比較にならないものの、リーブス財務相が市場を味方につけるには微妙なかじ取りが求められることを浮き彫りにしたとの評価も。
(1日)
東京市場では、ドル高・円安の動き。ドル円は152.00付近でスタートし、序盤は売りに押されて151.79近辺と前日安値を割り込む場面がみられた。日経平均が大幅安で取引を開始したこともドル円の上値を抑えた。しかし、10時過ぎからドル買い・円売りが強成、午後にかけて上値を試す動きとなった。一時152.65近辺まで買われている。日経平均が大引けで1000円超の下げになるなど、株安の動きは午後に入っても継続したが、それ以上に米雇用統計や来週月曜日の日本の祝日、さらには火曜日の米大統領選を前にしたポジション調整意欲が強かったとみられる。ユーロ円も165円台前半から166円手前水準まで買われている。ユーロドルは1.08台後半での推移が続いた。朝からのレンジは18ポイント。
ロンドン市場は、米雇用統計発表を控えてドル買いの動きが優勢。今週は10月のドル高の流れに調整が入ったが、きょうは再びドルが買われている。ドル円は152円台前半から後半へと上昇。ロンドン時間に入ると米債利回りが上昇したことや欧州株などが堅調に推移していることも後押ししている。また、玉木・国民民主党代表が、日銀は向こう半年は利上げ急ぐべきではない、来年の春闘を見極める必要がある、としたことに円売り反応する場面もあった。ユーロドルは1.08台後半から半ばへと軟化している。ユーロ円は売買が交錯しているが、166円手前水準と東京市場からはやや水準を上げている。独自の値動きを示したのが、スイスフラン。消費者物価指数が下振れしたことを受けて、12月スイス中銀会合での大幅利下げ観測が広がった。ドルスイスは0.86台前半から後半へと上昇。主要通貨のなかでスイスフランは弱い値動きを示した。逆に強い動きをみせたのがポンドで、ポンドドルは1.28台後半から1.29台前半へと逆行高となっている。対円や対ユーロでも堅調。前日の英予算案発表を受けたポンド売りに調整が入る格好となっている。
NY市場は、この日発表の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が1.2万人増と予想外に弱い内容となったことから、発表直後は米国債利回りの急低下と伴にドル売りが強まった。ドル円も151円台に急速に下落したものの、売りが一巡すると買い戻され、終盤にかけて逆に買いが強まっている。NFPについては、ハリケーンとボーイングのストの影響が出た可能性が高い。通常であればドルにとって大きなダメージとなる報告で、FRBの大幅利下げの可能性も議論されそうなところではあるが、特殊事情ということもあり、市場も今回はやり過ごした模様。エコノミストからは、ハリケーンやスト、そして更なる調整の影響がなくても、10月のNFPは13万人程度だったとの推計も出ていた。ドル円は153円付近まで戻す展開。
執筆者 : MINKABU PRESS
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