【来週の注目材料】米利下げ開始で注目度がます米雇用市場=米雇用統計
【来週の注目材料】米利下げ開始で注目度がます米雇用市場=米雇用統計
4日金曜日に9月の米雇用統計が発表されます。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の大幅利下げを実施。今後についてはデータ次第という姿勢を示しています。FRBの2大命題は物価の安定と雇用の最大化。物価のターゲットに向けた鈍化がみられる中、今後の金融政策動向のカギを握る指標として雇用統計の注目度が高まっています。
前回8月の雇用統計はかなり厳しい結果となりました。非農業部門雇用者数は市場予想の前月比+16.4万人を下回る+14.2万人にとどまりました。失業率は7月の4.3%から4.2%に市場予想通りとはいえ改善しましたが、実態としては4.25%から4.22%へわずか0.03%の改善にすぎません。また非自発的なパートタイム労働者(正社員の職を欲しているが、職がなくパートタイム労働に従事している人)などを加えた広義の失業率であるU-6失業率(一般的な失業率はU-3失業率)は7.9%まで上昇。2021年11月以降で最悪の水準となっています。
非農業部門雇用者数は8月の数字が低かったことに加え、6月が+17.9万人から+11.8万人に、7月が+11.4万人から+8.9万人にそれぞれ大きく下方修正されました。下方修正されたところからの比で元々の予想値を下回ったということで、8月の数字の厳しさも印象付けられました。なお、3カ月平均での+11.6万人は新型コロナのパンデミックの最中、2020年7月以来の低水準です。
非農業部門雇用者数の内訳をみると、製造業が-2.4万人と厳しい結果になっています。一部では混戦が続く米大統領選の結果次第での政策変更リスクを意識し、事業活動拡大を避ける傾向があるとの指摘があります。建設業が+3.4万人と好結果になったことで財部門全体では+1.0万人とプラス圏になっています。
サービス部門は小売業が-1.1万人と3カ月連続でのマイナス圏となりました。景気に敏感で雇用の流動性も高い同部門の厳しい結果は、米雇用市場の厳しさを印象付けました。一部企業で厳しさが見られるIT/ ハイテクを含む情報業は-0.7万人。2カ月連続でのマイナスです。介護部門などを擁し堅調さが続く教育・医療部門は+4.7万人としっかり増加しています。ただ、増加幅としては2022年12月以来の低い水準です。娯楽接客部門も+4.6万人と好調。中でも部門単体で1233万人もいて、各部門の中で最も雇用者数の多い飲食部門が昨年夏以来の高水準となる+2.99万人となって全体を支えました。こちらも景気に比較的敏感な部門だけに、この好調さは好印象となっています。その他、雇用の先行指標といわれるテンポラリーヘルプサービスが-0.29万人と小幅ながら3カ月連続のマイナス圏となりました。
続いて関連指標です。
すでに発表済みの指標として、まずは週間ベースの新規失業保険申請件数。雇用統計と調査期間のかぶる12日を含む週の結果は、8月が23.3万件、9月が22.2万件と9月が若干強めの数字です。
24日に発表された9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は98.7と予想及び前回値を大きく下回る弱い結果となりました。8月は速報時点で103.3。市場予想はそこから少し改善しての104.0でした。8月の数字は105.6に上方修正されています。前月からの低下幅は2021年8月以来となります。内訳をみると、雇用部門の数字が厳しく、職が十分にあるとの回答から就職困難との回答を引いた労働市場格差は12.6と前月の15.9から悪化しました。
今週発表される関連指標です。
まず1日23時に発表される9月のISM製造業です。前回8月分は47.2と7月の46.8から小幅改善しました。市場予想の47.5及び好悪判断の境となる50は下回っています。7月に43.4と厳しい数字となった雇用が46.0まで改善しました。注目される新規受注は44.6と7月の47.4から悪化、生産も44.8と7月の45.9から悪化しています。今回の予想は47.6と小幅改善です。ただ、50をしっかり割り込んだ水準での推移だけに、警戒感が継続しそうです。
同時刻に発表されのが8月のJOLTS(雇用動態調査)です。前回7月は求人件数が予想の810万件に対して767.3万件となりました。2021年1月以来の厳しい結果です。6月の数字も818.4万件から791万件に大きく下方修正されました。求人件数以外の数字も厳しく、レイオフは176.2万件と昨年3月以来の高水準となっています。今回も前回並みの低い水準になると、雇用市場の厳しさが印象付けられる可能性があります。
2日に発表される9月のADP雇用者数は前回+9.9万人と10万人を下回る伸びになりました。今回は小幅改善の+12.3万人前後が見込まれています。
3日に発表される9月のISM非製造業景気指数は前回8月は51.5と7月の51.4からほぼ横ばいでした。市場予想の51.1は上回っています。新規受注などが伸びましたが、雇用は7月の51.1から50.2に鈍化しています。今回の予想は51.5と横ばい見込み。小用部門の数字と合わせて気にしたいところです。
こうした状況を踏まえ、今回の雇用統計ですが、非農業部門雇用者数の予想は+14.0万人とほぼ横ばいです。失業率も4.2%で前回と同水準見込みとなっています。前回が厳しい数字だっただけに、あまり良い水準ではないですが、悪化もしていないという点をどう見るかです。予想前後であれば相場の反応は限定的にとどまる可能性があります。予想を下回った場合はドル売り円買いを警戒したいです。
MINKABUPRESS 山岡
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。